日医調査、宿日直医師の応援なければ9割の産科有床診に影響(2月2日)
日本医師会の松本吉郎常任理事は2月2日の会見で、「産科医療機関における宿日直許可に関する調査(産科有床診療所)」の結果を発表した。
2024年度から導入される医師の時間外労働の上限規制の影響によって、宿日直勤務の医師の応援を受けられなければ9割以上の産科有床診療所が診療に影響がでると回答している。
調査は昨年11月上旬から12月上旬に実施。全国の産科有床診療所(分娩取扱施設)1204施設を対象に実施し、401施設から回答を得た。なお、同時期に全国の大学病院と周産期母子医療センターを対象に同調査を実施しており、後日発表する予定。
調査結果をみると、約6割(56.8%)の施設が大学等の医師に宿日直勤務の応援を依頼し、年間分娩数の約7割(68.8%)が宿日直医師の応援を受けていることがわかった。
大学等の医師に宿日直勤務の応援を依頼している施設の常勤医師数は管理者も含めて平均2.2名。宿日直を依頼する回数は1か月平均で宿直9.0回、日直3.1回となっており、概ね3分の1を応援の医師に依頼している。
松本常任理事は「大学等からの医師の応援は、産科有床診療所の分娩件数を維持する上で重要な役割を果たしている」と指摘した。
応援を受けている施設に医師の労働時間の上限規制に伴って宿日直勤務を行う医師の応援が十分受けられなくなった場合の影響を聞いたところ、「診療体制に重大な支障が生じる」(49.1%)、「分娩制限までは至らないが管理者の業務負荷が増大する」(29.8%)、「分娩制限など診療体制を縮小せざるを得なくなる」(14.0%)と9割以上の施設で影響がでると答えている。
一方、宿日直の許可が得られてもよいと思う基準の回答をみると、宿日直の時間帯の分娩対応は月6~10件(週2件程度)が最も多く34.9%で、睡眠時間が6時間未満となる日数が月3~5回(週1回程度)であっても許容できると回答したのは36.9%だった。
現行の宿日直基準では、宿直は週1回、日直は月1回が限度とされているが、宿直または日直を行う者が不足で、勤務の労働密度が薄い場合は、限度を超えても許可が得られるとされている。
調査結果では、許可が得られてもよいと思う医師1人1か月当たりの宿日直回数は、宿直が6.1回、日直が3.7回となっている。
調査結果について松本常任理事は、「現行の基準と実態はあまり合っていないという現場の声を示している。産科医療機関の現状を考えると宿日直許可の基準は運用において見直しが必要だと考えている」と述べた。
その上で、①宿日直に分娩等の対応があっても月6~10件程度であれば許可を認める②宿直時に睡眠時間が連続6時間に満たない日があっても月3~5回程度は認める③宿直は週1回、日直は月1回の基準を緩和して宿直は月6回、日直は月4回程度まで認める④連続した宿直、日直を認める―の緩和策を提案した。
松本常任理事は、基準の見直しに時間がかかることや新型コロナウイルス感染症の対応で医療機関が疲弊していることを指摘し、「時間外労働の上限規制の罰則を数年程度、猶予することを考えてほしい」と要請した。