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#13|子の加算、配偶者の加給年金の見直し

高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、元厚生労働省年金局長

2025年の年金制度改正に向けた厚生労働省の社会保障審議会年金部会の議論も、終盤です。日本総合研究所特任研究員で元厚生労働省年金局長の高橋俊之さんが、わかりやすく説明し、皆さんと一緒に考えます。
連載第13回は、12月3日の年金部会で、年金制度における子の加算、配偶者の加給年金の見直しについて、年金局の具体案が示され、議論が行われましたので、その内容と論点について解説します。


1.年金制度における子に係る加算の見直し

(1)子に係る加算の現状と見直しの必要性

公的年金制度では、図表1のとおり、子や配偶者のいる世帯に対して、生活保障を目的としてその扶養の実態に着目し、子や配偶者に係る加算を行っています。

 このうち、子に係る加算については、障害基礎年金と遺族基礎年金では、子に係る支給額の加算があり、老齢厚生年金では、子に係る加給年金として支給額の加算があります。

 子に係る加算の支給額は、障害基礎年金、遺族基礎年金、老齢厚生年金ともに、2024(令和6)年度では、第1子と第2子がそれぞれ年額234,800円で、第3子以降年額78,300円です。

 障害基礎年金(1級または2級)の年金額は、老齢基礎年金の満額の額(1級の場合はその1.25倍)の本体給付額に加え、受給権者が生計を維持している子がいるときは、子の加算額をあわせて受け取ることができます。ここでいう「子」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子であり、遺族基礎年金や老齢厚生年金の子に係る加算でも同じです。令和4年度末の支給実績では、受給者数は9.9万人で、支給総額は324億円です。

 遺族基礎年金の年金額は、子のある配偶者が受け取るときは、老齢基礎年金満額の本体給付額に、子の加算額を加えた額です。また、配偶者に支給されずに子が受け取るときは、子が1人の場合は、老齢基礎年金満額の額の本体給付額のみです。子が2人の場合は、これに2人目の子の加算額を加えた額です。子が3人以上の場合は、これに3人目以降の子の加算額を加えた額です。それぞれ、子の数で割った額が、1人あたりの額となります。令和4年度末の支給実績では、受給者数は7.8万人で、支給総額は243億円です。

 老齢年金では、老齢基礎年金には子の加算はありませんが、老齢厚生年金に子に係る加給年金があります。厚生年金の加入期間が20年以上の老齢厚生年金受給権者65歳に到達した時点で子の生計を維持しており、かつその状態が維持されていることが要件です。令和4年度末の支給実績では、受給者数は2.6万人で、支給総額は70億円です。

年金制度の配偶者や子に係る加算額は、制度が作られた当初は、国家公務員給与の扶養手当の額を参考に設定され、昭和44年度から第2子以降、昭和48年度からは第3子以降の加算額が第1子等よりも低く設定されてきました。その後、年金制度の加算額は、国家公務員の扶養手当との結びつきから外れて引き上げられた後、本体の年金額の改定と同様に改定されてきています。なお、国家公務員給与の扶養手当では、平成18年から第3子以降も第1子・第2子と同額に改められています。

 年金制度において、第3子以降への加算額が第1子・第2子に比べて大幅に少ないことは合理的とは言えないことから、見直しが必要になっています。

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