介護保険部会、医療計画と介護保険事業計画の整合性確保を(11月14日)
社会保障審議会の介護保険部会は11月14日、次期制度改正に向けて「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進」をテーマに議論した。
厚労省が介護サービス基盤の整備について、訪問・通所の複合型サービス類型の検討や医療計画と介護保険事業計画の整合性の確保などの方向性を示した。次回24日も引き続き地域包括ケアを議論する。
厚労省は介護サービス基盤の整備の検討の方向性について、地域の実情に応じた介護サービスの基盤整備では、必要に応じて既存施設・事業所の今後のあり方を含めた検討を各自治体に促すことをあげた。在宅サービスの基盤整備では◇複数の在宅サービス(訪問や通所)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型◇機能が類似・重複しているサービスの将来的な統合・整理―をあげた。
在宅医療・介護連携では、医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性の確保とともに、都道府県・市町村の医療介護関係者による協議の場を通じた連携を示した。
地域における高齢者リハビリテーションの推進では、介護保険事業(支援)計画での対応を含め、地域リハビリテーション体制の構築やリハビリの取組みの充実をあげた。
特別養護老人ホームにおける医療ニーズへの適切な対応のあり方では、診療報酬や介護報酬上の取り扱いも含めた検討をあげた。高齢者虐待防止の推進では、正当な理由がない身体拘束防止のための方策の検討をあげた。
特養に看護ケアの充実を、看多機の活用促進へ
日本医師会の江澤和彦委員は、「地域包括ケアは既存の社会資源の有効活用が基本である。特に介護人材不足の状況下では、選択と集中の視点と新たなサービスのバランスを十分に検討すべきだ」と指摘した。
在宅医療・介護連携については「今後、リハビリと栄養・口腔ケアの一体的取組みを一層推進すべきで、多職種協働が鍵になる。通所リハ・訪問リハにおけるリハビリテーションマネジメント加算が効果をあげているため、この仕組みを栄養や口腔ケアにも応用できるのではないか」と提案した。
医療計画と介護保険事業計画の整合性については、「これまでよりも一層進めていくべきだ。特に介護保険事業計画の策定担当者が都道府県の医療計画策定の会議や地域医療構想調整会議に参加する一方、医療計画や地域医療構想調整会議の行政担当者が介護保険事業計画に参加していく場が必要である」と述べた。
地域における高齢者リハビリテーションについては「地域リハビリテーションをぜひ制度下に位置付けるべきだ。それによって住民のリハビリの意識が高まり、介護予防に資する取り組みにつながる。制度下の地域リハビリテーションが地域支援事業をけん引することが将来的に必要になる」と述べた。
特別養護老人ホームについては「中重度者の受け皿であるため、今後は医療ニーズがますます高まってくる。看護ケアの充実を考えるべきだ」と提案した。
日本看護協会の斎藤訓子委員は、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の活用促進に向けた意見書を提出。意見書では、①看多機を介護保険法の「居宅サービス」にも位置づけるとともに、現在29人上限の登録定員を拡大することで在宅療養を支援するサービスとしての看多機を必要とする人に確実にケアを提供する②介護保険法における看多機の定義を実情に合わせて見直し、通いと泊まりにおいて「看護」を提供していることを明記する―と制度改正を求めている。
日本慢性期医療協会の橋本康子委員は、高齢者虐待について「私たち医療者も一時期に比べると、全国的に身体拘束防止に対する熱意が低下しているのではないかと反省している。もう一度、身体拘束防止に真剣に取組み、身体拘束をしなくてもいいようなスキルや工夫を広めることが必要だ」と述べた。
一方、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、老健施設は中学校区に1施設整備され、常勤の管理医師や夜勤の看護師、リハビリ専門職が常駐していることをあげ、「老健はいわゆる大規模多機能施設だといえるため、小多機や看多機の機能も十分に補完できる能力がある。多くの老健では、在宅支援機能も高まっている。こうしたことから、私たち老健施設にさらなる役割と責務を与えてほしい」と要望した。