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「中間とりまとめ」への主な意見と作業グループからの「最終報告」公表 中医協入院医療等分科会(2023年10月5日)

厚生労働省は10月5日、中医協の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開催し、9月27日に同・基本問題小委および総会に報告した「中間とりまとめ」への主な意見と、「診療情報・指標等作業グループ」および「DPC/PDPS等作業グループ」からの「最終報告」を公表した。

「中間とりまとめ」は、令和6年度診療報酬改定に向けて、主な項目における分析と指摘事項をまとめたものである。その中でも特に注目する項目に絞り、【ポイント】と主な【分析】【指摘】の形で整理したものを「社会保険旬報2023年10月11日号(№2906)」(下図)に掲載している。

社会保険旬報2023年10月11日号(№2906)

10月5日の中医協分科会で公表された「中間とりまとめ」への主な意見は以下の通りである。


9月27日中医協(基本小委・総会)での主な意見

<入院>

  • 急性期充実体制加算の新規届出要件として地域医療構想調整会議の承認を得ることを追加すべき
    ⇒要件を追加したとしても適切な機能分化につながらない可能性もある

  • 総合入院体制加算から急性期充実体制加算への届出医療機関数の移行が進む中で、総合入院体制加算の評価をさらに引き上げることを検討

  • 一般病棟入院基本料の重症度、医療・看護必要度において、該当割合が上昇している「注射薬剤3種類以上の管理」について、どのような薬剤がどのように使用されているのか詳細な分析が必要

  • 75歳以上の誤嚥性肺炎や尿路感染症などを急性期一般入院料1の病棟で対応することが妥当なのかについて、十分な検討が必要
    ⇒救急搬送後に専門的な治療や処置があまり行われていないことも考慮し、どのような制度設計がありうるのか議論が必要

  • 高齢患者の中には高度急性期病院で受け入れなければならない患者もおり、最初から受入病棟を決めるのは難しい

  • 高齢者救急の役割分担については、救急対応ができる施設でトリアージを行い、必要に応じて適切な医療機関へ転院搬送を行うというような仕組みが重要

  • 地域包括ケア病棟等における高齢者救急において、直接入棟患者への医療資源投入量が多いことを踏まえると、直接入棟と転院搬送による受入を同様に評価することには疑問

  • 効率性係数について、適切な評価につながる計算方法について、具体的な検討を進めるべき。また、診療対象とする診断群分類の種類が少ない病院において複雑性係数が不当に高くなる点については、計算方法の見直しではなく、DPC病院からの退出を促すルールを考えるべき

  • 回復期リハビリテーション病棟については、第三者機能評価の厳格化、FIMの適切な評価については何らかの対応が必要。また、入院期間中のFIMデータの定期的な提出を求める方向で議論を進めるべき

  • 療養病棟入院基本料については、医療資源投入量に差があることを踏まえ評価体系の精緻化の方向性には賛成。医療と介護の役割分担を踏まえ、どのような患者を医療保険で対応すべきかという視点を含めて具体的に検討

  • リハビリテーション・栄養との連携における口腔管理の取組について、医療機関の歯科標榜の有無、外部の歯科医療機関との連携状況によって、どの程度の差が出ているのか分析が必要

<外来>

  • 特定疾患療養管理料等を算定している医療機関が地域で果たしているかかりつけ医機能について、時間外対応加算の届出状況だけではなく、より多面的な観点からの検討が必要

  • 特定疾患療養管理料の対象疾患には、かかりつけ医機能が求められる疾患、例えば慢性腎炎、慢性腎臓病、腎不全、心臓病、認知症、更年期障害、白内障などが対象疾患に含まれておらず、対象疾患についてはかかりつけ医機能の発揮が求められる疾患という観点からも分析すべき

  • コロナ禍の影響で、生活習慣病患者に対する長期処方が増えた一方で、治療中断も見られるようになっている。医学管理の質の観点から診療報酬を検討するにあたり、どの程度長期処方が増えているのか、その結果として医療機関にどのような影響が出ているかについても分析・検討が必要

  • コロナ禍で定期的な受診ができなかった状況で、糖尿病の悪化がみられたというデータもあるため、定期的にしっかりした診療を受けられるようにすることが重要

  • 特定疾患療養管理料における医療法改正による書面交付への対応、生活習慣病管理料における療養計画書の見直しについては、医療の質・患者の負担・効率性の視点で更なる検討が必要

  • 高血圧、糖尿病、脂質異常のいずれも再診患者のかなり多くに外来管理加算や特定疾患療養管理料が算定されている一方で、地域包括診療料、地域包括診療加算、生活習慣病管理料の算定は極めて少ない実態を考えると、かかりつけ医機能をどの診療報酬項目で評価すべきなのかを体系的に整理すべき時期に来ている

  • オンライン診療について、オンライン診療の適切な実施に関する指針には、睡眠薬の処方は初診では行わないこととされているにもかかわらず、情報通信機器を用いた初診に係る傷病名では不眠症が上位にあるなど、不適切な運用がなされている可能性が示唆されている
    ⇒さらなる分析を進め、健全な形でオンライン診療を普及させるべき

「診療情報・指標等作業グループからの最終報告」で追加された指摘事項

10月5日の中医協分科会では、「診療情報・指標等作業グループ」および「DPC/PDPS等作業グループ」それぞれから、「最終報告」が提出された。各「中間報告」については、9月6日に開催された「第6回入院・外来医療等の調査・評価分科」にて示されていた。

「診療情報・指標等作業グループからの最終報告」では、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度における「A項目」・「B項目」・「C項目」および「短期滞在手術等基本料3の対象手術」について分析を行い、主な指摘事項として以下を追加している。

  • 「注射薬剤3種類以上の管理」の対象薬剤や上限日数とともに、初期を重点的に評価することについて検討すべき

  • 「呼吸ケア」「創傷処置」の項目については、評価基準を必要度Ⅱに統一すべき。その際、正確な評価のため、治療室用の重症度、医療・看護必要度の場合も含め、算定の対象とならない診療報酬上の項目についても業務負担に配慮しつつ、EFファイル等に入力することを検討

  • 「創傷処置」に該当する診療行為から重度褥瘡処置の実施は削除すべき

  • 外来での実施率が高い化学療法について、「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」及び「抗悪性腫瘍剤の内服の管理」について必要な見直しを行うべき

  • 7対1病棟の必要度基準においてB項目は適さないのではないか。ただし、B項目を必要度基準に用いない場合においても、ADLの改善状況等の把握のため測定自体は継続すべき

  • ADLが低下した患者等へのケアに対する評価のためにB項目を評価基準に残す場合においても、治療に伴って低下したADLの改善等が適切に評価できるよう、項目の追加や評価方法の見直しについて今後検討すべき

  • 特定機能病院入院基本料や急性期一般入院料1において、基準1(A得点2点以上かつB得点3点以上)のみにより必要度基準に該当する場合は、「専門的な治療・処置」によりA得点2点となっている場合が多い
    ⇒急性期医療が必要な患者が引き続き必要度基準に該当するよう、「専門的な治療・処置」の各項目について重みづけを見直すことが考えられる

  • 短期滞在手術等基本料3の対象手術の一部について、入院により実施されている割合が医療機関全体における割合よりも病院において高いものがあることから、外来での実施がより促進されるよう必要度の評価対象に加えるべき

「DPC/PDPS等作業グループからの最終報告」で追加された指摘事項

また、「DPC/PDPS等作業グループからの最終報告」では、医療機関別係数のうち、「保険診療係数」・「効率性係数・複雑性係数」・「地域医療係数(体制評価指数)」・「新たに評価を行いうる内容」について以下のような指摘事項が追加されている。そのほか、「DPC対象病院の要件」・「点数設定方式」についても、以下の追記が行われている。

<保険診療係数>

  • 一部の「部位不明・詳細不明コード」については「臨床的に付与せざるを得ない場合が多い」とされ、「部位不明・詳細不明コード」の計算対象からは除外すべき

<効率性係数>

  • 診療対象とする診断群分類の種類数や構成によらず在院日数短縮の努力を評価するのであれば、各医療機関の平均在院日数と、各医療機関の症例構成による補正を行った全国の平均在院日数の相対値を取る手法に変更することが望ましい

  • 医療機関群ごとに期待される機能や役割が異なることを踏まえ、効率性係数についても複雑性係数等と同様に医療機関群ごとの評価としてはどうか

<複雑性係数>

  • 1日当たり医療資源投入の観点での評価の方が急性期入院医療の評価として妥当ではないか

  • 「1日当たり」での評価の場合、短期での入院に該当する一部の診断群分類については適切な評価とならないのではないか

  • 「1入院当たり」での現行の評価手法は入院医療の労力の評価という観点では妥当性があり、急性期入院医療の評価という観点から、むしろ評価の対象とする医療機関の基準自体を検討すべき

<地域医療係数(体制評価指数)>

  • 「感染症」における評価内容については、第8次医療計画において、令和4年の感染症法改正により法定化された都道府県・医療機関間での協定締結を通じ、平時から医療提供体制の確保を図ることとされていることを踏まえ、令和6年度改定以降、新型コロナウイルス感染症対応への評価から、入院医療に係る協定締結の評価へと移行することが考えられるのではないか

<新たに評価を行いうる内容>

  • 脳死下臓器提供の実施
    ⇒脳死下臓器提供の実施機能や実績を評価することについては、社会的に重要な論点であるという指摘があった一方で、入院患者全体や地域医療に対してどのようなメリットがあるのか明らかでないのではないか

  • 多職種協働による医療提供
    ⇒高齢者の急性期患者が増加する中で入院患者全体にメリットのある取組への評価と考えられるといった指摘があった一方で、医科点数表上の評価に係る議論を優先すべきではないか

  • 医師少数地域への医師派遣機能
    大学病院本院群に限った評価として考えられるのではないかといった指摘があった一方で、大学病院の果たす機能については別途評価を検討する必要があるのではないか

  • 外国人患者の受け入れ体制
    ⇒社会状況の変化に伴う重要な論点であるといった指摘があった一方で、地域医療への貢献という観点から適切な評価指標を設定しうるのか慎重に検討する必要がある

  • 医療の質向上に向けた取組
    ⇒DPCデータ等を活用した医療の質向上に向けた取組への評価については、DPC対象病院の評価として適切であるといった指摘や、今後の更なる評価のあり方の検討を前提としつつ、既に保険診療係数において基本的な病院情報の公表を評価していることを念頭に置くと、令和6年度改定に向けては「医療の質向上のための体制整備事業」における9指標に係るデータの提出や提出データに基づく指標の算出・公表を評価していく方向性が考えられるのではないか

<DPC対象病院の要件>

  • データ数が少ないDPC対象病院
    ⇒医療機関別係数を含め適切な包括評価となっていない現状があり、急性期医療の標準化という観点からも制度になじまないのではないか
    ⇒特に診療密度(相対値)が低い点については、他のDPC対象病院に対する包括評価にも影響することから、何らかの対応が必要
    データ数に係る一定の基準をDPC対象病院の要件として設定することが考えられる

  • 現在保険診療係数において評価を行っている「適切なDPCデータの作成」に係る3つの基準については、DPC対象病院の要件として位置づけることが望ましい

<点数設定方式>

  • 点数設定方式Aで設定される診断群分類のうち、入院期間Ⅰにおいて医療資源投入量が設定点数を大きく上回る診断群分類については、在院日数ごとの設定点数と実績点数の関係を踏まえると、点数設定方式Bを適用することで、実際の医療資源投入量に見合った評価が可能となるのではないか

  • 現行の点数設定方式は、基本的には、医療資源投入のパターンに沿った評価となっており、早期退院させた場合への評価として十分でないのではないか

  • 入院初期を重点的に評価する点数設定方式として、短期滞在手術等に適用している点数設定方式Dがあるが、一定の入院期間が見込まれる分類について、入院初日に高い評価とすることはなじまない可能性がある

  • 入院期間Ⅰで入院基本料を除く包括評価を行うことで、粗診粗療への高い評価を避けつつ、入院期間Ⅱより早期での退院を一定程度評価することが可能なのではないか

  • 不要な在院日数の延伸につながらないような評価方法は重要である一方で、こうした点数設定方法を導入するにあたっては、同質性の高い分類に限るなど条件を設定した上で、疾患や手術の特性に係る臨床的な観点も踏まえつつ、慎重に検討する必要がある

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