DBの給付減額の取り扱いなどを審議――第37回企業年金・個人年金部会
厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会(部会長=森戸英幸・慶應義塾大学大学院法務研究科教授)は11月8日、①個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢と受給開始年齢②拠出の在り方③DBの給付減額の判定基準や手続き――について審議した。
iDeCoの加入可能年齢については、政府が策定した「資産所得倍増プラン」で70歳まで引き上げることが示されている。引き上げを実施した場合、現行では働き方によって加入可能年齢が異なっているため、新たな加入要件を設定する必要がある。厚労省は、①国民年金被保険者②iDeCoの加入者・運用指図者③企業型DC等の私的年金の資産をiDeCoに移換する人――で老齢基礎年金やiDeCoの給付を受給していない場合に加入できる案を示し、委員から大きな反対はなかった。
また、iDeCoの受給開始年齢の上限の引き上げについては、現在でも高齢期における手続が困難であるとの指摘がある。これに加え、令和2年制度改正では受給開始可能年齢を70歳から75歳に引き上げたが、令和9年4月以降初めて75歳で受給を開始する人が生じるため、現時点では具体的なニーズや実務上の課題が把握できないことや、現在でも75歳以降での運用は可能であるという理由から、iDeCoの受給開始可能年齢の上限は引き続き75歳とし、令和9年4月以降の状況を踏まえて検討する案に賛同する委員が多数となった。
拠出の在り方については、「資産所得倍増プラン」などでiDeCoの拠出限度額の引き上げについて検討するよう要請されており、働き方やライフコースの変化等に伴い、企業年金・個人年金の充実を図る必要性が高まっている中、これらに対応する観点から、拠出の在り方を検討。委員からは、賃金や物価の上昇などを反映した上で、企業型DCも含めた拠出限度額の上限を引き上げるべきといった意見などが出された。
DBの給付減額の判定基準や手続きについては、定年延長に伴い、給付額が減らない場合でも計算上は給付額の現在価値が減少する「給付減額」と判定されることがある。給付減額となった場合は、労働組合や該当者の同意等を得ることとなっている。このことについて厚労省は、引き続き現行の判定基準を原則とするものの、一定の要件を満たし、DBの給付設計を変更することについて対象加入者の3分の2以上で組織する労働組合の合意がある場合には、例外的に「給付減額」として取り扱わないことができる案を示した。委員からは、合意の要件なども含めてもう少し時間をかけて議論するべきといった意見もあったが、おおむね賛成とする意見が多数を占めた。
厚労省は、①個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢と受給開始年齢については法律事項、②拠出の在り方については拠出の在り方そのものを見直す場合は法律事項、金額の水準の変更等の場合は政令事項、③DBの給付減額の判定基準や手続きについては通知事項――として対応するとしている。