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介護改定6月施行は「訪問看護」等4サービス、審議報告とりまとめへ――第236回介護給付費分科会(2023年12月18日)

厚生労働省は12月18日、第236回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。

前回に引き続き、令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)について議論。案はおおむね了承され、今後厚生労働省のホームページに公表される見込みだ。

また、議論のなかで厚生労働省より施行時期に関する説明があり、「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「居宅療養管理指導」「通所リハビリテーション」は6月施行、その他のサービスは4月施行とする方針が示された。


審議報告を了承、老健局長「改定率を踏まえ反映」

今回の審議報告(案)は、前回第235回の内容に委員の意見を反映した上で、空欄だった「Ⅲ 今後の課題」を記載したもの。

参考:令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)〔12月18日資料〕

前回からの修正の多くは、内容の明確化を図るものとなっている。

介護保険施設・認知症対応型共同生活介護に新たに加算が創設される、認知症の行動・心理症状(BPSD)防止や早期対応に関する取り組みについては、次のような要件が示された。

  • BPSDの予防に資する認知症介護に係る専門的な研修等を修了している者を配置し、事業所内で予防に資するチームケアの指導を実施

  • 評価指標を用いてBPSDの評価を行い、予防に資するチームケアを提供

  • BPSDの予防に資するチームケアに関する計画を作成するとともに、チームケアについて計画的な評価・見直し、事例検討等を実施

また、一本化される介護報酬等処遇改善加算については、その賃金配分ルールについて、「引き続き介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能ある職員に重点的に配分することにしつつ」柔軟な配分を認める旨が明記された。

「Ⅲ 今後の課題」については、令和6年度介護報酬改定の対応と同様、4つの「基本的な視点」と「その他」に分けられ整理された。

今回見送られた新たな複合型サービスの創設などもあわせ、これまでの議論・改定を踏まえ引き続き検討を要する事項などが記載されている。

審議報告(案)に対しては多くの委員より、了承とあわせて事務局を慰労する声が相次いだ。

国立社会保障・人口問題研究所の田辺国昭分科会長は、事務局と必要な対応を行った後に審議報告として厚生労働省ホームページに掲載するとし、案を引き取った。

間隆一郎老健局長は委員に感謝を伝えるとともに、近日中に行われる大臣折衝により決まる改定率を踏まえ、審議報告の意図を十分に反映していく考えを示した。

今後従来通りの動きであれば、来年1月に具体的な運営基準や、単位数も記載された介護報酬改定内容に関する議論が行われ、諮問・答申が行われる流れが見込まれる。

「75歳現役社会」「外部の管理人材活用」これからを見据えた意見も

「Ⅲ 今後の課題」を示されたことも踏まえ、議論では各委員から「これから」を見据えた意見が相次いだ。

健康保険組合連合会の伊藤悦郎委員は、介護の必要性を十分に理解した上で、これまでと同様に拡充を続けていけば「いずれは制度自体が破綻してしまう」と危惧。

限られた財源のなかで、必要な介護サービスの効率的・効果的な提供に向け、適切かつ重点化に力点を置いた見直しを図っていく必要性を訴えた。

産業医科大学の松田晋哉委員も、今のレベルで支えるのは難しくなるとの認識を示し、「75歳現役社会」といった払う側を増やしていく必要性に言及。そうしたなかで、副業的なものとして地域住民の参加による介助などを例に挙げた。

そして、こうした参加の実現に向けては、制度の簡素化と国民の理解を高める必要性があると指摘した。

一方、日本慢性期医療協会の田中志子委員は新たな検討事項として、誤嚥・転倒・転落に関する国民・法曹界への周知が必要であると指摘した。

介護現場においてどれだけ気をつけていても起こるものであり、防ごうとすることで身体拘束などの要因になり得ることから、すべてをすぐに施設の責任することがないよう、老年症候群への理解を進めたいとする意向だ。

介護人材に関しては、民間介護事業推進委員会の稲葉雅之委員が「リーダー」について、有能な介護職者が「苦手な管理業務を担当している例もみられる」と指摘。

今後は集団の管理に長けたリーダーが配置されるルートとして、外から管理人材が入ってくるイメージを含めて考えていくことが、制度の持続安定のためにも有効であるとの考えを示した。

今回改定の6月施行は4サービス、将来的には6月改定も検討

議論のなかで、注目されていた介護報酬改定の施行時期について、厚生労働省から説明が行われる一幕があった。

介護現場での経営が厳しい現状にあることを訴え質問した、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員の問いかけに答えたものだ。

厚生労働省からは、特に医療機関と密接な関係のある「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「居宅療養管理指導」「通所リハビリテーション」の4サービスは6月施行、それ以外のサービスについては4月施行とする方針が示された。

これを受け日本医師会の江澤和彦委員は、同時改定となる診療報酬の改定時期が6月施行となることは、8月2日の中医協において承認されていたものだったと指摘。

年末時点まで決まらず、また議論を深める場もなく「自治体現場もみんなみんなが本当に困ってきた」として、事務局に対して猛省を促すとともに、プラス改定であれば増額分を支払われるべきとして、6月施行分のサービスについて34分の36を乗じた増額を求めた。

これに対し、間隆一郎老健局長は「お叱りは真摯に受け止めたい」とし、将来的には6月に改定することも検討していきたいとの考えを示した。

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