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遺族年金の男女差解消を進める方向で意見が一致――年金部会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事、法学学術院教授)は3月13日、遺族年金における男女差解消や基礎年金保険料の拠出期間を45年とした場合などについて審議した。

遺族年金については、子のない夫に対する遺族厚生年金の受給権発生に係る年齢要件(55歳)の撤廃や、現役期の子のない妻または夫に対する遺族厚生年金を有期給付とすること、遺族厚生年金における収入要件(850万円)の見直し、中高齢寡婦加算や寡婦年金による保障内容を男女で区別せず一元的に対応することなどについて検討した。
委員からは、男女差の解消を前提としつつ、受給者については激変緩和措置を設けるなどして段階的に進めるよう要請する意見が相次いだ。

基礎年金保険料の拠出期間45年化は、60歳代前半の老齢基礎年金の繰上げ受給者が新たに国民年金の被保険者となり、老齢基礎年金を受給しながら強制加入期間として国民年金保険料を納付することについて審議した。また、現行では60歳未満の人が国民年金第3号被保険者とされているが、60歳以降の取り扱いについて議論したほか、65歳時点で基礎年金満額に達していない人の国民年金への任意加入や、60歳代後半の厚生年金被保険者の国民年金における取り扱いについて検討した。
委員からは、60歳~64歳で老齢基礎年金を繰上げ受給している人の実態を調査するよう求める意見や、国民年金に任意加入できる期間を残すよう要請する意見などがあった。第3号被保険者の取り扱いについては、年金制度全体における第3号被保険者制度そのものについて議論する必要があるという指摘があった。

公的年金の被保険者資格を喪失した外国人が日本を出国した場合に請求できる脱退一時金制度について、永住者資格がある外国人が年金脱退一時金を受給して帰国し、その後再入国して生活保護を受給することが現在の制度運営上可能となっている。この点を国会で指摘されたことから、この日厚労省は年金部会に意見を求めた。
委員からは、永住者への給付を制限するべきという意見と、現状維持を求める意見、永住者への制限は慎重にするべきという意見に分かれた。厚労省は、脱退一時金が社会保障協定締結までの特例的な対応であることを踏まえて、可能なデータをそろえつつ今後の議論に備えたいとしている。

この日で次期年金制度改正に向けた検討項目は一巡し、今後は年末の取りまとめに向けた二巡目の議論に進む予定だ。

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