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介護給付費分科会が処遇改善を議論、報酬での対応には慎重意見(12月8日)

社会保障審議会介護給付費分科会は12月8日、令和3年度補正予算案に盛り込まれた介護職員の処遇改善について議論した。委員からは今回の措置を評価する一方、10月以降の介護報酬による対応には慎重な意見が示された。事業の継続や対象の拡大を求める声もあがった。

政府の補正予算案では1000億円を計上。来年4年2月~9月の間に介護職員1人当たり月額平均9000円の賃金引上げに相当する額を補助。対象職種は介護職員だが、事業所の判断で柔軟な運用を認めている。

来年10月以降の対応は、年末の令和4年度予算編成過程で検討する。

介護現場で働く方々の収入の引上げ:令和3年度補正予算案(検討中)
出典:介護給付費分科会(2021/12/8)資料  

連合の小林司委員は政府の方針を評価した上で、①賃金の引き上げは全産業の平均に達するまで継続する必要がある。介護職員は他の産業平均よりも年収で120万円低いため、月に9000円引き上げても8年間は要する②ケアマネジャーや訪問介護、福祉用具専門相談員、事務員など介護現場で働くすべての労働者を対象とすべき―とした。

経団連の井上隆委員は「理解はするが、処遇改善は基本的には労使間で決める問題だ。仮に保険料で対応するとなると、どの程度の影響を与えるか検証が必要」と述べた。

健保連の河本滋文委員は「来年10月以降、仮に介護報酬で対応した場合、利用者負担や保険料負担につながるために慎重に考えるべきだ」と述べた。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、「現場職員の処遇改善は大変喜ばしいが、介護報酬で対応することは限界がある。現在の介護報酬改定でも2つの処遇改善加算が設けられており、本来はこれらも別財源で確保すべきものだと思っている」と述べた。10月から介護報酬で対応する場合の要望として、①現場の事務負担を増やさない②次期以降の介護報酬改定において処遇改善にかかる費用は改定率から除外する③看護・介護だけでなくその他の職種も対象にする―をあげた。

全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は、「介護職員の処遇改善は大変ありがたいが、処遇改善の財源は介護保険以外から調達できないか。処遇改善とサービス提供は別物として評価してほしい。また、介護職員だけに職種を限定せずに事業者の裁量に任せていただきたい」と要望した。

日本慢性期医療協会の田中志子委員は、病院で働く介護職員を対象にすることを求めた。病院の介護職員について「働く場所は医療現場だが、業務内容は施設で働く介護職員と変わらない。それにもかかわらず公的な資金は一切提供されていない。中医協の議論では介護ではなく看護助手の立場として扱われ、介護給付費分科会では病院にいることから対象外にされるのでは彼らに申し訳ない」と述べた。

日本医師会の江澤和彦委員は、「単発的な措置ではなく恒久化することが課題で、来年10月以降どのように続けていくのか。8か月で1000億円だから年間で1500億円。この額は今年4月の介護報酬改定+0.65%の約2倍の手当てを要する。利用者負担や保険料負担に与える影響は大きく、慎重な検討が必要である。果たして介護報酬で対応が可能なのか。多くの人が限界に達していると考えていると思う」と述べた。    

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