就業者数・雇用者数の実績が見通しを上回る──2019年財政検証の経済指標と実績の動向が示される
(こちらは3月1日に「Web年金時代」に掲載したものです)
厚生労働省は2月24日、2019年財政検証で設定した経済指標と実績の動向について、社会保障審議会年金部会の「年金財政における経済前提に関する専門委員会」の第2回会合に提出した。その中で2019年から2021年の就業者数・雇用者数は、2019年財政検証の見通しよりも実績が上回っていたことが示された。たとえば2019年財政検証では、「労働参加が進むケース」でも2021年に6,600万人に達しないと想定されていたが、実績では6,713万人になった。また雇用者数も6,000万人に達しないと想定されていたが、実績では6,016万人と、6,000万人を超えた。
見通しより実態が上回ったことについて厚労省は、「高齢者の就業参加が非常に進んだ」と説明した。
深尾京司委員長(日本貿易振興機構アジア経済研究所所長)は、ここ5年、10年は女性や高齢者の非正規労働者が増えたことを指摘。今後の見通しについて専門家から意見を聞くことを提案した。
慶応大学教授の権丈善一委員は、「ここ10年、20年の制度動向をみると、非正規で女性や高齢者が低賃金で働く労働供給をせっせと作ることが現象としてある」と指摘。さらに今後の見通しとして「女性の就業率は、ほぼ天井に近づいている。同時に前期高齢者も去年ぐらいから減少し始めていて60歳以上の労働力人口はそんなに増えないだろう」と述べた。
また、専門委員会では、財政検証における経済前提が示された。その中で、実質賃金上昇率(対物価)の前提と実績についてみると、2019年および2020年の見通しはケースⅠ~Ⅵで0.4%だが、実績は2019年0.1%、2020年▲0.5%と見通しを下回った。2021年の見通しはケースⅠ~Ⅲで0.4%、ケースⅣ~Ⅵで0.1%であり、実績は1.2%と見通しを上回った。
他方、経済成長率と賃金上昇率の関係も示された。1人当たり実質GDPと実質賃金の推移について、2009~2021年の12年平均でみると、1人当たりの実質GDP成長率は0.5%であるのに対して実質賃金の伸びは▲0.4%、厚生年金の標準報酬の伸びも▲0.2%になっている。厚生年金の標準報酬の伸びが現金給与総額より高いことについて、資料では、「厚生年金は短時間労働者の多くが適用の対象外になっていること等による」と紹介している。
厚生労働省ホームページ▶第2回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会 資料