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「こども小国」の日本(中村秀一)

霞が関と現場の間で

41年連続減のこども数

総務省は「こどもの日」を控えて、日本の15歳未満のこども人口推計(4月1日現在)を公表した。こどもの人口は前年より25万人少ない1465万人で、1982年から41年連続で減少。総人口に占める割合は11.7%で、1975年から48年連続で減少し、いずれも記録がある1950年以降で過去最低である。

1950年のこどもの割合は35.4%であったので、現在はその3分の1以下である。世界には人口4000万人の国が35カ国あるが、こどもの割合はその中で日本が最低である。日本は「こども小国」になってしまっている。

一層進む人口減少

総人口の推移も気になるところだが、2021年10月現在の総人口は1億2550万人で、前年に比べ64万4千人の減少。減少幅は1950年以降過去最大ということだ。自然増減では、60万9千人の減少。15年連続の自然減少で、減少幅は拡大している。社会増減は、9年ぶりの減少で、3万5千人減少した。新型コロナの影響であろう。

人口が増加しているのは沖縄県のみで、他の46都道府県は人口が減っている。そもそも、日本で自然増があるのは沖縄県のみである。埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県及び福岡県の5都県は、前年は人口が増加していたものが、人口減に転じた。これらの地域の社会増が減り、その地域の自然減を上回ることができなくなったためだ。

東京都で人口が減ったのは1995年以来26年ぶりである。東京都の23区では2019年には6万4176人の転入超過があった。それが、20年には超過幅が1万3034人までに減少し、21年には逆に1万4828人の転出超過になった。特に、世田谷区など23区西部の落ち込みが著しい。

政府は2014年に「まち・ひと・しごと長期ビジョン」を策定し、東京一局集中の是正に努めてきたが、以後も東京への人口流入は止まらなかった。それが新型コロナウイルスによって実現された。

結婚するカップルも減少

厚生労働省の人口動態統計(2月公表)によると、21年の婚姻数は5万1242組で前年より4.3%減っており、戦後最少となった。日本では婚姻した夫婦以外からの出生はほとんどないので、婚姻数の減少は将来の出生数の減少につながり、更なる懸念材料である。

人口学の教えるところでは、人口は出生、死亡、移動の3要素で決まる。その変動要因には行動要因と構造要因がある。行動は人々の意思によって比較的容易に変わりうるが、母親候補の人口が激減したという構造は直ちには変わらない。「こども小国」からの脱却は容易ではない。

Web版への追加

コラム掲載後の6月3日に、厚生労働省は「令和3年人口動態統計月報年計(概数)」を公表した。それによると、

  • 出生数は、811,604人てで過去最少(対前年29,231人減少)

  • 合計特殊出生率は、1.30で低下(対前年0.03ポイント低下)

  • 死亡数は、1,439,809人で戦後最多(対前年67,054人増加)

  • 自然増減数は、△628,205人で過去最大の減少(対前年96,285人減少)

  • 婚姻件数は、501,116組で戦後最少(対前年24,391組減少)

という結果になっている。
合計特殊出生率は、2005年の1.26が最低で、2013年の1.43まで回復、2014年は1.42、2015年に1.45を記録した以降、低下を続け、2020年に1.33から2021年にはさらに低下したのである。

(本コラムは、社会保険旬報2022年6月1日号に掲載されました)


中村秀一(なかむら・しゅういち)
 医療介護福祉政策研究フォーラム理事長 国際医療福祉大学大学院教授 
1973年、厚生省(当時)入省。老人福祉課長、年金課長、保険局企画課長、大臣官房政策課長、厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政担当)、老健局長、社会・援護局長を経て、2008年から2010年まで社会保険診療報酬支払基金理事長。2010年10月から2014年2月まで内閣官房社会保障改革担当室長として「社会保障と税の一体改革」の事務局を務める。この間、1981年から84年まで在スウェーデン日本国大使館、1987年から89年まで北海道庁に勤務。著書は『平成の社会保障』(社会保険出版社)など。

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