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通いの場での会食の実施などを調査(4月6日)

東京都健康長寿医療センターは6日、「通いの場に参加する高齢者を中心とした摂食機能等に応じた適切な食事選択の方策に関する調査研究事業」の報告書を公表した。

同事業は、健康寿命延伸プランで拡充が目標に定められた「通いの場」に注目し、高齢者単独世帯等が抱える職に関する課題を改善する方策を「通いの場」で展開するうえでの基礎データを収集することが目的。

調査により、通いの場の会食における献立作成について管理栄養士・栄養士が行っているのが1割に止まる一方、参加者の「食べる機能」への配慮は専門職が関与している場合の方が行われていることが分かり、専門職の関与の重要性が改めて確認された。

全市町村と5千を超える通いの場を対象に調査

調査研究では、全1741市町村と、約5100件の会食を行う通いの場を対象とした郵送による全国調査を行うとともに、東京都・香川県の4カ所の通いの場の59名を対象に実測調査を実施。さらに通いの場での共食による適切な食事提供がなされるように、適切な食事を選択するためのツール素案も作成した。

全国調査では、824市町村(回収率47.1%)と、通いの場936カ所が回答した。通いの場については、自治体によって追加の対応が行われ母数が不明になり、回収率は示されていない。

◆自治体調査

自治体への調査では、会食を行っている通いの場が0ヵ所の市町村が31.3%と最も多かった。

通いの場への専門職の関与を尋ねたところ、「関与している」が82.6%。関与している職種で最も多かったのは、自治体に所属している専門職で保健師・看護師で82.7%。自治体以外に所属している専門職で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士で51.1%。また自治体の高齢者福祉・介護保険部門における管理栄養士の配置の有無では、「配置していない」が80.0%に上った。

◆通いの場調査

通いの場の開設のきっかけは、「自発的に開設」が42.0%で最も多く、次いで社協による企画・発案が21.8%。通いの場の活動主体は「住民(個人・有志の集まり・自治会)」が71.8%と最も多かった。

通いの場の運営・実施に専門職が関与しているか尋ねたところ、50.3%で関与していた。職種では、保健師・看護師が70.7%と最も多く、次いで管理栄養士・栄養士が32.0%。

通いの場で、参加者の生活状況の把握について尋ねたところ、「把握している」が71.0%。専門職が関与している場合、77.6%。関与していない場合は65.0%。把握している内容は「病気や健康状態」が77.7%であった。

食事の提供については、「運営側がその場で調理」が53.9%と最も多かった。献立作成者・調理担当者のいずれでも無償ボランティアが最も多く、それぞれ65.8%、70.7%。献立作成者で、管理栄養士・栄養士が担っているのは11.0%と1割程度に止まった。

食べる機能への配慮では、「配慮している」が59.8%と半数以上。専門職の関与の有無別でみると、関与している方が「配慮している」割合が高く、68.5%。関与していない場合は52.7%になった。

配慮している機能は、「噛みしめているか」が73.5%と最も多く、次いで「むせていないか」が62.4%であった。専門職の関与の有無別でみると、「むせていないか」で顕著な差が見られ、専門職が関与している場合は70.6%であった一方、関与していない場合は52.3%であった。

歯科職種や管理栄養士などとの連携の必要性を指摘

東京都・香川県の通いの場4カ所での実測調査では、参加者の栄養状態・口腔機能の実態調査を行った。簡易栄養状態評価表で栄養状態を評価したところ、低栄養の該当者は1.8%少なかったが、低栄養の恐れがある者は19.3%であり、報告書では「通いの場における低栄養予防の必要性が示唆された」と指摘した。

また口腔機能低下症の陰性・陽性の分類では、口腔乾燥の該当者が70.7%、舌圧低下該当者が56.9%であり、報告書では「地域高齢者を対象とした先行研究より該当者の割合が高くなっており、通いの場における口腔機能向上の啓発の必要性と摂食機能に応じた食事提供の必要性を示唆している」とした。

後期高齢者への質問票なども踏まえ、参加者の口腔機能への主観的な評価と口腔機能の状態が必ずしも一致していないと指摘。「歯科職種、栄養士・管理栄養士等の専門職種との連携を進めていくことが必要」としている。

調査などを踏まえて作成したツール素案では、健康づくりを進める上で、必要なものとして、運動と社会参加、さらに食(栄養)と口腔機能であることを紹介した。

栄養・食事の状態について、体重減少や、かたいものが噛みにくいかなど質問に「はい」「いいえ」で答えていき、状態にあった対応に誘導。食事のバランスが気になる人向けに簡単な食生活改善の方法を示すとともに、口の機能低下が気になる人向けに口腔体操などを紹介している。

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