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カスタマーハラスメント防止へ―東京都と国が法制化の動き

東京都がカスタマーハラスメント防止条例の意見募集を開始

東京都は7月19日、「東京都カスタマーハラスメント防止条例(仮称)の基本的な考え方」の意見募集を開始した。顧客等からの著しい迷惑行為を指すカスタマーハラスメントを防止する条例制定は、全国初の試み。

条例では、「何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない」と禁止規定を定めるとともに、顧客等と就業者とが対等の立場に立って相互に尊重し、社会全体でカスタマーハラスメントの防止を図るなどとする基本理念のもと、東京都、顧客等、就業者および事業者の責務を規定する。さらに指針を定め、都が実施する施策を推進し、事業者による措置の実施を促すのが柱。条例違反に対する罰則は設けず、事業者に求める措置等も努力義務とする。施行時期は未定だ。

カスタマーハラスメントの禁止規定については、社会全体に「やってはならない」という認識を浸透させるのが目的。だが一方で、正当なクレームは、業務改善やサービス向上につながりうるものであり、消費者基本法、消費者教育推進法、障害者差別解消法、表現の自由など、顧客等の権利を不当に侵害しないように留意も求めるとした。

事業者が努めなければならない責務は次の3つ。カスタマーハラスメントの防止に主体的かつ積極的に取り組むとともに、都が実施する施策に協力する。従業員(就業者)がカスタマーハラスメントを受けた場合は、就業者の安全を確保するとともに、顧客等に対し、行為の中止の申し入れなどの措置を実施する。逆に、従業員(就業者)が顧客等として取引先の就業者等にカスタマーハラスメントを行わないよう、必要な措置を講ずる。

こうした事業者に求める措置の具体的な中身は、今後、都が作成する指針で明らかにする。事業者には、指針に基づく必要な体制の整備、カスタマーハラスメントを受けた者への配慮、カスタマーハラスメント防止のための手引(マニュアル)の作成とその遵守に努めるよう求めるとした。

事業主に対応の義務化を提言―厚労省検討会報告書素案

一方、国においても、カスタマーハラスメントの対策強化に向けて、厚生労働省の検討会(雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会)が7月19日、カスタマーハラスメントへの対策強化を提言した報告書素案を大筋で了承した。報告書素案は、労働者保護の観点から、事業主に雇用管理上の措置義務を課して対応を求めることが適当だとしている。

法制化にあたって必要となるカスタマーハラスメントの定義については、
①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと
②社会通念上相当な範囲を超えた言動であること
③労働者の就業環境が害されること
以上の3要素のすべてを満たすものと整理。
消費者法制により定められている消費者の権利等を阻害せず、業種・業態等による法規制や商慣行の違いなどにも留意するとされた。

事業主の措置義務の具体的な内容に関しては、セクシュアルハラスメントに係る措置義務が参考になりうると指摘。また、指針を定めてカスタマーハラスメントと考えられる具体例などを例示する方針も確認された。
同省は今夏に報告書をまとめ、労働政策審議会に報告する。


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