日医会長「医療計画の新興感染症対策の前倒し実施を」(5月26日)
日本医師会の中川俊男会長は5月26日の会見で、同21日に成立した医療法等改正法について見解を示した。
新興感染症等への対策が医療計画の6番目の事業に追加されたことを高く評価した上で、「今後は平時の対応と、有事の対応を整理して、具体的な計画に落とし込んでいく必要がある」と述べた。
2024年4月となっている施行時期については、「新型コロナは依然として予断は許さないし、新たな感染症がいつ発生するかわからない。医療計画における新興感染症等対策の前倒し実施を国に要請する」と述べた。
地域医療構想において協議する必要病床数については、「新興感染症への対応いかんによっては見直す必要がある」と指摘。その上で、具体的対応方針の再検証対象となった440の公立・公的医療機関については、「新型コロナに対応し、地域で重要な役割を果たしている病院もあるため、新興感染症対策事業も含めて役割を見直すべきだ」と述べた。
地域医療介護総合確保基金事業の一つに位置付けられた「病床機能再編支援事業」については、「地域医療構想調整会議が地域医療との合意形成など重要な役割を担う」と述べた。
行政が調整会議の合意を得ないままに医療機関の再編統合を進めようとした事例があったことや、財政当局が地域医療構想を病床削減ツールとして利用しようとしていることを指摘し、「調整会議の議論が活性化されるよう日医として支援を続ける」と述べた。
外来機能報告制度の創設については、同報告をもとに地域医療調整会議などで「医療資源を重点的に活用する外来」について協議することになると指摘。具体的な制度運用については「今後、厚労省に設置予定の検討会で詳細な議論が行われる。検討会ではさまざまデータが示されると思うが、データ至上主義ではなく、地域の実情を踏まえた血の通った議論が必要だ」と述べた。
一方、今村聡副会長は改正法の医師の働き方改革に関する部分について見解を表明。
2022年度から医師の労働時間短縮計画を評価する事業がスタートすることに対し、「国が指定する医療機関勤務環境センターが担当するが、コロナ禍において医療現場の現状を無視することはできない。現場が医師の働き方改革に取り組める状況であるのか、過剰な労働に追われている医師の健康への影響はどうなのかなど、足元をしっかりと確認しながら慎重に進めることが求められている」と述べた。
2024年度からの罰則規定付きの労働時間の上限規制については、「働き方改革が地域医療に及ぼす影響を見つつ、罰則適用は謙抑的かつ慎重に運用していただくことを強くお願いする」と述べた。