心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正―厚労省が9月1日に通達
厚生労働省は精神障害の労災請求の認定基準となる「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、9月1日付で労働基準局長通達を発出した。
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました(9月1日)
精神障害が労災認定されるには、その発病が、業務による強い心理的負荷(ストレス)によるものと判断される場合に限られる。
今般の改正では、発病前おおむね6ヵ月の間に起きた業務における出来事の心理的負荷の強弱を判断する際に参照する「業務による心理的負荷評価表」などが見直された。
具体的には、心理的負荷が生じる具体的出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)や「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加。
さらに、類似性の高い出来事や「強」と判断されることがまれな出来事を統合し、全体の出来事数を整理したほか、その具体例の記述を大幅に拡充。
改正前の具体例は、包括的な記載が多かったが、ほぼすべての具体的出来事において「強」「中」「弱」の強度ごとに例示し、明確化を図った。
たとえば、新たに追加された具体的出来事の「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」場合に、心理的負荷が「強」「中」「弱」と判断される具体例は以下のとおり。「強」と判断されれば、労災認定基準の要件の1つを満たすことになる。
こうした改正は、今年7月に公表された厚生労働省の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書に基づくものだ。
近年の精神障害の労災請求件数の増加や、最新の医学的知見などを踏まえ、「業務による心理的負荷評価表」の明確化等により、より適切な認定、審査の迅速化、請求の容易化を図る。
このほか改正では、既存の精神障害が悪化した場合の業務起因性が認められる要件を緩和したほか、医学意見の収集方法を効率化した。