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指定介護予防支援事業者の対象拡大・経営情報の報告を義務化等――介護保険法改正法が公布(2023年5月19日)

「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(法律第31号)が、5月19日に公布された。

かかりつけ医機能の制度整備や後期高齢者医療制度による出産育児一時金の支援等が盛り込まれ、健康保険法や医療法、医療確保総合確保法など多数の法改正が実施される。

介護保険法に関する一部改正も示されており、介護保険事業計画等へ生産性向上を位置づけるなどの計画に関する内容や指定介護予防支援事業者の対象拡大、介護サービス事業者経営情報に関する規定や地域支援事業における介護情報の収集・共有等に関する事業の創設など、幅広い見直しが実施される。

ここでは、こうした介護保険法の見直しについて、次の6つのポイントに分けてその概要を紹介する。なお、施行は一部の規定(下記6の(一))を除き令和6年4月1日となっている。

1 介護サービスを提供する事業所等における生産性の向上に関する事項


(一) 都道府県は、介護保険事業の運営に関する助言・援助をするに当たっては、介護サービスを提供する事業所等の業務の効率化や介護サービスの質の向上その他の生産性の向上に資する取組が促進されるよう努めなければならないものとする。また、都道府県介護保険事業支援計画において、介護給付等対象サービスの提供等のための事業所等における業務の効率化、介護サービスの質の向上その他の生産性の向上に資する事業に関する事項について定めるよう努めることとする。

(二) 市町村介護保険事業計画において、事業所等における業務の効率化や介護サービスの質の向上、その他の生産性の向上に資する都道府県と連携した取組に関する事項について定めるよう努めることとする。

2 複合型サービスの定義の見直しに関する事項

複合型サービスのうち、訪問看護と小規模多機能型居宅介護の組合せにより提供されるサービス(看護小規模多機能型居宅介護)について、その内容を明確化する。具体的には、次のとおりとする。

訪問看護及び小規模多機能型居宅介護を一体的に提供することにより、居宅要介護者について、その者の居宅において、又は第十九項の厚生労働省令で定めるサービスの拠点に通わせ、若しくは短期間宿泊させ、日常生活上の世話及び機能訓練並びに療養上の世話又は必要な診療の補助を行うもの

3 地域包括支援センターの業務の見直しに関する事項

(一) 指定介護予防支援事業者の対象拡大等

  • (1)介護予防支援事業者の指定の申請について、地域包括支援センターの設置者に加えて指定居宅介護支援事業者も行うことができることとする。

  • (2)市町村長は、介護予防サービス計画の検証の実施に当たって必要があると認めるときは、指定介護予防支援事業者に対し、当該計画の実施状況等に関する情報提供を求めることができることとする。

(二) 包括的支援事業の委託規定の見直し

  • 地域包括支援センターの設置者は、指定居宅介護支援事業者等に対し、包括的支援事業の一部を委託することができることとする。

4 介護サービス事業者経営情報の調査および分析等に関する事項

(一) 都道府県知事は、当該区域内に事業所等を有する介護サービス事業者の、当該事業所等ごとの収益および費用その他の事項(介護サービス事業者経営情報)について、調査・分析を行い、その内容を公表するよう努めることとする。

(二) 介護サービス事業者は、介護サービス事業者経営情報を、当該事業所等の所在地を管轄する都道府県知事に報告しなければならないこととする。

(三) 厚生労働大臣は、介護サービス事業者経営情報を収集し、整理し、整理した情報の分析の結果を国民にインターネット等の高度情報通信ネットワークの利用を通じて迅速に提供することができるよう、必要な施策を実施することとする。それにあたり必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、当該区域内に事業所等を有する介護サービス事業者の、事業所等の活動状況その他の事項に関する情報の提供を求めることができることとする。

5 介護情報の収集・提供等に係る事業の創設に関する事項


(一) 市町村が行う地域支援事業に、次の事業を追加することとする。

被保険者の保健医療の向上及び福祉の増進を図るため、被保険者、介護サービス事業者その他の関係者が被保険者に係る情報を共有し、及び活用することを促進する事業

(二) 市町村は、上記の事業実施に係る被保険者等の情報の収集、整理、利用または提供に関する事務について、支払基金等に委託することができることとする。

(三) 市町村は、上記の事務を委託する場合は、他の市町村や社会保険診療報酬支払基金法に規定する医療保険者、医療に関する給付その他の事務を行う者と共同して委託することとする。

(四) 介護サービスを利用する要介護者等の心身の状況等、当該サービスの内容その他の事項に関する情報の収集経路の変更、支払基金の業務関連規定の整備、被保険者番号等の利用制限その他所要の規定の整備を行うこととする(罰則規定なども追加)。

6 介護保険事業計画の見直しに関する事項

(一) 市町村は、医療法の見直しにより追加される、かかりつけ医機能の確保に関する協議の結果を考慮して、市町村介護保険事業計画を作成するよう努めることとする【令和7年4月1日施行】。

(二) 市町村および都道府県は、市町村介護保険事業計画・都道府県介護保険事業支援計画の作成に当たっては、住民の加齢に伴う身体的、精神的および社会的な特性を踏まえた医療・介護の効果的かつ効率的な提供の重要性に留意することとする。 

なお検討規定として、政府は、①受益と負担の均衡がとれた社会保障制度の確立を図るための更なる改革について速やかに検討を加え、結果に基づく措置を講ずること、②法施行後5年を目途として施行の状況等を勘案し、必要があると認めるときは各法律の規定について検討を加え結果に基づいて所要の措置を講ずることが規定されている。

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