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GPIFの次期中期目標は、今秋以降に審議予定――資金運用部会

厚生労働省の社会保障審議会資金運用部会(部会長=神作裕之・学習院大学法学部教授)は7月26日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の令和5年度業務実績と第4期中期目標期間見込業務実績などについて報告を受けた。GPIFでは、厚労省が定める中期目標に基づいて中期計画と年度計画を策定し、業務実績の自己評価を行い、厚生労働大臣の評価を受ける。第4期中期目標期間は、令和2年4月から令和7年3月までの5年間となっており、次期中期目標と中期計画については新たな運用目標とともに今年の秋以降に議論する予定となっている。

厚生労働省資料より

令和5年度業務実績は、基本的な運用手法及び運用目標について、資産全体の収益率が22.67%、収益額が約45兆円のプラスを確保したほか、資産全体の超過収益率が年度で0.04%のプラスとなり、複合ベンチマーク収益率を確保。年金特別会計を含む年金積立金全体の実質的な運用利回りが4.24%のプラスとなり、長期的な運用目標である1.7%を上回ったことなどからA評価とした。

運用受託機関等の選定、評価及び管理については、運用受託機関構成の高度化や、運用受託機関等への資金配分や回収を迅速化・機動化したことなどにより、自己評価ではS評価とした。一方、大臣評価案では、運用受託機関等の選定・管理の強化及び資金配分の見直しや、更なる収益の源泉の多様化のための取り組みが高く評価できるとし、所期の目標を上回る成果が得られていると認められることから、自己評価をA評価とした。

また、情報発信・広報及び透明性の確保については、YouTube動画制作を内製化し、四半期の運用実績等についてCIOが紹介する動画や、金融リテラシー向上に資する内容を解説する動画などを制作したほか、公式Xや公式HPによる情報発信も引き続き強化したことにより、チャンネル登録者数やフォロワー数が増加。GPIFに対する信頼度も年々改善しており、「信頼できる」39.5%(令和元年度比6.4ポイント増)、「信頼できない」21.6%(同6.1ポイント改善)となった。この結果、GPIFは自己評価をA評価とした。

厚生労働省資料より

第4期中期計画の自己評価は、中期目標期間(見込)では運用の多様化・高度化が奏功し、運用目標を達成する可能性が高いことや、市場変動が激しい中でリスク管理に注力した結果、リスク指標を大幅に低減していること、ESG活動、スチュワードシップ活動の先進的な取り組みのほか、被保険者向けの広報活動にも注力していることにより、「年金財政上必要な運用利回りを最低限のリスクで確保」という目標を上回る成果を挙げたと総評した。大臣評価案では、総合評定をA評価とした。
 
委員からは、中長期的な視点での運用やリスク管理をしっかり行うよう要請する意見や、多様な人材の確保、広報活動に一層注力することなどを求める意見があったが、業務実績評価案に対する異論はなく、了承された。


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