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新しい年金時代

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#事例でみる障害年金請求の勘所

#31|社会的治癒を主張した障害年金請求

 現在罹患している傷病が回復しても、将来再発してしまうことがあります。この場合、前発の傷病が「治癒」していた場合は、後発の傷病により初めて医療機関を受診した日が障害年金における初診日となりますが、治癒していない再発の場合は、前発の傷病により初めて医療機関を受診した日が初診日となります。  この「治癒」というのは、病気や怪我が治り治療行為が必要ではなくなった状態のことを言います。例えば、風邪で高熱を出していたものが、薬を飲まなくても平熱でいられるようになったら、これ以上の治

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#30|長期間差止めになっている障害年金受給者

 障害年金の受給者は、数年に一度、その障害状態を診査するために「障害状態確認届(診断書)」を提出する必要があります(ただし、手や足の切断など、症状が永久固定を認定された場合はこの限りではありません。)。  この「障害状態確認届(診断書)」は、提出指定日とされた日から3カ月程度前に日本年金機構から受給者宛に送付されます。受給者は、送付された診断書に提出指定日前3カ月以内の現症を医師に記載してもらい、日本年金機構に提出しなければなりません。提出指定日までに提出がなかった場合は

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#29|障害年金受給者の額改定請求(その2)

 傷病を患ったことにより障害状態になった直後、その傷病が原因で合併症等を引き起こし、それによって新たな障害がもうひとつ増えるというように、短い時間の中で複数の障害状態になることもあります。  通常ですと、障害年金は障害認定日(原則、初診日から1年6カ月経過した日)に障害状態を診査することとなりますので、複数の障害が短時間差で発生した場合でも、障害認定日請求をすれば、それらをまとめて診査することとなりますので、特に問題はありません。  しかし、仮に、そのひとつひとつの障害が

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#28|障害年金受給者の額改定請求(その1)

 障害年金受給者の障害の程度が増進した場合は、障害等級が上位になり年金額が改定されることもあります。その契機となるのは、次の2つです。  以上のような契機で障害等級を改定しますが、頻繁に障害等級の改定を望まれても事務が煩雑になるだけで好ましくはありません。従って、障害等級の改定にはある一定のルールを設けています。  そのルールを解説しながら、今回は、既に障害年金を受給している人が、障害の程度が増進したと思われるので上位等級に改定して欲しいという事例を検証していきます。

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#27|障害者特例の請求

年金時代編集部  障害になった場合の社会保障は障害年金がメインとなりますが、前回の事例でも取り上げた「障害者特例」も、重要な役割を担います。  おさらいがてら、障害者特例について、確認しておきますと、  以上の条件を満たせば、本来なら報酬比例部分しか支給されない特老厚に、定額部分(生計維持関係にある配偶者や子がいれば、加給年金も同時に)が支給される制度です。  障害等級が3級で認定された場合は、定額部分や加給年金が加算される障害者特例のほうが有利になることも多いので、

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#26|てんかんによる障害年金請求

年金時代編集部  精神の障害は、「心の病」または「心の障害」と捉える人も多いかと思われますが、障害年金の請求においては、「脳の病」と捉えます。脳の機能に何らかの問題が発生したことにより、気持ちが不安定になったり、うまく人と付き合いができなくなったり、または幻想が見えたりします。これが、うつ病等のいわゆる「心の病」と言われます。  障害年金における精神の障害は、もちろん上記のような「心の病」も取扱いますが、それ以外に記憶障害やてんかんといった「心」とは少々異なる症状も取り扱

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#25|60歳以降に初診日がある時の納付要件判定

年金時代編集部  国民年金の納付義務は60歳までのため、60歳以降に初診日がある傷病により障害年金を請求する際は、通常とは異なる点がいくつかあります。  前号で解説したのは、まず、60歳から65歳までの厚生年金に加入していない期間(要するに未加入期間)に初診日があった場合は、障害基礎年金の請求となります。初診日において、日本国内に住所があるということも気を付ける点です。  次に、直近1年間に未納がないという納付要件において、その対象となる1年間は、初診日から遡った直近の

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#24 国民年金未加入時の初診日による障害年金請求

年金時代編集部  障害年金は、原則、初診日において年金制度に加入しており、また、納付要件を満たしていないと請求できません。  しかし、20歳前と60歳以降は国民年金の加入義務がないことから、厚生年金の適用を受けない限り、また、60歳以降あえて国民年金の任意加入をしない限り、年金未加入期間となります。  このような未加入期間に初診日がある傷病の障害年金請求は、次のようになります。  このように、①か②に該当すれば、障害基礎年金の請求は可能となります。①の20歳前であれば、納

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#23 がんによる障害年金請求

 がんは、さまざまな部位に発症し、身体及び生命に重篤な症状をもたらす可能性がある非常に危険な疾患です。  しかし、障害年金請求においては、重篤な症状になる「可能性」があるというだけでは請求できません。がんによって、実際に身体のどこの部位が機能しなくなっているのかが重要になります。  従って、仮に余命宣告をされていたとしても、まだ具体的に身体の機能的な障害が出現していない場合は、障害年金を請求しても不支給になる可能性が高いのです。  こうしたことから、がんによる障害年金請求は

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#22 肺の傷病による障害年金請求

 肺の傷病による障害年金は、主に「肺結核」、「じん肺」、そしてそれ以外の傷病による「呼吸不全」という区分に分かれます。  「肺結核」及び「じん肺」は、機能判定の他に病床判定(胸部X線所見による判定)により障害等級を審査しますが、「呼吸不全」は主に機能判定によって審査します。  この機能判定とは、動脈血ガスや肺活量等の検査結果に基づいた数値により判定をするということですが、実際のところ、障害等級に該当する程度の悪い数値ですと、重篤な呼吸不全状態ですので「在宅酸素療法」を実施して

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#21 障害年金受給者の併合

 別の原因で2つの障害が発生した場合、それぞれの障害を個別に認定した上で障害等級を決める「併合認定」が実施されることは、本連載#8「初めて1・2級に該当した場合の障害年金請求」で解説したところですが、この事例はいわゆる「初2請求」と呼ばれ、複数の障害を併せて「初めて」2級以上に該当することを要件とする請求方法でした。従って、最初の障害(以下「前発障害」という。)の程度は、障害等級3級以下でなければなりません。  しかし、既に障害等級2級以上の障害年金を受給している人に、新たに

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#20 アルコール依存症による障害年金請求

 国民年金法第69条及び厚生年金保険法第73条には、「故意に障害又はその直接の原因となつた事故を生じさせた者の当該障害については、これを支給事由とする障害基礎(または厚生)年金は、支給しない。」とあります。  また、国民年金法第70条及び厚生年金保険法第73条の2には、「被保険者又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生ぜしめ、若しくは

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#19 脳梗塞に似た症状の別傷病での請求

 前回に引き続き、今回も難病による傷病での請求です。難病は、症状が出てもすぐにその病名が分からないことがほとんどです。従って、現在と初診の傷病名が異なることも少なくありません。  しかし、傷病名が異なるということは、その傷病の原因が異なることもあります。もし、そうなれば、当初想定していた傷病間の相当因果関係も異なり初診日の特定に影響を及ぼすこととなります。  今回の事例は、傷病の原因が変わったことにより、初診日も異なってしまった事例を検証します。 1.相談者の夫(来訪者)の

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事例でみる障害年金請求の勘所|#18 心疾患の障害等級認定について

 障害等級の認定は、提出した診断書の審査を経ないとわからないものですが、人工透析(2級以上)や人工関節挿入(3級以上)等の場合は、審査を経ないでもある程度の障害等級がわかります。  特に、心疾患は事前に障害等級がわかる事例が多いのが特徴です。  これらに該当した場合は、初診日から1年6カ月を経過しなくとも、障害認定日をむかえるため、注意が必要となります。  しかし、図1の該当事例を見ても分かる通り、馴染みのない医療用語が多く、何をどのように処置したか、相談者が正確に説明でき

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