【詳解】第170回社会保障審議会介護給付費分科会(4月10日)①
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介護職員の平均給与が月30万円超える 厚労省が30年度処遇状況調査を公表
厚生労働省は4月10日、平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果を社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)に示した。分科会は了承した。
調査から、介護職員処遇改善加算を取得した施設・事業所では、月給・常勤の介護職員の平均給与額が30万円を超えるなど、介護職員の処遇改善が着実に進んでいることが明らかになった(図表1)。
その理由について、厚労省は、30年度介護報酬改定が0.54%のプラス改定であったことや人材確保に向けた「事業者の努力」、29年度の臨時改定で導入された加算(Ⅰ)の取得事業所の割合が増えていることを挙げた。
有効回答率が1.6ポイント上昇
調査は、層化無作為抽出法で抽出された、特別養護老人ホームや老健施設、介護療養型医療施設、訪問介護、通所介護など7サービスの1万670施設・事業所を対象に30年10月に実施した。有効回答率は74.1%で、前回よりも1.6ポイント上昇した。調査項目は、介護職員処遇改善加算の取得状況や調査対象施設・事業所に在籍する介護従事者等の29年および30年9月の給与など。
介護職員処遇改善加算は30年度改定では改正されていない。29年度に介護人材の処遇改善に絞り、1.14%の臨時改定が実施された。昇給と結びついたキャリアップの仕組みの構築を求める新たなキャリアパス要件Ⅲが追加されるとともに、それまでの加算(Ⅰ)よりも1万円相当上乗せされた新たな加算(Ⅰ)が導入され、加算全体は5段階となった(図表2)。
平均給与額が1万850円増加
加算(Ⅰ)~(Ⅳ)を取得した施設・事業所の介護職員(月給・常勤)の30年9月の平均給与額は前年同月よりも1万850円(3.7%)増加し30万970円となった。全体の平均勤続年数は7.6年(図表3)。
平均給与額は勤続年数に関わらず増加した。特に勤続1年目では2万8590円増加した。この点について厚労省は、たとえば29年4月から勤務を開始した介護職員の場合、同年6月期の賞与の算定に係る勤務月数が他の職員よりも短く、相対的に同年9月の平均給与額が低くなったことを要因の1つとした(図表4)。
また時給・非常勤でも月額平均で1730円増加し10万5030円となった(図表5)。
他職種をみても全般的に増加傾向だ。たとえば看護職員(月給・常勤)では平均給与額は7190円増加し37万2070円(上記図表3参照)。時給・非常勤では月額平均で170円減少し12万2450円となったが、厚労省は「実労働時間数の減少が影響している」と説明した(上記図表5参照)。
加算(Ⅰ)の取得割合が4.4ポイント上昇
加算を取得している施設・事業所は全体では91.1%。このうち取得している加算の種類では加算(Ⅰ)が69.3%と最多。一方、取得していない施設・事業所も8.9%と1割弱存在する(図表6)。
前回の29年度調査では、加算の取得は91.2%。このうち加算(Ⅰ)の取得は64.9%であり、今回の調査では前回より4.4ポイント上昇している。一方、廃止が決まっている加算(Ⅳ)・(Ⅴ)の割合は減少している。加算(Ⅳ)は0.7ポイント減少して0.4%になった。加算(Ⅴ)は0.4ポイント減少して0.6ポイントになった。
施設・事業所別にみると、特養では取得が98.5%。老健では取得が94.6%と全体の平均を上回る。一方、介護療養型では取得が70.0%に止まる。
加算を取得していない理由として、全体で「事務作業が煩雑」が最も多く53.2%。「利用者負担の発生」が33.1%、「対象の制約のため困難」が25.8%など(図表7)。
施設・事業所別にみると、介護療養型では「対象の制約のため困難」が48.7%と最も多い。介護職員のみが加算の対象であり、職種間のバランスが取れなくなるためだ。他方、訪問介護や通所介護では「事務作業が煩雑」が多く、それぞれ56.9%と54.0%と全体を上回る。
給与等の引き上げの実施方法については、全体で「定期昇給を実施(予定)」が最も多く69.9%(図表8)。
給与等の引き上げ以外の処遇改善状況を見ると、資質の向上では、「介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修等の受講支援」の実施率が69.3%と最も多い。
労働環境・処遇の改善では、「事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成による責任の素材の明確化」が84.5%上った(図表9)。