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東京都板橋区 健康生きがい部国保年金課国民年金係

板橋区役所本庁舎南館3階に国保年金課はある。

年金事務所と密に連携し、年金制度の丁寧な説明と保険料の納付・免除勧奨を実施
区民の年金受給権の確保と保険料納付率の大幅な向上に貢献し、「令和5年度市区町村国民年金事業功績厚生労働大臣表彰」を受賞


 板橋区の国民年金業務は、17人(国民年金係長1人、副係長1人、正規職員12人、会計年度任用職員3人 。*2024年1月1日現在)で行っている。2023年度には、「令和5年度市区町村国民年金事業功績厚生労働大臣表彰」を受けた。表彰の対象となった取組みは主に2つ。一つは、板橋区の広報紙に月1回以上の頻度で年金制度や手続きに関する記事を掲載して、制度周知を行ったこと。もう一つは、ウインドマシンを活用し年金事務所と連携した納付・免除勧奨を実施し、区民の年金受給権確保と保険料納付率向上に貢献したことである。2021年度現年度納付率67.62%は対前年度比でプラス4.94ポイントとなり、第1号被保険者数5万人以上の全44市区で第1位となった。こうした取組みや日頃の業務や今後の課題について、国民年金係の橋本美穂係長(課長補佐)と矢島広海(ひろうみ)さんに話を聞いた。

*本記事は、特定非営利活動法人 年金・福祉推進協議会ホームページ掲載の「Web年金広報」(2024年3月号)を再掲載したものです。

東京都練馬区・豊島区・北区、埼玉県と接する板橋区。

「板橋区ってどんなところ?」

 板橋区は、東京23区の北西部の、荒川と多摩川に挟まれた武蔵野台地の北東端に位置する。長い歴史と伝統に支えられて発展した板橋区には、神社仏閣などの建造物をはじめとした有形文化財、歴史的な樹木や遺跡などの記念物、伝統的な祭りなどの無形民俗文化財など、多くの歴史・文化資源が存在する。また、中山道の第1番目の宿場である板橋宿などは物資・文化が集まる都市的な場として発展し、現在も沿道の歴史資源を生かしたまちづくり・商業振興が行われている。街道と鉄道を中心に急速に発展した住宅地には、優良な戸建て住宅地や集合住宅地が計画的に建設され、特徴的な景観を形成している。

●人口 合計572,927人 (2024年1月1日現在)
●国民年金第1号被保険者数 合計 77,350人 うち、任意加入被保険者1,050人 (2023年3月31日現在)
●国民年金保険料免除者数 合計 35,440人 うち、法定免除7,459人、申請免除19,239人(学生納付特例8,742人) (2023年3月31日現在)
●国民年金受給者数 老齢基礎年金113,933人、障害基礎年金 7,896人、遺族基礎年金744人 (2023年3月31日現在) 

「広報いたばし」に月に1回以上、年金制度や手続きに関する記事を掲載  

――この度は、「令和5年度市区町村国民年金事業功績厚生労働大臣表彰」の受賞、おめでとうございます。どのような取組みが評価されたのでしょうか?

橋本係長 一つは、板橋区の広報紙「広報いたばし」に月に1回以上、年金制度や手続きに関する記事を掲載し、年金制度の周知を図ったことです。この広報紙は第1~第4土曜日に発行されるタブロイド版で、新聞折り込みのほか、区内のコンビニエンスストアや駅などでも配布しています。その他、板橋区のホームページや各種アプリでも閲覧することができます。区民の方から「広報いたばし」に掲載した内容について手続きしたいとご連絡頂くこともあり、広報紙への記事の掲載が年金制度の周知に効果的であることを実感しています。

――具体的にはどのような内容の記事でしょうか?

矢島さん 記事の内容は前年度に決めており、月ごとに問合せが多い内容を掲載しています(表1:例)。学校年度が切り替わる4月に学生納付特例制度に関する記事、請求書の発送に先駆けて8月末には年金生活者支援給付金の記事を掲載するなど工夫しています。

<表1> (例)2023年度「広報いたばし」掲載スケジュール

年金事務所とは月に1回、定期的に対面で打合せを実施

――年金事務所との連携についてはいかがでしょうか?

橋本係長 月に1回、板橋年金事務所の副所長と国民年金課長に板橋区役所にお越しいただき、対面で打合せを行っています。区からは事務上の不明点を確認させていただき、年金事務所からは制度改正等について情報提供いただいており、より正確でスムーズな窓口・電話対応に繋げています。
 その他には板橋年金事務所お客様相談室の職員の方に講師を務めていただき、年に数回、給付関係などの研修会を行っています。障害年金など複雑な制度についても、対面で分かりやすく講義いただくことで、職員のスキルアップに繋がっています。
 また、板橋区役所の国民年金窓口には非常に多くの方が年金相談にいらっしゃいますが、その中には区では受付できず、年金事務所での手続きが必要な方もいらっしゃいます。そのような場合も、単に年金事務所を案内するのではなく、必要書類を来庁者に代わって年金事務所に確認するなど、年金事務所と連携をとって丁寧に対応するようにしています。

――どのくらいの方が相談に来られるのでしょうか?

矢島さん 4月など繁忙期には1日100~150人くらいの方がいらっしゃいます。その他の時期でも1日に50~60人以上の方がいらっしゃることが多いです。

――年金事務所とは、区民の方の情報について、具体的にどのような連携をとられているのでしょうか?

矢島さん 日本年金機構や板橋年金事務所から区民の方に勧奨状等を発送する際は、月に1回の打合せで事前に情報提供いただいています。その情報をもとに、いつ頃、どのような用件での来庁が増えるか予想をたて、よりスムーズな窓口案内に役立てています。

納付率向上へのウインドマシンの活用と柔軟な区民対応

――ウインドマシンはどのように活用されていますか?

橋本係長 板橋区では、2019年にウインドマシン(可搬型窓口装置)を導入し、窓口業務に大いに活用しています。相談に来られた方の年金記録を網羅的に確認できるので、過年度分の未納への免除申請も漏れなく案内でき、納付率の向上にも繋がったと思います。

――ウインドマシンの活用以外にも納付率向上のために行った取り組みはありますか?

橋本係長 確実な収納を行うため、国民年金に加入する方には口座振替、クレジットカード払い、前納を積極的に紹介しています。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響で窓口来庁が困難な方も増加したので、区HPなどで郵送での手続き案内の周知に努めました。区民の方から「窓口に行かずに手続きが済んで良かった」とお声を頂いており、このような柔軟な対応も納付率向上に繋がっていると思います。

課題は外国人への対応

――現在、課題にしていることはありますか?

橋本係長 東京都内の他の区でも課題にしているところが多いかと思いますが、外国人の国民年金加入者が増加しており、工夫が必要だと感じています。
 転入の手続きに来られた際には、戸籍住民課や国民健康保険の担当と連携し、必ず国民年金窓口にも寄っていただくようにしています。

――外国人への説明はどのようにされているのでしょうか?

矢島さん 窓口では日本年金機構ホームページからダウンロードした外国語パンフレットをお渡ししたり、ポケット型の翻訳機を活用したりすることで外国人の方にも分かりやすい対応を心がけています。
 また、窓口以外では板橋区文化・国際交流財団が発行する外国人向け情報誌「アイシェフ・ボード」に国民年金に関する記事を日本語、英語、中国語、韓国語の4ヵ国語で掲載していただき、外国人の方へ国民年金の制度周知を行っています。

今後も保険料納付率の向上のためにきめ細かい対応を継続

――納付率の向上のために不可欠なことはどんなことでしょうか?

橋本係長 丁寧な制度説明です。例えば保険料納付のことを説明するときには必ず免除制度について説明するようにしています。数年前までは、免除制度があることを知らないまま未納になっている方もいましたが、現在は免除制度について知らなかったとお声を頂くことはほとんどありません。さらに納付については、前納制度や口座振替など便利な方法があることをお伝えするなど、きめ細かい対応は保険料の納付率向上につながっていると思いますので、今後も続けるようにしたいと考えています。

――本日はどうもありがとうございました。

国保年金課国民年金係の皆さん。
左から、矢島広海さん、山崎喜幸さん、山崎桃子さん、松澤紀一さん。


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