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年金時代(無料版)

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2023年11月の記事一覧

モデル年金の示し方に共働き世帯や単身世帯を追加する方向性を検討――第9回年金部会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)は11月21日、マクロ経済スライドによる調整期間の一致や年金給付水準の示し方について議論した。 賃金や物価によって年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドは、デフレ経済による賃金や物価の伸びの低迷などによって調整期間が長期化し、2019年財政検証における追加試算によると、現行制度のままだと基礎年金は2046年、厚生年金(報酬比例部分)は2025年に調整期間が終了する見通しとなっている。基

雇用保険の適用拡大を労政審がおおむね了承―今後は適用基準とされる週所定労働時間が論点

厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会は11月22日、これまで適用対象とされていなかった週所定労働時間20時間未満の労働者に対し、雇用保険の適用を拡大する方針をおおむね了承した。 週10時間以上までの適用拡大で最大500万人が新規適用 今後は、適用基準とする週所定労働時間をどこまで引き下げるかが論点だ。 週20時間未満で就労する労働者は直近(2022年)で約718万人いるが、週10時間以上まで適用拡大した場合は最大で約500万人、週15時間以上まで適用拡大し

#45|年収の壁、突破への道筋は会社主導で

年末の足音が近付いてきた今日この頃、カフェでアルバイトしている大学生の娘に、夫が「今年は年収どれくらい? 扶養の範囲超えていないよね」と確認しています。大学生は勉強するのが本業ですから、親としては扶養の範囲内でアルバイトするのが当然とも考えます。では、企業で働くパートタイマー等はどうでしょうか。 最近、「106万円の壁」「130万円の壁」という言葉を、頻繁に新聞やテレビのニュースでも耳にするようになりました。これは、岸田内閣が「年収の壁」対策を打ち出し、扶養を意識して働く

「年収の壁」の当面の対応策とされる「社会保険適用促進手当」とは―厚生労働省Q&A公表

厚生労働省は10月20日、標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮されない「社会保険適用促進手当」のQ&Aを公表した。 厚生労働省10月20日公表、社会保険適用促進手当に関するQ&A 社会保険適用促進手当は、短時間労働者が社会保険に適用され、新たに保険料負担が発生することに伴う手取り収入の減少を敬遠し、就業調整を行うといったいわゆる「年収の壁」を打破するため、政府が実施した当面の対応策の1つで、本人の保険料負担分を上限に保険料算定から除外される手当として事業主が支給できる。最

第43回日本年金学会総会・研究発表会が開催される

変化していく環境に対する発信が年金学会の使命 日本年金学会代表幹事の玉木伸介氏(大妻女子大学短期大学部 教授)は、冒頭のあいさつで「いま年金の世界では、財政検証に向けた議論が進行中であり、年金学会および研究発表会を行うには大変適したタイミングだと思っている。今の議論の環境を見て一つ望ましいことは、臨時国会や通常国会が年金国会になるという話は全くないこと。このように落ち着いた環境の中で、冷静で合理的な議論が行われるということは大変喜ばしいことではないかと思われる」と述べた。

第43回日本年金学会総会・研究発表会 基調講演「公的年金制度と労働供給」 講演要旨

公的年金制度と労働供給清家 篤 氏 日本赤十字社 社長 / 慶應義塾 学事顧問 労働力人口の減少が公的年金制度の課題 年金制度については、大問題をかかえ、この問題解決しないと日本の社会保障は、どうにもならないという状況はすでに脱し、今はそういう状況ではない。年金は、医療や介護に比べてそれほど給付は増えないことが、年金の問題が大きく意識されていないことの一つ目の理由だ。二つ目の理由としては、年金は基本的には保険料や税金で財源を得て、そして、年金給付というお金で給付を行うとい

第43回日本年金学会総会・研究発表会 特別講演「これから5年で確実に起こる雇用シフト」講演要旨・シンポジウム 討議要旨

特別講演「これから5年で確実に起こる雇用シフト~年金財政には吉と出る~」海老原 嗣生 氏 大正大学 特命教授 人手不足は非正規人材において顕著 人手不足と言われる中、大卒者はこの30年で1.6倍に増加した。大卒ホワイトカラーの人手不足は景況によるもので、不況になれば少子化社会でも大卒は余る。一方、高卒者はこの30年で5分の1まで激減し、構造的な人手不足。販売サービスや製造業の現業職はとてつもなく採用困難になっていく。 この25年で生産年齢人口(15~64歳)は激減したが

国の年金の支給開始年齢と繰上げ・繰下げ受給【試し読み公開中】

『今日から始める!ライフプラン』(社会保険研究所刊/A4判・本文80頁)はライフプラン作りのノウハウが詰まったテキストとして、また退職準備に必須の年金や雇用保険、健康保険等社会保険の給付・手続きがわかる手引書として、セミナーを主催する公的機関や企業の担当者、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの皆さまにご採用いただき、ライフプランの最初の一歩を踏み出す皆さまにご好評をいただいています。 感謝をこめて、『今日から始める!ライフプラン』令和5年度版から、「国の年金の支給開始

適用拡大の広報に必要な情報収集について議論――第2回適用拡大広報アドバイザー会議

厚生労働省の被用者保険の適用拡大に関する効果的な広報のためのアドバイザー会議(座長=上田憲一郎・帝京大学経済学部経営学科教授)は11月15日、被用者保険の適用拡大に関する広報コンテンツを作成するうえで必要となる基礎資料などについて検討を行った。 適用拡大の広報資料に関する調査業務を受託している事業者は、広報コンテンツが①事業主が企業で社会保険の適用を進めようと意思決定するとき②事業主が従業員と社会保険の加入について相談するとき③従業員が家族と働き方の変更について相談するとき

単身未婚高齢者の増加を見据えた年金政策などを提言――第97回年金数理部会

厚生労働省の社会保障審議会年金数理部会(部会長=翁百合・日本総合研究所理事長)は11月13日、将来推計人口について慶應義塾大学経済学部教授の石井太氏による基調講演や意見交換をオンラインセミナー形式で開催した。 石井氏は、公的年金の財政検証に使用される「日本の将来推計人口(令和5年推計)」について解説。21世紀はわが国がこれまで歴史上経験したことのない人口減少社会になっていることや、0~14歳の年少人口や15~64歳の生産年齢人口が減少する一方で、65歳以上の老年人口が増加す

期間収益率は-0.31%ーーGPIF2023年度第2四半期運用状況

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は11月2日、2023年度第2四半期(7月~9月)の運用状況を公表した。期間収益率は-0.31%となり、期間収益額は-6,832億円(うち、利子・配当収入は8,078億円)となった。GPIFの宮園雅敬理事長は、2023年度第2四半期の市場環境について物価上昇率の高止まりを背景に、欧米が利上げを継続し、長期金利が上昇(債券価格は下落)したものの、欧米の長期金利の上昇幅に対して日本の長期金利の上昇幅は限定的で、国内外の長期金利差が拡大して

社会保障教育の教材等の改善に向け検討開始――社会保障教育の推進に関する検討会

厚生労働省の社会保障教育の推進に関する検討会(座長=小野太一・政策研究大学院大学教授)は11月1日、令和5年度の第1回会合を開いた。同検討会は、若い世代に社会保障の意義や仕組みを理解してもらうことを目的に、社会保障教育の在り方について検討を行い、平成26年に報告書を取りまとめ、テキストや映像教材、ワークシートを作成し全国の高等学校すべてに配布。平成27年度には社会保障教育セミナーを実施したほか、令和2~3年度にはモデル事業の開発や教員向け研修に取り組んできた。また、令和4年度

オンラインサービスやキャッシュレス決済など日本年金機構の取組みを報告

厚生労働省は11月1日、社会保障審議会年金事業管理部会を開催し、日本年金機構から平成31年4月から令和6年3月までの第3期中期計画の取り組み状況について報告を受けた。 日本年金機構は、業務運営の効率化に関してICT(情報通信技術)化の推進を掲げ、個人向けオンラインサービスとして、マイナポータルとねんきんネットの認証連携機能をスマホで簡易に連携できるよう改善(令和3年7月)したほか、国民年金保険料のキャッシュレス納付(令和5年2月)、ネットバンキング納付(令和6年1月予定)、