【詳解】第170回社会保障審議会介護給付費分科会(4月10日)②
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福祉用具貸与の価格上限を見直さないことを了承
社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は10日、①2018年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査結果②2019年度には福祉用具貸与価格の上限の見直しは行わないこと③2018年度介護従事者処遇状況等調査結果─について検討し、いずれも了承した。
このうち①2018年度改定効果検証等調査では、「福祉用具貸与価格の適正化に関する調査」など以下の7本が実施され、3月14日の介護報酬改定検証・研究委員会(松田晋哉委員長)で了承されたもの。同委員会の意見を踏まえ、一部修正されたものが分科会に報告された。
②厚労省は昨年10月に設定した福祉用具ごとの貸与価格の上限について今年度は見直さないこととする一方、新商品は上限設定を行っていくことを提案(図表1)。新商品の上限は現行ルールに則り、3ヵ月に一度設定される。分科会は了承した。
厚労省の提案は「福祉用具貸与価格の適正化に関する調査」を踏まえもの。同調査で上限設定により高額な保険請求自体が排除されていることが確認されるとともに、設定された上限の影響の拡大が想定されることなどのため。
30年度介護報酬改定に関する審議報告では、設定された貸与価格の上限について31年度以降も概ね1年に一度の頻度で見直しを行う旨が盛り込まれたが、「施行後の実態も踏まえつつ、実施していく」とされていた(図表2)。
③介護従事者処遇状況等調査結果からは、介護職員処遇改善加算を取得した施設・事業所では、月給・常勤の介護職員の平均給与額が30万円を超えるなど、介護職員の処遇改善が着実に進んでいることが明らかになった。〔→関連記事:【詳解】第170回社会保障審議会介護給付費分科会(4月10日)①〕
上限設定等により4.5億円削減
「福祉用具貸与価格の適正化に関する調査」では昨年10月から用具の商品ごとの全国平均貸与価格の公表や価格の上限設定が行われた影響などを調べた。介護保険総合データベースを用いた分析と事業所・利用者への調査を実施。事業所は全国6325事カ所を対象とした悉皆調査(災害救助法の適用地域を除く)。有効回収数は2978事業所(47.1%)。利用者については上限を超える貸与サービスを受けていた1万3508人を対象とした(図表3)。
介護DBの分析によると、29年10月貸与実績で貸与価格の上限を超える貸与は約61万レコード。レコードとは介護給付明細書に記載された1件ごとの請求内容を指す。上限額を超える総額は約3.4億円で貸与総額の約1.5%。上限を超える貸与があった事業所は95.7%であった。30年10月分では上限額が超える貸与は0%になった(図表4)。
① さらに事業所別・商品別で29年と30年の10月分の貸与価格の変化分を求めた上で29年10月分のレコード数を乗じることで貸与額の変化を算出。貸与価格の上限を超える額の総額を超えるマイナスがあり、4.5億円削減された(図表5)。
② 事業所への調査では、商品の減額が1商品以上あった事業所の割合は87.6%であった(図表6)。
また価格変更に当たり考慮した点としては(複数回答)、「貸与価格の上限を考慮して変更」が最も多く75.7%(図表7)。
29年度の収益と比較して30年度の収益への影響については、「減少した(する見込み)」が最も多く74.2%となった(図表8)。
利用者調査では、価格の上限を超えていた商品でサービスの変化があったのは2.7%であり、超えていない商品の0.9%に比べ3倍であったことが分かった。変更された内容は、訪問頻度の減少や訪問時間の短縮などであった(図表9)。