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看護職員の賃金改善は月11,388円――中医協分科会に「看護職員処遇改善評価料」の実績報告(2023年10月12日)

厚生労働省は10月12日の中医協・診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」に、令和4年10月に新設された看護職員処遇改善評価料の実績を報告した。一人当たり賃金改善目標額の月12,000円に対し、看護職員等への賃金改善の実績(事業主負担相当額を除く)は月額11,388円だった。

看護職員処遇改善評価料(評価料)は、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員等を対象に、令和4年10月以降の収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みとして創設された。

評価料の対象となる施設は、救急医療管理加算の届出および救急搬送件数が年間で200件以上であることなどを満たす医療機関で、対象となる「看護職員等」は、保健師・助産師・看護師・准看護師であり、評価料算定額に相当する賃金(基本給、手当、賞与等を含む)の改善を実施しなければならない。なお、賃金改善措置対象者については、医療機関の実情に応じて、看護補助者、理学療法士、作業療法士等のコメディカルも加えることができるが、「薬剤師」は対象外とされている。

また、毎年7月において、前年度における取組状況を評価するため、「賃金改善実績報告書」を作成し、地方厚生局長等に報告することとされている。

10月12日の中医協分科会には、評価料の実績報告の状況および概要が示された。

評価料の実績報告については、算定要件を満たす2,720施設中、2,553施設が提出した(評価料新設前の「看護職員等処遇改善事業補助金」申請を行っていた医療機関数は2,411施設)。
届出区分は、約8割が評価料31~70であったが、評価料101以上のところも31施設あった。

62%の病院が看護職員等「以外」の処遇改善を実施、賃金改善実績は月6,329円

事業主負担相当額(社会保険料相当の16.5%)を除く、「看護職員等」への賃金改善実績は11,388円/月だった。事業主負担相当額を含めると、同13,267円/月だった。
また、賃金改善額が12,000円/月未満だった医療機関のうち、8割以上は看護職員等「以外」の処遇改善を実施していた。

報告書提出施設の62%(1,581施設)は、評価料を用いて看護職員等「以外」の処遇改善を実施しており、事業主負担相当額を除く賃金改善実績は、6,329円/月であった。

評価料収入に加えて、病院の支出で処遇改善を行ったところも

評価料による収入に占める賃金改善実績額の割合が100%~105%未満の病院(おおむね評価料のみを用いて賃金改善を行った病院)は約6割だったが、評価料による収入より1割以上多く支出している医療機関も約2割あった。

届け出ない理由「継続される保証がなく基本給等の引上げを躊躇」が最多

評価料を届け出ていない施設で、施設基準は満たす施設における届け出ていない理由は、「看護職員処遇改善評価料が継続される保証がなく、基本給又は決まって毎月支払われる手当の引き上げを行うことを躊躇するため」が約4割で最多。次に「既に賃金引き上げを行っていたため」となっていた。

委員からは、評価料のように医療機関・職種を限定するというのではなく、全ての医療機関や医療職種が賃上げできるような財源確保をすることが必要であるといった声が多数あった。
ただし、山本修一委員(JCHO理事長)は、評価料の創設については、その前の補助金を含めコロナ対応の意味合いがあったと指摘し、全体の賃上げとは分けて考えるべきであると主張した。また、仮に評価料を続ける場合は、現在対象から除外されている薬剤師の運用を改めることも主張。除外された背景には薬剤師全体の給与が高いことが考慮されたようだが、「病院薬剤師」に限れば決して給与は高くはないと強調した。

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