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パンデミックの渦中で(中村秀一)

新型コロナウイルスのパンデミックは世界を揺るがす事態となり、私たちの生活を大きく変えることになりました。経済への影響も深刻で、政治的にも大きなインパクトが予想されます。「コロナ以後」の世界をどう生きるか、考える必要がありそうです。
(本コラムは、
社会保険旬報2020年5月1日号に掲載されました)

世界を揺るがすパンデミック

新型コロナウイルスの感染が止まらない。わが国で最初の感染が報じられたのは1月16日であった。1月30日には政府の対策本部が設置されている。この頃、筆者のフォーラムで研究会を主宰したが、厚生労働省のメンバーが「コロナで忙しい」と断ってきたことを覚えている。2月に入るとわが身辺でも会議や行事の中止、延期が相次ぐようになった。職場である大学のキャンパスも立ち入り禁止となるなど、日々の生活に影響が出てきた。3月24日には、オリンピックの1年延期が決定。遂に4月7日に7都府県への緊急事態宣言が出され、16日には全国に拡大された。

感染は、昨年12月半ばに中国の武漢から始まったとされる。中国は強力に封じ込めを行い、封鎖は解かれるまでになったが、この間に感染の中心はヨーロッパに移り、特にイタリア、スペインを中心に猛威を振るっている。その後、米国で感染が拡大し、最多の感染者を抱えることとなった。まさにパンデミックが世界を揺るがしている。

緊急事態宣言の下で

この原稿を書いている時点では東京は欧米諸国が実施した「都市封鎖」には至っていない。そうはいっても外出は極力自粛だ。これまで当たり前だと思っていた日常生活を変えざるを得なくなった。蔓延初期の頃、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムでトーマス・フリードマンが世界は「コロナ以前」(BC)と「コロナ以後」(AC)になると書いていた。大袈裟なと思ったが、結構当たっているかもしれない。

カミュの『ペスト』が売れているという。この状況をどう理解すべきか、多くの人が答えを求めているのだろう。筆者はこの3月までの1年間、毎週NHKラジオ(古典購読)で「『方丈記』と鴨長明の人生」を聞いてきた。多くの災厄を経験し隠者となって方丈の庵に住む長明が、極めて現代的にさえ感じられる。

危機の影響は

感染症も自然災害とのことである。1995年の阪神・淡路大震災は自社さ政権下で生じ、時の首相は社会党の村山富市氏であった。2011年の東日本大震災・福島原発事故は民主党政権下、菅首相の危機対応が議論となった。今回は安倍長期政権の危機管理能力が問われる正念場だ。

経済への打撃も深刻だ。1997年11月に生じた金融危機によって橋本内閣の財政構造改革は挫折し、翌年7月の参院選の敗北により首相は退陣した。2008年9月のリーマンショックで麻生首相が衆議院の解散を見送り、1年後の民主党への政権交替に繋がった。今回の政治的な帰結はどうか。アメリカ大統領選の行方とともに気になるところだ。

中村秀一(なかむら・しゅういち)
医療介護福祉政策研究フォーラム理事長
国際医療福祉大学大学院教授
1973年、厚生省(当時)入省。 老人福祉課長、年金課長、保険局企画課長、大臣官房政策課長、厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政担当)、老健局長、社会・援護局長を経て、2008年から2010年まで社会保険診療報酬支払基金理事長。2010年10月から2014年2月まで内閣官房社会保障改革担当室長として「社会保障と税の一体改革」の事務局を務める。この間、1981年から84年まで在スウェーデン日本国大使館、1987年から89年まで北海道庁に勤務。著書は『平成の社会保障』(社会保険出版社)など。


  


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