看多機・かかりつけ医機能のあり方などに焦点 取りまとめに向けた議論を開始――介護保険部会(12月5日)
社会保障審議会の介護保険部会は12月5日、取りまとめに向けた「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」に関する1回目の議論を実施した。同案は、これまで論点などで示されてきた内容を具体化しつつ、新たな内容を追加したものとなっている。
事務局より示された「案」の構成は下表のとおり。「Ⅱ-2.給付と負担」に関して今回は示されず、次回以降の検討とした。また、末尾には今後「おわりに」が付加される見込みだ。
はじめに
Ⅰ.地域包括ケアシステムの深化・推進
総論
1.生活を支える介護サービス等の基盤の整備
地域の実情に応じた介護サービスの基盤整備/在宅サービスの基盤整備/ケアマネジメントの質の向上/福祉用具/在宅医療・介護連携/地域における高齢者リハビリテーションの推進/施設入所者への医療提供/施設サービス等の基盤整備/住まいと生活の一体的支援/介護情報利活用の推進/科学的介護の推進/介護現場の安全性の確保、リスクマネジメントの推進/高齢者虐待防止の推進
2.様々な生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現
総合事業の多様なサービスの在り方/通いの場、一般介護予防事業/認知症施策の推進/地域包括支援センターの体制整備等
3.保険者機能の強化 地域包括ケアシステムの構築に向けた保険者への支援/保険者機能強化推進交付金等/給付適正化・地域差分析/介護保険事業(支援)計画作成の効率化/要介護認定
Ⅱ 介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保
1.介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進
総論
(1)総合的な介護人材確保対策
(2)生産性の向上により、負担が軽減され働きやすい介護現場の実現
地域における生産性向上の推進体制の整備/施設や在宅におけるテクノロジーの活用/介護現場のタスクシェア・タスクシフティング/経営の大規模化・協働化等/文書負担の軽減/財務状況等の見える化
2.給付と負担〔今回の部会には示されず〕
看多機に居宅サービスの選択肢を要望
「Ⅰ-1.生活を支える介護サービス等の基盤の整備」のうち、「在宅サービスの基盤整備」では、看護小規模多機能型居宅介護について「地域密着型サービスとして、どのような地域であっても必要な方がサービスを利用しやすくなるような方策や、更なる普及を図るための方策について検討し、示していくことが適当である」との旨が追加された。
これに対し日看協の田母神参考人は、看護小規模多機能型居宅介護については特に小規模自治体での設置が難しいこと、指定や利用に一定の制限があることなどに触れ、二次医療圏単位で設置することに合理性があると主張。居宅サービスの指定による提供の選択を求め「いずれかを選択できるような制度の見直しに言及した表現にして欲しい」と要望した。
一方、日医の江澤委員はこれまでの看護小規模多機能型居宅介護の成り立ちについて、小規模多機能型居宅介護に訪問看護を付加した複合型サービスであり、あくまでベースは地域密着型サービスであると発言。「小規模多機能型居宅介護の利用者へのサービスの継続が目的であり、地域密着型サービスとして機能を発揮することを期待されている」とした。
かかりつけ医機能への言及は医療部会の動向を踏まえるか
また、「在宅医療・介護連携」では、医療部会においてかかりつけ医機能強化のための制度整備が検討されていることを踏まえ、「医療と介護の連携を強化するため、かかりつけ医機能の検討状況を踏まえて必要な対応を検討することが適当である」との旨が追加された。
これに対し、一橋大学の佐藤委員は、特別養護老人ホームにおける配置医も、ある意味施設におけるかかりつけ医であると言及。ただし、その役割を介護報酬で手当するべきか診療報酬で手当てするべきか線引きが曖昧であることが、「配置医の活動の場に制限をかけているのではないかという議論もある」とし、診療報酬との関係も可能であれば整理して欲しいと要望した。
高齢社会をよくする女性の会の石田委員は、患者側においてかかりつけ医がどれほど理解されているのかと疑問を呈し、記述について「かかりつけ医とはどういったものかを加えてはどうか」と提案した。
これに対し、早稲田大学の菊池座長は、来年の医療法改正に向けて議論している医療部会において、「現時点では法律の本則には示されていないかかりつけ医機能の定義をする提案がなされている」と応じ、こうした状況を踏まえどう盛り込むかを検討していく方向性が示された。
「認知症初期集中支援チーム」名称や役割の再考を求める
「Ⅰ-2.様々な生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現」では、主に地域支援事業に関する重要事項が記載された。このうち、「認知症施策の推進」に関しては、案には直接の記載はない認知症初期集中支援チームのあり方が焦点となった。
東京都健康長寿医療センターの粟田委員は、「昨年の国立長寿医療研究センターの実態調査によると、認知症初期集中支援チームの支援対象者の4割が困難事例であることが明らかになっている」とし、必要な支援にアクセスできずに困難化している可能性に言及。地域支援事業には、認知症があっても必要なアクセスビリティを確保できるような地域共生社会を作り上げることを大目標とする必要があると訴えた。
全老健の東委員も、11月24日に示された第102回介護保険部会の資料における認知症施策推進大綱の進捗状況で、初期集中支援チームにおける訪問実人数のKPI/目標の達成率が低かったことに言及(KPI/目標の全国で年間40,000件に対し、2021年度末で16,405人)。その原因は、チームの役割は初期対応にも関わらず、粟田委員の指摘したとおり4割が困難事例となっている実態にあるためではないかと推測。「名称と役割を再考する時期に来ているのではないか」と指摘し、名称を含め実態にあった役割の検討を求めた。
日慢協の橋本委員もこれに賛同。「初期の段階で専門の医療職が介入するということはあまりなく。むしろ民生委員や地域の人々の意見などを入れてもらえれば、初期集中支援チームとして動くのではないか」と発言した。
「Ⅱ-1.介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進」のうち「(1)総合的な介護人材確保対策」では、日本労働組合総連合会の小林委員が「処遇改善の必要性についての言及があまりにも弱い」と指摘。さらなる処遇改善の重要性について記載を求めた。日本介護クラフトユニオンの染川委員も「単に処遇改善という言葉に包含せず、具体的に目指す水準について触れるべき」と訴えた。
また、健保連の河本委員は、意見案とは若干別の話となると前置きしつつも、第2号被保険者に対する保険料負担の仕組みについて検討することを要望。「国の審議会といった開かれた場で検討・議論をし、大臣は審議会の意見を聴いた上で全国一律の保険料率を決定するといった、透明性のあるしくみに見直すことも必要ではないか」と提唱した。