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アジア健康長寿イノベーション賞(中村秀一)

霞が関と現場の間で

海外の受賞者も迎えて

2016年に日本政府はアジア健康構想を打ち出した。海外からの介護人材の受け入れに当たり、日本で介護に関するノウハウを身につけ、帰国した場合に自国の介護分野のリーダーとなるという好循環を目指すものだ。加えて、アジアに展開しようとする医療・介護事業者の後押しを行う。

この政府の構想の一環として、東アジア・アセアン経済センター(ERIA)と日本国際交流センターが2020年にアジア健康長寿イノベーション賞を創設した。健康長寿の達成、高齢者ケアの向上に関する革新的プログラム、サービス、製品、政策などの具体的な取組みをアジア各国から募集し、表彰するものだ。

先日、東京都内でアジア健康長寿イノベーション賞2022の授賞式が、初めて海外からの受賞者も招いて開催された。この賞は3年目であるが、これまではコロナ禍で海外からの受賞者は出席できなかったのだ。

今回は9カ国・地域からの応募があり、国際選考委員による審査の結果、「テクノロジー&イノベーション部門」「コミュニティ部門」「自立支援部門」の3分野において大賞3団体、準大賞4団体が決定した。

「QRコード爪シール」が大賞に

日本からは国内選考委員会において最優秀事例9件を選び、国際選考に送られた。そのうち、株式会社オレンジクロス(埼玉)の「認知症の高齢者を見守るQRコード爪シールシステム」が「テクノロジー&イノベーション部門」の大賞に選ばれた。

認知症高齢者の行方不明対策として、QRコードを印刷した小型の防水シールを高齢者の爪に貼るというものだ。それをスマートフォンで読み取ると指定した連絡先(自治体や介護施設など)が表示される。

2016年には地元・入間市が採用、他の自治体でも導入されており、海外からの問い合わせもあるという。同社の社長は、「普及するのは嬉しいが安くて利益が上がらないのが悩み」と語る。爪シール自体のコストは一人当たり月額約250円とのこと。

日本の経験を伝えよう

日本は高齢化において課題先進国だ。アジアはこれから急速に高齢化する。そのスピードは、日本の高齢化より速いと予測される。これまで日本が経験してきたことは、失敗の事例を含め、アジア諸国にとって貴重な参考となろう。

われわれ自身も、当時は高齢化率が日本より高かったヨーロッパ諸国、とりわけ北欧の取組みを大いに学びながら、日本の介護や福祉を組み立ててきたのだから。今度は日本がアジアの諸国の役に立つ番だ。授賞式に参加しながら、そのことを強く思った。

(本コラムは、社会保険旬報2022年12月1日号に掲載されました)


中村秀一(なかむら・しゅういち)
医療介護福祉政策研究フォーラム理事長
国際医療福祉大学大学院教授
1973年、厚生省(当時)入省。老人福祉課長、年金課長、保険局企画課長、大臣官房政策課長、厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政担当)、老健局長、社会・援護局長を経て、2008年から2010年まで社会保険診療報酬支払基金理事長。2010年10月から2014年2月まで内閣官房社会保障改革担当室長として「社会保障と税の一体改革」の事務局を務める。この間、1981年から84年まで在スウェーデン日本国大使館、1987年から89年まで北海道庁に勤務。著書は『平成の社会保障』(社会保険出版社)など。

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