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令和6年財政検証のピアレビューに向け意見交換――第101回年金数理部会

厚生労働省の社会保障審議会年金数理部会(部会長=翁百合・(株)日本総合研究所理事長)は9月4日、令和6年財政検証結果について報告を受け、意見交換を行った。年金数理部会は、厚生年金保険や国民年金・基礎年金、共済年金といった各年金制度の毎年度の決算について審議し、公的年金財政状況報告を取りまとめる役割のほか、5年に一度実施される財政検証結果について推計の基礎データや推計手法、推計結果の分析のあり方、制度の安定性・公平性の観点などを分析・検証し、今後の財政検証への提言を行う「ピアレビュー」を実施する役割がある。

この日は、今年7月3日に示された令和6年財政検証結果について報告を受け、ピアレビューに向けた意見交換を行った。令和6年財政検証では、モデル年金の年金額や所得代替率の将来見通しに加え、各世代の65歳時点における老齢年金の平均額や分布の将来見通し(年金額の分布推計)を初めて作成した。

現行制度の推計結果では若年世代の平均年金額が増加

それによると、現行制度に基づく推計結果では、若年世代ほど労働参加の進展により厚生年金の被保険者期間が長くなり、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人の割合が増加。2024年に65歳の男性が約80%なのに対し、2024年に20歳の男性では約90%に、女性は約40%から70%台に上昇する推計となった。

また、労働参加の進展によって厚生年金の被保険者期間が長くなることと、実質賃金が上昇することにより、若年世代ほど平均年金額(男女計、実質)は増加し、低年金は減少する見通しとなった。特に、女性の平均年金額(実質)の伸びや低年金の減少は大きくなる推計だ。

オプション試算の推計結果では低年金減少に有効な見通しに

年金制度改正を行った場合の財政状況について試算する「オプション試算」の推計結果を見ると、被用者保険の適用拡大を行った場合、新たに厚生年金に適用となった被保険者本人の年金給付が増加し、基礎年金の水準が上昇することにより、マクロ経済スライド調整終了後の平均年金額の上昇や、低年金の減少に効果があるとの見通しとなった。

基礎年金の拠出期間を延長し、給付が増額した場合は、基礎年金の水準が上昇することにより、マクロ経済スライド調整終了後の平均年金額の上昇や、低年金の減少に効果があるとした。

基礎年金と報酬比例部分のマクロ経済スライドによる調整期間を一致させた場合は、基礎年金の水準が上昇することにより、マクロ経済スライド調整終了後の平均年金額の上昇や、低年金の減少に効果がある見通しとなった。

委員からはピアレビューの対象となる範囲の確認や、検討に必要な情報提供の要請などのほか、「就職氷河期世代は一つ前の世代よりも人数が多く、男性の未婚率が3割近いことから、夫婦という想定で前の世代と同じようなイメージで考えてはいけない。年金だけではなく、人口のインパクトや婚姻状態を踏まえてマクロ経済スライドによる基礎年金部分の給付水準低下をどこで終了させるのか考える必要がある」といった指摘があった。

今後は、この日の意見を踏まえて令和6年財政検証についてどのような視点から検討を進めていくのか、また各制度からどのような情報を提供してもらうのかといったことを検討し、厚生年金保険、国民年金、共済年金の各年金制度からヒアリングを実施する予定だ。


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