【解説】育児休業・介護休業制度令和元年改正のポイント――労働者の「相談」に対する不利益取扱いを禁止に
令和元年5月29日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24号)」が成立し、6月5日に公布されました。
▲女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案の概要(出所:厚生労働省Webページ)。セクシュアルハラスメントだけでなく、いわゆるマタハラ・パタハラに関しても、労働者の就業環境を害する言動問題を防止するための改正がなされた これにより、育児休業・介護休業等の根拠である「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)」が改正されました。
改正のポイント
本改正による、育児休業・介護休業等にかかる今回の法改正のポイントは以下のとおりです。
ポイント1.マタハラ・パタハラ等に起因する問題に関する国・事業主・労働者の責務の明確化
育児休業・介護休業等を利用する労働者へのハラスメント対策について、国・事業主・労働者は、それぞれ以下の責務を負うことが新たに努力義務とされました。
国は、育児休業・介護休業等の利用に関するハラスメント(育児休業等関係言動問題)に対する事業主や国民一般の関心と理解を深めるため、広報・啓発活動等の措置を講じる
事業主は、育児休業・介護休業等の利用に関するハラスメントに対する労働者の関心と理解を深めるとともに、労働者相互が言動に注意を払うよう研修の実施その他必要な配慮を行う。また、国の講ずる措置に協力する。事業主(役員)自らも労働者に対する言動に注意を払う
労働者は、育児休業・介護休業等の利用に関するハラスメントに対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うとともに、事業主が行うハラスメント等防止措置に協力する
ポイント2.労働者が相談をしたこと等を理由とする事業主による不利益取扱いの禁止
事業主は、育児休業・介護休業等の利用に関する言動により労働者の就労環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることとされています。
今回改正では上記に加えて、労働者が相談等を行うことに躊躇することがないよう、事業主が次のことを理由として労働者の解雇その他不利益な取扱いを行うことが禁止されました。
労働者が相談を行ったこと
相談への対応に協力した際に事実を述べたこと
主な施行日は、公布日から起算して1年を超えない範囲において政令で定める日とされていますが、令和元年9月末現在、未定となっています。また、中小企業には猶予期間が設けられることとされています。 令和元年10月30日追記:主な施行日は「令和2年6月1日」になりました。なお、中小企業については令和4年3月31日まで努力義務とされます。