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数理の目レトロスペクティブ|#9 給付建てと拠出建て

坂本 純一(さかもと じゅんいち)/(公財)年金シニアプラン総合研究機構特別招聘研究員

 年金制度の目的を具体的に表現するのが給付設計である。給付設計の骨格には、老齢年金の支給開始年齢と給付額算定のルールがあるが、前回(#8)までは支給開始年齢を見たので今回から暫くは給付額算定のルールを見ていくことにする。

 私的年金制度を含めた年金制度の一般論としては、給付額算定のルールとして、予め給付額や給付水準を定めている給付建て制度と、給付額が掛金拠出の多寡と金利などの状況に応じて変わる拠出建て制度に大別できる。

 そもそも社会保障制度としての公的年金制度は、老齢・障害・遺族という保険事故に遭遇した者が困窮化しないように給付を行う仕組みである。その給付は困窮化を防ぐために十分な水準でなければならない。とすれば、給付水準が分からない拠出建て制度は、公的年金制度の給付額算定ルールになりえない。

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