見出し画像

【詳解】第170回社会保障審議会介護給付費分科会(4月10日)③

関連記事:【詳解】第170回社会保障審議会介護給付費分科会(4月10日)① 関連記事:【詳解】第170回社会保障審議会介護給付費分科会(4月10日)②

介護医療院の実態調査が公表される ACPは4割の施設で実施

社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は4月10日、平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査結果を了承した。

今回初めて「介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査」を実施した。介護医療院ではアドバンス・ケア・プランニング(ACP)に取り組む施設が4割を超えている。また介護療養型医療施設の5割が介護医療院への移行を考えていることも分かった。

ふさわしい利用者像から介護医療院を開設

「介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査」では、介護医療院以外に、介護療養型医療施設(介護療養病床)、医療療養病床、介護療養型老健施設(療養型老健)も対象とした(図表1)。

▲図表1 調査の目的・調査方法


調査は30年9月末時点での施設名簿に基づき、介護医療院は悉皆調査として63施設に実施し、回収は40施設(63.5%)。その他は、直近の地震等で被害を受けた被災地を除く悉皆調査であり、介護療養病床は898施設が対象で377施設から回収した(42.0%)。医療療養病床は3197施設が対象で961施設から回収(30.1%)。療養型老健は137施設が対象で46施設から回収した(34.3%)。

介護医療院ではACPに取り組むのが42.5%と最も高かった。ターミナルケアの取り組みは、施設要件となっている介護医療院では100%。他は、医療療養病床(基本料1・2、療養病棟入院基本料経過措置、特定入院基本料、診療所の合計)で74.3%、介護療養病床が77.7%となっている(図表2)。

▲図表2 ACP及びターミナルケアの実施状況


介護医療院の開設を決めた理由では、「介護医療院にふさわしい利用者が多いと考えられた」が最も多く、75.0%。次いで「病院からの退院先となる場合には自宅等として取り扱われることに魅力を感じた」が62.5%であった。

開設準備では「家具・パーティション等を購入」が60.0%など(図表3)。

▲図表3 介護医療院の開設を決めた理由、介護医療院開設にあたっての取組状況

生活施設としての取り組みで最も多かったのが、「利用者の状態や希望に合わせてベッドの高さを調整」であり85.0%。一方、「プライベートスペースにはなじみの家具などの持込を許可している」のは35.0%に止まり、生活の場としていくことに課題が伺えた(図表4)。

▲図表4 介護医療院の生活施設としての取り組み状況


介護療養病床の5割が介護医療院へ

介護療養病床など他の施設からの介護医療院への移行予定についてみる(いずれも病床数ないし定員数での構成比)。

介護療養病床(1万4891床)では2019年度末までの移行予定はⅠ型介護医療院・Ⅱ型介護医療院を合計すると、31.2%。介護療養病床の廃止期限となる2023年度末時点では52.7%に上るが、未定が32.2%と3割。また10.3%が介護療養病床のままとなっている。

療養型老健(2356人)では、2019年度末までの移行予定はⅠ型・Ⅱ型の合計で20.2%。2023年度末時点では36.9%(図表5)。

▲図表5 2023年度末までの介護医療院への移行予定:介護療養型医療施設及び介護療養型老人保健施設

医療療養病床(4万9818床)では2019年度末までの移行予定はⅠ型・Ⅱ型の合計でわずか1.0%。2023年度末時点でも2.3%に止まり、医療療養病床が78.2%とほぼ8割を占めた(図表6)。

▲図表6 2023年度までの介護医療院への移行予定:医療療養病床

調査時点の病床から2023年度末で変更がない施設に、移行しない理由を尋ねたところ、介護療養病床では「2021年度介護報酬改定の結果を見て判断するつもり」が40.3%と最も多かった(図表7)。

▲図表7 2023年度末までの介護医療院への移行予定:2023年度末まで移行予定がない施設の検討状況

介護医療院に移行すると仮定した場合、課題と考える項目では、いずれの施設類型でも「施設経営の見通しが立たない(経営状況が悪化する恐れがある)」が最も多く、医療療養病床で46.2%となった。特に療養病棟入院基本料経過措置では50.7%と5割を超えた。介護療養病床では34.3%、療養型老健では37.0%となっている(図表8)。

▲図表8 介護医療院開設にあたって課題と考えること①

既に移行した介護医療院が開設にあたっての課題と考えることのうち最も大きい割合を占めたのは「十分な数の介護職員を雇用することができない」が45.0%。次いで「利用者にとって生活の場となるような配慮が難しい」が42.5%となっている(図表9)。

▲図表9 介護医療院開設にあたって課題と考えること②

移行の際に必要と考えられる支援策について、介護療養病床では「家具・パーティション等を調達するための助成金」が71.8%で最多となった(図表10)。

▲図表10 介護医療院に移行する際必要と考える支援策

 介護医療院の利用者は医療区分1が5割

利用者の状態像を見ると、介護医療院では医療区分1が51.2%で最も多く、医療区分3は4.2%に止まっており、介護療養病床と同様の傾向を示している。一方、医療療養病床では医療区分2が49.3%と最も多く、次いで医療区分3が32.4%、医療区分1は17.5%となっている。

要介護度をみると、介護医療院では要介護5が43.2%と最も多く、介護療養病床は49.2%と同様の傾向を示す。医療療養病床では「不明・未申請・申請中」を除くと、要介護5が23.2%(図表11)。

▲図表11 利用者の状態像:医療区分及び要介護度

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)では、いずれの施設類型でも最重度のランクC2が多く、介護医療院では48.1%、介護療養病床は56.5%、医療療養病床は53.1%など。認知症高齢者の日常生活自立度では、常に介護が必要とされるランクⅣがいずれの施設類型でも最も多く、介護医療院では38.7%、介護療養病床が41.8%、医療療養病床が28.9%など(図表12)。

▲図表12 利用者の状態像:障害高齢者及び認知症高齢者の日常生活自立度


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。