#13 |iDeCoとNISAはなぜ投資に向いているの?
改めて、投資は必要か?
このコラムでは、第7回と第8回で投資の必要性や基本を確認し、第9回から第12回でおもな金融商品について解説してきましたが、今回からはそれらの金融商品をiDeCoやNISAの制度を使って運用する方法について見ていきます。
実は先月、50代を対象とするライフプランセミナーを5回担当しました。セミナーではある主催者からのご要望をきっかけに、昨年度から「老後資金の自助努力」という章を新たに設け、投資の必要性やiDeCoやNISAの制度についても触れています。
この章に入るときに、「すでにNISAをやっている方は?」と尋ねてみると、手が上がるのは多くても1割程度で、全体的にあまり関心もない様子です。そこで導入として次の2つの話題をすると参加者の目の色が少し変わり、「聞いてみようかな」と前向きな反応になります。
「日銀のマイナス金利政策が解除され、預貯金の金利が少しは上がってきましたが、現在のメガバンクの1年定期の利率は0.125%です。100万円を1年間預けておいても受け取れる利息は、税金を差し引いて1,000円弱です。それに対して物価はというと、1年前と比べて2%以上あがってきていますので、資産をすべて預貯金に置いている場合は、価値がどんどん目減りしていきます。そのため“預貯金なら減らないから安全“とは言えないのが現状です」。
「国の政策として金融経済教育を進めるために、現在は高校で資産形成に関する授業が必修化され、高校生が投資信託等の金融商品について学ぶ時代になりました。自分のお金は守るだけではなく、自分で育てていくことが大切になってきています」。
ただし、投資を煽る講師だと思われてもいけませんので、「ここからは“投資に関心はあるが不安もある”という方に向けた投資の基礎知識の話になりますが、投資する・しないはまったく個人の自由で、“必ずお金が増えるとは限らない投資なんて一切しない”というスタンスも私はもちろん尊重しています」とお断りを入れるようにしています。
iDeCoとNISAの共通メリット
iDeCoは何度かの法改正を経て、現在は少なくとも60歳までは誰でも加入できる制度になり、またNISAは2024年1月から抜本的拡充・恒久化が図られ、新NISAとしてスタートしています。
この2つはどちらも個人が資産形成をするための制度ですが、共通のメリットは運用益が非課税になる税制優遇がある点です。金融機関の一般口座や特定口座で投資をする場合、運用益には必ず20.315%の税金がかかりますが、iDeCoやNISAではまったく税金がかからず、運用益全部が次の投資の元本に回るため、複利効果により資産が増えやすくなります。
それともうひとつ少額からの投資が可能という点も共通で、最低積立金額(※)はiDeCoなら月5,000円、NISAは月100円、1,000円、10,000円など金融機関によって異なります。
(このコラムの最後に<図表2>としてiDeCoとNISAの比較表を掲載しています。以下の文章中の(※)の部分はその比較表をご参照ください。)
投資の3つの大事なポイント
国はなぜiDeCoやNISAの制度を利用した投資を推奨しているのでしょうか?
実は運用益が非課税になるというだけではなく他にも理由があります。
iDeCoやNISAでは、前回のコラムで解説した投資信託を利用するケースが多いですが、その場合は投資の3つの大事なポイントに沿った運用が可能になるのです。これについて、いつも「老後資金の自助努力」の章で使っているスライドとともに解説します。