医師の働き方改革の新制度施行「先延ばしの議論は慎重に」(2月17日)
日本医師会の松本吉郎常任理事は2月17日の会見で、医師の働き方改革について見解を示した。2024年度から新制度がスタートすることに対し、「新型コロナが収束してから取り組みを進めるべきとの声が多く聞かれ、この懸念はもっともだと思う。罰則のある働き方改革を地域医療にひずみを生じることだけは絶対に避けなくてはならないと考えている」と述べる一方、「コロナ禍の今だからこそ、働き方改革を進めてほしいという声もある」と指摘した。
その上で、「施行まであと3年の現時点で、コロナ禍という理由だけで先延ばしすることを、現場で働く勤務医や医療従事者が果たして納得されるのか、医療機関の関係者には考えていただく必要がある。勤務医の長時間労働の問題は医療界の積年の課題であり、日医は10年以上前から勤務医の健康支援に取り組んできた。新制度施行の先延ばしについては、新型コロナウイルス感染症の影響を注視しつつ、慎重な議論が重要と考えている」と述べた。
国会提出中の医療法等改正案については、「地域医療を守っていくために取り組まねばならない基本的事項を医療法で規定したという点を医療機関の関係者には再認識してもらう必要がある。2024年度に向けては労働時間の把握などの基本的事項を行い、少しずつでも改善を進めてほしい」と呼び掛けた。
コロナ禍での医師の働き方については、災害など避けることのできない理由による労働時間延長や休日出勤などを認める労働基準法第33条第1項に該当することを説明し、「労働法制で一定程度柔軟に対処できる部分があるといえる。しかし、厳しい医療環境であるからこそ、疲労の蓄積などを考慮して適切な措置を講じる必要もある」と述べた。
宿日直の許可については、「全国の統一基準をつくるべきとの意見もあるが、同一診療科でも医療機関や地域によってさまざまだ。統一基準をつくったとしても現実的な内容になるのか疑問で、むしろ複雑で厳格な制度になる可能性すらある」と述べた。一方、「必要書類の統一は必要であり、厚労省に速やかな対応を申し入れている」とした。
その上で、医療機関に対し、「どの診療科のどの時間帯で許可がとれるのかなど体制の工夫を積極的に検討し、宿日直許可をできるかぎり取得してほしい」と述べ、各医会や社会保険労務士会などと連携して許可取得の推進と事例収集を進めるていることを示した。
大学病院での医師の働き方改革については、「まだまだ制度への理解が浸透していない状態なのではないか」と述べた。その上で、大学病院に求める医師の時間外労働規制の特例水準として、「医師派遣機能を担う大学病院は、地域医療を守るためにもB水準か連携B水準を申請するのが望ましい。併せて、医療水準の維持向上のためにc-1とc-2も申請してほしい」と要請した。