見出し画像

多様な年金の給付水準の示し方などを審議――第19回年金部会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事、法学学術院教授)は11月5日、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方などについて審議した。毎年、年金額改定が行われる際に公表している厚生年金のモデル年金は、会社員等として平均的な収入で40年間働いた夫と専業主婦の妻の夫婦世帯を想定して算出してきたが、ライフスタイルの多様化などに合った示し方にするべきだと以前から指摘されていた。

このため、厚労省は令和6年財政検証結果を活用し、現行のモデル年金のほかにも①男性・第2号被保険者期間中心(厚生年金の被保険者期間が20年以上)②男性・第1号被保険者期間中心(第1号被保険者期間が20年以上)③女性・第2号被保険者期間中心④女性・第1号被保険者期間中心⑤女性・第3号被保険者期間中心(第3号被保険者期間が20年以上)――の給付水準を示すことを提案した。委員からは「新規裁定者と既裁定者で金額が異なる場合は示し方をどのようにするのか」「個人の年金額がわかるように公的年金シミュレーターも合わせて広報するべき」などの指摘があったが、おおむね賛同する意見が多数となった。

厚生労働省資料より

このほか、民法改正によって離婚時の財産分与請求権が現行の2年以内から5年以内に伸長されることから、離婚時の年金分割の請求期限についても2年以内から5年以内に伸長することが示された。
離婚時の年金分割は、婚姻期間に係る厚生年金の計算の元となる保険料納付記録(標準報酬)を分割する制度で、双方が合意した割合で分割する「合意分割」と、国民年金第3号被保険者であった者からの請求により2分の1に分割する「3号分割」がある。分割の対象となるのは、厚生年金(報酬比例部分)となり、基礎年金の額には影響しない。
離婚時の年金分割については、離婚前後のさまざまな事情によって2年以内に請求できないケースも少なくないことから、民法の改正とあわせて請求期間を5年以内に延ばす。民法の改正は、令和6年5月24日の法律の公布日から2年を超えない範囲内において、政令で定める日から施行される予定だ。

また、平成19年に被用者年金一元化が実施された際、財政状況の悪化が見込まれる実施機関があったことから、厚生年金勘定に納付される拠出金の按分方法に激変緩和措置が設けられた。令和9年度には全実施機関の保険料率が18.3%に統一されるため、令和8年度からこの激変緩和措置を終了することが示された。

これら2つの案について委員からの異論はなく、厚労省は改正に向けた作業を進める方針だ。


社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。