#13|子の加算、配偶者の加給年金の見直し
高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、元厚生労働省年金局長
1.年金制度における子に係る加算の見直し
(1)子に係る加算の現状と見直しの必要性
公的年金制度では、図表1のとおり、子や配偶者のいる世帯に対して、生活保障を目的としてその扶養の実態に着目し、子や配偶者に係る加算を行っています。
このうち、子に係る加算については、障害基礎年金と遺族基礎年金では、子に係る支給額の加算があり、老齢厚生年金では、子に係る加給年金として支給額の加算があります。
子に係る加算の支給額は、障害基礎年金、遺族基礎年金、老齢厚生年金ともに、2024(令和6)年度では、第1子と第2子がそれぞれ年額234,800円で、第3子以降は年額78,300円です。
障害基礎年金(1級または2級)の年金額は、老齢基礎年金の満額の額(1級の場合はその1.25倍)の本体給付額に加え、受給権者が生計を維持している子がいるときは、子の加算額をあわせて受け取ることができます。ここでいう「子」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子であり、遺族基礎年金や老齢厚生年金の子に係る加算でも同じです。令和4年度末の支給実績では、受給者数は9.9万人で、支給総額は324億円です。
遺族基礎年金の年金額は、子のある配偶者が受け取るときは、老齢基礎年金満額の本体給付額に、子の加算額を加えた額です。また、配偶者に支給されずに子が受け取るときは、子が1人の場合は、老齢基礎年金満額の額の本体給付額のみです。子が2人の場合は、これに2人目の子の加算額を加えた額です。子が3人以上の場合は、これに3人目以降の子の加算額を加えた額です。それぞれ、子の数で割った額が、1人あたりの額となります。令和4年度末の支給実績では、受給者数は7.8万人で、支給総額は243億円です。
老齢年金では、老齢基礎年金には子の加算はありませんが、老齢厚生年金に子に係る加給年金があります。厚生年金の加入期間が20年以上の老齢厚生年金受給権者が65歳に到達した時点で子の生計を維持しており、かつその状態が維持されていることが要件です。令和4年度末の支給実績では、受給者数は2.6万人で、支給総額は70億円です。
年金制度の配偶者や子に係る加算額は、制度が作られた当初は、国家公務員給与の扶養手当の額を参考に設定され、昭和44年度から第2子以降、昭和48年度からは第3子以降の加算額が第1子等よりも低く設定されてきました。その後、年金制度の加算額は、国家公務員の扶養手当との結びつきから外れて引き上げられた後、本体の年金額の改定と同様に改定されてきています。なお、国家公務員給与の扶養手当では、平成18年から第3子以降も第1子・第2子と同額に改められています。
年金制度において、第3子以降への加算額が第1子・第2子に比べて大幅に少ないことは合理的とは言えないことから、見直しが必要になっています。
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