#14|遺族年金制度の見直し
高橋 俊之(たかはし としゆき)/日本総合研究所特任研究員、元厚生労働省年金局長
1.遺族厚生年金の見直し案
(1)遺族厚生年金の男女差の現状
遺族年金の仕組みや課題については、支給要件に大きな男女差があり、その解消が必要です。男女差の現状について、連載第8回と同じ解説を、本稿の冒頭でも改めて触れておきます。
現行の遺族年金制度は、男性が主たる家計の担い手であった時代の古い給付設計のままとなっています。主たる生計維持者を夫と捉え、夫と死別した妻が就労し生計を立てることが困難であり、世帯の稼得能力が喪失した状態が将来にわたり続くことが見込まれるといった社会経済状況を背景に、制度設計がされました。
このため、現行制度では、図表1、図表2のとおり、20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金は、妻に対して期限の定めのない終身の給付が行われており、加えて、受給権取得当時の年齢が40歳以上65歳未満である場合は、中高齢寡婦加算(遺族基礎年金の4分の3に相当する額)も加算されます。
その後、平成16年の改正で、夫の死亡時に30歳未満で子を養育していない妻の遺族厚生年金については、5年の有期給付とされましたが、30歳以上の場合は、従来どおり無期給付です。
一方で、夫は就労して生計を立てることが可能であるという考えの下で、遺族厚生年金の受給権が生じるのは、55歳以上での死別に限定されており、その場合でも、60歳未満は支給停止される仕組みであり、制度上の大きな男女差が存在しています。
女性の就業が進み、共働き世帯の増加等の社会経済状況が変化する中で、制度上の男女差を解消していく観点を踏まえると、20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金制度を見直すことが重要です。
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