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頭の上下動による脳への物理的衝撃が高血圧改善に好影響 国リハなどが「適度な運動」のメカニズムを発表(2023年7月7日)

国立障害者リハビリテーションセンター・国立循環器病研究センター・東京大学などからなる共同研究グループは、適度な運動が高血圧改善をもたらすメカニズムを発見したと公表した。運動による「頭の上下動による脳への物理的衝撃」が高血圧の改善に好影響を与えているという。発表によれば、頭部への物理的衝撃を高血圧者のヒトに適用すると高血圧が改善することを明らかにしたのは世界で初めて。

本研究で明らかにした適度な運動による高血圧改善のメカニズム及びそのヒトでの検証:
ラットで高血圧改善効果が示されている中速度(分速20メートル)走行では、前肢の着地時に頭部に約1Gの衝撃(加速度)が生じる。この頭部への衝撃を再現するラットの受動的頭部上下動は、脳内の間質液を流動させ、血圧調節中枢が存在する脳領域のアストロサイトにおけるアンジオテンシン受容体の発現を抑制し、高血圧を改善した。ヒトにおける適度な運動である軽いジョギングでも、足が着地する際に頭部に約1Gの衝撃が生じるが、頭部への1Gの衝撃をヒトで再現する座面上下動椅子は高血圧を改善した
(図・キャプション:共同研究グループ発表資料)

共同研究グループの発表によれば、認知症やうつ病、糖尿病、がんなど多くの加齢に関連した疾患・障害に「適度な運動」が有効であることは統計的に証明されているが、運動の何が身体に好影響を与えるかはほぼ解明されていなかったという。一方で「適度な運動」には、ランニングやジョギング、ウォーキングなど、足が地面に接地した瞬間に地面からの反力を受け、体に物理的衝撃が加わるものが多い。そのため本研究では、健康維持・促進法としての運動の「本質」の一部が、体への物理的衝撃およびそれにより生じる間質液流動促進ではないかという仮説を立てた。

仮説検証のためラットとヒトを対象に実験を行い、ヒト成人を対象とした臨床試験からは次の結果を得た。

  • ヒトにおける適度な運動の典型である、軽いジョギングあるいは速歩きでも、足の着地時に頭部に1Gの衝撃が上下方向に加わることが分かった

  • 座面が上下動することで、1Gの上下方向の衝撃がヒトの頭部に加わるように設計された椅子に1日30分間・1週間に3日・1か月間(4.5週間)搭乗すると、高血圧改善効果、交感神経活性抑制効果が認められた

  • 1週間に3日・1か月間の上下動椅子搭乗期間の終了後も、約1か月間は高血圧改善効果が持続した

  • 過度の血圧低下(低血圧症状)を含め、この座面上下動椅子搭乗による明らかな有害事象は認められなかった

これらの結果から共同研究グループは、「病気やけがなどで運動したくても運動できない者(寝たきりの高齢者や肢体不自由障害者)にも適用可能な擬似運動治療法の開発につながる可能性」を指摘している。

研究成果は7月7日、英科学誌『Nature Biomedical Engineering』でオンライン公開された。

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