見出し画像

#10|被用者保険の適用拡大と年収の壁

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、元厚生労働省年金局長

 2025年の年金制度改正に向けた厚生労働省の社会保障審議会年金部会の議論も、終盤に入ってきました。日本総合研究所特任研究員で元厚生労働省年金局長の高橋俊之さんが、わかりやすく説明し、皆さんと一緒に考えます。
 連載第10回は、11月15日の年金部会で、被用者保険の適用拡大と、いわゆる「年収の壁」への対応について、年金局の案が示され、議論が行われましたので、その内容と論点について解説します。


1.2025年改正での被用者保険の適用拡大

(1)企業規模要件の撤廃

 11月15日の年金部会では、年金局から、図表1のとおり、短時間労働者及び個人事業所の被用者保険の適用範囲の見直しの方向性案が提示されました。

 短時間労働者についての企業規模要件(現行では2024年10月から50人超規模に適用拡大)については、「経過措置として設けられた本要件については、労働者の勤め先や働き方、企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から、撤廃することとしてはどうか。併せて、事業所における事務負担や経営への影響、保険者の財政や運営への影響等に留意し、必要な配慮措置や支援策を講じることとしてはどうか。」としています。

 年金部会では、必要な配慮措置や支援策についての意見はあったものの、撤廃を進める方向で意見が一致しました。進め方については、小林委員(日本商工会議所)からは、20人規模で一旦区切るなど、事業者の実態に配慮しながら進めていただきたいという意見もありました。

 今後の焦点は、施行時期であり、2020年改正が、2022年10月(100人超規模)と2024年10月(50人超規模)の2段階での施行となったことと同様の段階施行となるのか、あるいは、年収の壁を早期に解消できるように、より早い施行となるのか、与党のご議論を踏まえて年末までに決まると見込まれます。

ここから先は

15,248字 / 8画像

¥ 100

PayPay
PayPayで支払うと抽選でお得 〜1/7まで
ポイント
抽選でnoteポイント最大100%還元 〜1/9まで

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。