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年金部会で在職老齢年金や国民年金保険料の納付期間5年延長などを議論

10月24日、厚生労働省の社会保障審議会年金部会が開催され、在職老齢年金制度、基礎年金の保険料拠出期間延長、マクロ経済スライドの調整期間の一致、年金生活者支援給付金について議論が行われた。

年金部会は次期年金制度改正に向けて2022年10月から議論を開始し、今回で8回目の開催となる。これまで被用者保険の適用拡大や公的年金制度における次世代育成支援、障害年金および遺族年金の制度見直し、加給年金や第3号被保険者の制度見直しなど、幅広く議論を行ってきた。

今回、在職老齢年金制度については、高齢期の生活を支え合う年金制度の所得再分配機能からすれば現行制度を継続するべき、将来世代の年金額の所得代替率が下がらないよう継続すべきとの意見が出た一方で、高齢期の就労意欲を削ぐ制度であり廃止も検討すべき、といった意見も出た。また、年金の支給停止額を縮小する、賃金以外の収入がある場合との公平性を確保すべきといった制度見直しに関する意見も多数出た。

なお、次期制度改正後に65歳になる男性のほとんどが老齢厚生年金の支給開始年齢は65歳になっている。前回の制度改正で64歳までの年金の支給停止基準額を65歳以上と同じ額に引き上げたことから、在職老齢年金制度については今後、65歳以上の制度改正が主眼となる。

第8回社会保障審議会年金部会の資料より

また、国民年金の保険料納付期間を現行の40年から45年に延長する論点については、基礎年金の給付水準が上がることから賛成多数で、高齢期の就業率の上昇などを踏まえれば実施可能との見方が多かった。

なお、保険料拠出期間が延びた分、老齢だけでなく障害、遺族基礎年金も含めて増額し、基礎年金の2分の1を賄う国庫負担も増加するため、財源確保が課題になる。これに対し、在職老齢年金制度の廃止と同時に税制において公的年金等控除を縮小して高所得者に所得税等を新たに課し、これを国庫負担増加分の財源に充ててはどうか、といった意見も出た。また、第3号被保険者の年齢要件を60歳未満から65歳未満に延長することになるため、この点も踏まえた議論が必要との提案がなされた。

第8回社会保障審議会年金部会の資料より

マクロ経済スライドの調整期間を基礎年金と厚生年金で一致させる論点については、賛成との見方が多数を占めた。年金生活者支援給付金については、低所得者対策として金額の引き上げや対象者拡大など、より充実させるべきとの意見が出た。

今後、年金部会において各論点についてさらに議論を進め、令和6年1月から「年金財政における経済前提に関する専門委員会」での取りまとめを受け、「オプション試算」について検討する。

厚生労働省ホームページ 第8回社会保障審議会年金部会



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