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新しい年金時代

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#事例でみる障害年金請求の勘所

#37|初診日特定が難しい傷病による障害年金請求 その3(慢性疲労症候群)

 心身が疲労をすると、身体の免疫力が下がり疾病に罹患することはありますが、疲労そのものが疾病であるというのが慢性疲労症候群です。外傷があるわけでもなく、異常値が検出されているわけでもないこの疾病は、周囲からは詐病ではないかと思われ、理解されにくいものでしたが、1988年にCDC(アメリカ疾病予防管理センター)により概念化された比較的新しい疾病です。  疾病名の通り、主要な症状は「疲労」です。ただし、明らかに原因が分かっている疲労(例えば激しい運動をした等)は、当該疾病の「

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#36|初診日特定が難しい傷病による障害年金請求 その2(脳脊髄液減少症)

 脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄のまわりを流れる液が、何らかの理由で漏れ出してしまう疾患です。この液が減少すると脳の機能が低下し、身体に様々な支障が出現します。  脳脊髄液が漏れ出す主な原因としては、外部から身体への強い衝撃が加わることです。それゆえ、交通事故やスポーツ外傷が原因になることが多いようです(まれに突発性など、身体に強い衝撃が加わらなくても引き起こされることもあります。)。  症状としては、起立性頭痛が出現するのが特徴ですが、その他にも吐き気、視力聴力の低下、

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#35|初診日特定が難しい傷病による障害年金請求 その1(線維筋痛症)

 障害年金における障害等級や傷病間の相当因果関係は、障害年金の認定医や診査担当が認定することであり、請求時点で断定できるものではありません。しかし、初診日の特定や必要書類の整備等を実施する際には、ある程度、相当因果関係の有無を予測して進める必要があります。  従って、前に罹患している疾病(または負傷)があれば、現在の障害と相当因果関係があるかの確認が重要であることは以前からも述べているところですが、中にはその予測が非常に困難である時もあります。予測が困難ですと、当然のこと

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#34|てんかん発作による外傷での障害年金請求

 脳疾患による肢体障害は、救急搬送された日が初診日となることが多いので、他の障害に比べて、初診日の特定がしやすい障害年金の請求と言えるでしょう。  しかし、脳疾患の原因が、他の疾病が原因であることが明らかな場合は、この限りではありません。例えば、心原性脳梗塞は、心臓にあった血栓が脳に飛ぶことによって引き起こされますので、心疾患と脳梗塞に相当因果関係が認められる場合もあります。また、低酸素脳症は、循環不全や呼吸不全などが原因となり引き起こされますから、相当因果関係が認められ

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#33|がんによる精神障害

 障害年金請求における初診日の考え方は、異なる傷病名であっても、その傷病間に相当因果関係があれば一括りの傷病として取り扱い、その括りの中で初めて医療機関を受診した日を初診日とします。これは、以前からも述べているところです。  傷病間の相当因果関係は、医学的な知識も必要なことから、なかなか判定が難しいところですが、主に、障害となっている部位に大きなダメージを与えた傷病は、その障害と相当因果関係があると言えるでしょう。  では、精神の障害の場合はどうでしょうか。感情を司る脳

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#32|特別障害給付金

 現在、日本に住所を有する20歳以上60歳未満の者で、かつ、厚生年金に加入していなければ、原則、国民年金に加入しなければなりません。加入するかしないかを任意で選ぶことができる人は、日本国籍を有しながら海外に居住している人、または、60歳以上65歳未満で厚生年金に加入していない人に限られます。  しかし、一昔前は、国民年金の加入を任意で選ぶことができる人がもっと多くいました。  例えば、昭和61年3月以前は、配偶者が厚生年金等の被用者年金に加入していれば、国民年金の加入は

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#31|社会的治癒を主張した障害年金請求

 現在罹患している傷病が回復しても、将来再発してしまうことがあります。この場合、前発の傷病が「治癒」していた場合は、後発の傷病により初めて医療機関を受診した日が障害年金における初診日となりますが、治癒していない再発の場合は、前発の傷病により初めて医療機関を受診した日が初診日となります。  この「治癒」というのは、病気や怪我が治り治療行為が必要ではなくなった状態のことを言います。例えば、風邪で高熱を出していたものが、薬を飲まなくても平熱でいられるようになったら、これ以上の治

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#30|長期間差止めになっている障害年金受給者

 障害年金の受給者は、数年に一度、その障害状態を診査するために「障害状態確認届(診断書)」を提出する必要があります(ただし、手や足の切断など、症状が永久固定を認定された場合はこの限りではありません。)。  この「障害状態確認届(診断書)」は、提出指定日とされた日から3カ月程度前に日本年金機構から受給者宛に送付されます。受給者は、送付された診断書に提出指定日前3カ月以内の現症を医師に記載してもらい、日本年金機構に提出しなければなりません。提出指定日までに提出がなかった場合は

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#29|障害年金受給者の額改定請求(その2)

 傷病を患ったことにより障害状態になった直後、その傷病が原因で合併症等を引き起こし、それによって新たな障害がもうひとつ増えるというように、短い時間の中で複数の障害状態になることもあります。  通常ですと、障害年金は障害認定日(原則、初診日から1年6カ月経過した日)に障害状態を診査することとなりますので、複数の障害が短時間差で発生した場合でも、障害認定日請求をすれば、それらをまとめて診査することとなりますので、特に問題はありません。  しかし、仮に、そのひとつひとつの障害が

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#28|障害年金受給者の額改定請求(その1)

 障害年金受給者の障害の程度が増進した場合は、障害等級が上位になり年金額が改定されることもあります。その契機となるのは、次の2つです。  以上のような契機で障害等級を改定しますが、頻繁に障害等級の改定を望まれても事務が煩雑になるだけで好ましくはありません。従って、障害等級の改定にはある一定のルールを設けています。  そのルールを解説しながら、今回は、既に障害年金を受給している人が、障害の程度が増進したと思われるので上位等級に改定して欲しいという事例を検証していきます。

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#27|障害者特例の請求

年金時代編集部  障害になった場合の社会保障は障害年金がメインとなりますが、前回の事例でも取り上げた「障害者特例」も、重要な役割を担います。  おさらいがてら、障害者特例について、確認しておきますと、  以上の条件を満たせば、本来なら報酬比例部分しか支給されない特老厚に、定額部分(生計維持関係にある配偶者や子がいれば、加給年金も同時に)が支給される制度です。  障害等級が3級で認定された場合は、定額部分や加給年金が加算される障害者特例のほうが有利になることも多いので、

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#26|てんかんによる障害年金請求

年金時代編集部  精神の障害は、「心の病」または「心の障害」と捉える人も多いかと思われますが、障害年金の請求においては、「脳の病」と捉えます。脳の機能に何らかの問題が発生したことにより、気持ちが不安定になったり、うまく人と付き合いができなくなったり、または幻想が見えたりします。これが、うつ病等のいわゆる「心の病」と言われます。  障害年金における精神の障害は、もちろん上記のような「心の病」も取扱いますが、それ以外に記憶障害やてんかんといった「心」とは少々異なる症状も取り扱

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#25|60歳以降に初診日がある時の納付要件判定

年金時代編集部  国民年金の納付義務は60歳までのため、60歳以降に初診日がある傷病により障害年金を請求する際は、通常とは異なる点がいくつかあります。  前号で解説したのは、まず、60歳から65歳までの厚生年金に加入していない期間(要するに未加入期間)に初診日があった場合は、障害基礎年金の請求となります。初診日において、日本国内に住所があるということも気を付ける点です。  次に、直近1年間に未納がないという納付要件において、その対象となる1年間は、初診日から遡った直近の

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#24 国民年金未加入時の初診日による障害年金請求

年金時代編集部  障害年金は、原則、初診日において年金制度に加入しており、また、納付要件を満たしていないと請求できません。  しかし、20歳前と60歳以降は国民年金の加入義務がないことから、厚生年金の適用を受けない限り、また、60歳以降あえて国民年金の任意加入をしない限り、年金未加入期間となります。  このような未加入期間に初診日がある傷病の障害年金請求は、次のようになります。  このように、①か②に該当すれば、障害基礎年金の請求は可能となります。①の20歳前であれば、納

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