厚労省が「障害者雇用ビジネス」の実態把握結果を報告
厚生労働省は4月17日、障害者雇用義務のある企業に対して障害者の就業場所となる施設・設備(農園、サテライトオフィス等)及び障害者の業務の提供等を行う事業者等について実態把握を行い、労働政策審議会障害者雇用分科会に報告した。同省が、いわゆる「障害者雇用ビジネス」の実態把握を行い、その結果を公表するのは初めて。実態把握調査は、令和5年3月末時点で障害者雇用ビジネス実施事業者23法人が運営する就業場所125ヵ所を対象に実施し、把握した就業場所ごとの利用企業数の合計は延べ1,081社以上、就業障害者数は6,568人以上に及ぶことがわかった。
調査によると、利用企業における障害者の業務は、障害者雇用ビジネス事業者が選定した業務に携わる場合が多く、その業務内容は野菜の栽培、ハーブの栽培・加工等のほか、軽作業、同事業者が実施する研修の受講など。成果物(野菜・ハーブティー等)による収益はほとんど見込まれず、社員への配布など福利厚生、もしくは子ども食堂へ寄付など社会貢献の一環として位置づけられている事例が多かった。
障害者雇用促進法は、障害者を経済社会の労働者の一員として、希望や適性に応じて能力を発揮する機会を付与することなどを目的としており、同省は単に障害者雇用率の達成のみを目的とする利用となっていないか、懸念されると言及した。
特に障害者の業務内容について、利用企業が主体的に選定・創出していない場合は、障害者がその能力を発揮しながら、やりがいを持って働けるような業務とならないことが懸念されるほか、社内における職域拡大等の機会も少ないと指摘。なかには障害者の募集・採用についても、障害者雇用ビジネス事業者から紹介を受けて、採用するような事例も見られた。
だが、決して悪質な事例ばかりではない。障害者が農業分野で就労することは就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む農業分野において新たな働き手の確保につながる可能性もあり、「農福連携」の取り組みとして推進されている。同省は、障害者本人の希望等を踏まえて能力開発・向上の取り組みを行うなどの好事例の横展開を図るべく、望ましい取り組みのポイントなどを幅広く周知していく考えだ。
参考:厚生労働省ホームページ
▶労働政策審議会障害者雇用分科会(4月17日)