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成年後見制度の市町村長申立の円滑な実施に向け実務者協議が初会合(10月6日)

厚労省は6日、「成年後見制度における市町村長申立に関する実務者協議」の初会合を開催した。

自治体職員や研究者など8名で構成され、座長には、秋山由美子・日本地域福祉研究所理事が就任した。成年後見制度における円滑・迅速な市町村長申立の実施に向けて議論を深め、年度内に取りまとめる予定だ。

地域ごとの運用ルールなどの実態調査の実施を提案

市町村長は、老人福祉法等により、判断能力が低下した65歳以上の高齢者等について、その福祉を図るために、特に必要な場合、成年後見審判の請求ができる。

現状では対象者の現在地と居住地、援護元が異なるなど複数の市町村がかかわる場合、いずれの市町村が審判請求を行うか基準が無い。市町村間の調整で実施されている。

市町村からは、国から一律に方針を示すことが要望されている。厚労省は、「どのような方策を取ることが申立事務の迅速化、円滑化に資するかという観点から検討する必要がある」と説明。従来の運用の経緯もあることから全市町村及び都道府県を対象に実態把握を行うことを提案した。

調査項目案として、▽市町村申立の対象者▽市町村間での調整に支障があった例の有無▽地域ごとの運用ルールの有無▽虐待案件等の緊急時に親族調査を省略した場合の有無▽緊急時の親族確認の省略に関する考え─などを示した。

さらに検討の留意点として都道府県の役割と、仮に国がルールを示す場合の施行時期をどのように考えるか、などをあげた。

また市町村長申立を行うのは、「親族等による法定後見の開始の審判等の請求を行うことが期待できず、市町村長が本人の保護を図るための審判の請求を行う必要な状況にある場合」である。市町村長申立を実施する前提として、2親等以内の親族の有無や、3親等又は4親等までの親族で、審判請求を行う者の存在について確認する必要がある。

4親等までの親族の確認は、自治体の負担になるとともに、迅速な後見人の選任等の妨げになっていることが少なくない。厚労省は、一定の条件下で本人の保護の観点から親族調査を省略することの検討を要請。この課題についても実態調査の結果を踏まえて議論を深めることを示した。

また専門職団体から申立事務の見直し案が提案されており、虐待事案などは、速やかに市町村長が審判請求を行うことを可能とすることが示されている。

意見交換では、複数の構成員が措置元の市町村で申立を行うことを提案。話し合いが必要な場合の調整役をどこが担うのかも課題として指摘された。

他方、親族調査について、虐待など緊急を要する場合に2親等以内の親族の存在は確認するが意向調査は行わず、市町村長の審判請求を行うことなどが紹介された。

実態調査の項目における親族調査の省略について、親族の存在そのものの確認の省略と、申立の意向の確認の省略の両方について把握することが提案された。

実務者協議は、市町村における実態把握調査や関係団体からのヒアリングなどを踏まえ、年度内に議論を取りまとめる予定だ。

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