50年後の将来推計人口は8,700万人、出生率低下も年金財政への影響は限定的
厚生労働省は5月8日、社会保障審議会年金部会を開き、日本の将来推計人口(令和5年推計)の概要を報告した。国立社会保障・人口問題研究所が4月26日に公表したもので、それによると50年後(2070年)の日本の総人口は2020年(1億2,615万人)の約7割(8,700万人)まで減少すると推計されたことがわかった。一方、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は、2020年の約3割(28.6%)から、2070年に約4割(38.7%)まで上昇する見通し。
平成29年の前回推計と比べると、出生率はコロナ禍の影響もあって低下が見込まれるものの、平均寿命の延伸と外国人の入国超過増の影響により、人口減少の進行はわずかに緩和された。同省によると、出生率の低下は年金財政にマイナスの影響を与えるが、外国人の入国超過はプラスになり、また少子高齢化の動向は前回から大きく変わっていないことから、年金財政に対する将来推計人口自体の影響は限定的だとしている。
将来推計人口は、外国人を含む日本に3ヵ月以上常住する総人口を対象とする。人口変動の要因である出生、死亡、国際人口移動について仮定(出生と死亡は低位・中位・高位の3段階)を設け、令和2年(2020年)国勢調査による人口を出発点に2021年から2070年までの50年間の人口規模や構造の推移を推計した。通常は5年ごとに公表されているが、コロナ禍の影響で今般は取りまとめが1年遅れている。
出生率は1.36で推計
推計の前提となる出生、死亡、国際人口移動の水準(長期的投影水準)を見ると、合計特殊出生率(中位仮定)はコロナ禍以前から見られた出生率の低迷を反映し、前回推計の1.44から1.36に低下した。また、短期的にはコロナ感染期の婚姻数減少等の影響を踏まえ、2020年代の出生率を1.2台で推移すると仮定した。
死亡に関しては、平均寿命が2020年の男性81.58年、女性87.72年から、2070年は男性85.89年、女性91.94年(中位仮定)になると見込み、前回推計(男性84.95年、女性91.35年)からわずかに伸長した。
他方、国際人口移動は日本人の出国超過傾向が緩和。近年の外国人の入国超過数の平均値(年間16万人程度)が今後も継続するとして仮定を置いた。なお、前回推計では年間7万人程度の入国超過だった。
生産年齢人口は2070年に4,535万人まで減少
主な推計結果を見ていくと、生産年齢人口(15歳~64歳)と年少人口(0歳~14歳)は減少の一途で、生産年齢人口は2020年の7,509万人から2070年に4,535万人まで減少し、年少人口も同1,503万人から同797万人まで減少が見込まれる。一方で、65歳以上人口は2020年時点(3,603万人)から当面は上昇し、2043年に3,953万人でピークを迎える見通し。以降は減少に転じて2070年に3,367万人となるが、相対的に64歳以下の人口減少のほうが大きいことから、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は、前述のように2070年に約4割(38.7%)まで上昇する。
このほか、総人口に占める外国人の割合は、2020年の2.2%から2070年には10.8%まで上昇し、総人口の約1割を外国人が占める社会が想定されている。この日の年金部会では、現役世代として働く年齢の途中で来日する外国人の増加を踏まえた制度設計の検討を求める意見が出された。
参考:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ
▶日本の将来推計人口(令和5年推計)