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介護保険部会、高所得者の1号保険料負担についてなど論点を明確化 所得段階の多段階化を検討(11月28日)

社会保障審議会の介護保険部会は11月28日、「給付と負担について」2回目の議論を実施した。厚労省は、10月30日の議論を踏まえ、利用者負担割合の所得の判断基準の見直しや高所得者の1号保険料の保険料設定などに関する論点を明確化した。

論点は次の7つとなっている。

  1. 被保険者範囲・受給権者範囲

  2. 補足給付

  3. 多床室の室料負担

  4. ケアマネジメントの給付

  5. 軽度者への生活援助サービス等の給付

  6. 「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準

  7. 高所得者の1号保険料の負担

このうち、「1.被保険者範囲・受給権者範囲」については、介護保険を取り巻く状況の変化を踏まえつつ、また、「2.補足給付」に関しても、給付の実態やマイナンバー制度を取り巻く状況を踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当とした。

また、「6.「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準」については踏まえるべき要素として、高齢者の負担に十分配慮し必要なサービスの提供を受けられることなどを追加し検討を行うこととし、1号被保険者の所得分布などの資料を提示した。

さらに「7.高所得者の1号保険料の負担」では、介護保険制度の持続可能性の確保のため、低所得者の保険料上昇を抑制する必要があることを明記。各保険者の半数以上が国の基準以上の多段階化を実施している現状を示し、国の定める標準段階の多段階化(高所得者の標準乗率引き上げと低所得者の引き下げ等)を検討することとした。この論点においては、概ね異論は生じなかった。

老健・介護医療院における多床室の室料負担を議論

厚労省の論点では、「4.ケアマネジメントの給付」および「5.軽度者への生活援助サービス等の給付」については前回同様のものとして据え置かれた。

一方、老健施設や介護医療院に関する「3.多床室の室料負担」については、「どのように考えるか」との内容から、「検討を行うこととしてはどうか」と見直された。

これに対し全老健の東委員は、「老健施設は在宅支援・在宅復帰を目的とした場であり、入所中も自宅を維持している場合がほとんどであり、ホテルコストを支払って入所しているため、二重の負担を求めることはできない」と強調。

日慢協の橋本委員も、特に自宅を持つ地方の方にとっては部屋代を払って暮らすという感覚がないという点に言及。部屋代を払えないことで、介護を受けられない状況となり得る点を危惧した。

さらに日医の江澤委員も、これらの施設が住まいとは異なる医療提供施設であることを強調。運営母体のほとんどが医療法人であり、社会福祉法人のような利用者負担の減免もないことから、「安易に行うべきではなく慎重な姿勢が求められる」とした。

一方、健保連の河本委員は、現役世代の負担は限界にきており今後さらに急減することを前提とし「給付と負担の議論を先送りにすることは許されない」とし、在宅と施設・施設間の公平性の観点から、負担能力のある人には一定程度負担する事が必要とした。

また、早稲田大学の野口部会長代理は、10年単位で見た場合介護を含めた社会保障制度全体が危機的状況であるとの見方を示し、「本当に支払えない人に対するセーフティネットをしっかりと確保した上で、支払う能力のある人は支払うべしという厳しい認識の元に立つべし」と発言。本来は施設の種類、種別および多床室・個室の違いにかかわらず、原則的に利用者負担は求められるべきとの考えを示した。同様の観点から「4.ケアマネジメントの給付」に関しても、今回の見直しで変更するのは難しいとの認識を示しつつ、制度を維持するために払えるべき人は払うという認識を持つことの重要性を強調した。

部会の取り纏めでグランドデザインの必要性に言及か

日看協の齋藤委員は、「5.軽度者への生活援助サービス等の給付」について、現行の事業評価を行った上で検討するべきであり、どのように評価するかについては、調査研究を行ってはどうかと言及した。また、2号被保険者が激減していく現在の財源構成から考えると、負担をどうするかは避けて通れない議論であるとしつつも、今回の見直しでそれが可能であるかというと難しいとの認識を示した。そのため、今後の介護保険のあり方がどうあるべきなのかという、長期的なグランドデザインについて議論する重要性を訴えた。

こうした発言などを受け、早稲田大学の菊池部会長も、介護保険制度のあり方というものを中長期的にどう見据えていくのかは避けては通れないと発言。冒頭で論定整理案が報告された「全世代型社会保障構築会議」の議論に触れつつ、介護保険部会においても取り纏めに向けて、個別の議論に関わらない中長期的なグランドデザインの必要性について盛り込んではどうかと提案した。


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