#5 |ふるさと納税のメリットを受けられるのは、誰?
はじめに
ふるさと納税は2008年に始まり、何回かの制度の見直しを経て今日に至りますが、その人気はますます高く、総務省の発表によると昨年度の寄付額は過去最高を更新したそうです。
今年の10月から自治体の経費の基準が厳格化され、利用者にとっては少し不利になった面もあるようですが、それでもこれから年末にかけて、ふるさと納税のコマーシャルがかまびすしく展開されることでしょう。
この熱気に水をさす意図は毛頭ありませんが、実は私はふるさと納税という制度があまり好きではなく、返礼品を伴わない純粋な寄付のみに利用しています。今回のコラムではその理由を5つ挙げながら、制度について改めて考えてみたいと思います。
ふるさと納税のしくみ
すでにご存じの方も多いことと思いますが、まずはふるさと納税のしくみを確認しておきます。<図表1>の図解と合わせて続く文章をお読みください。
「自分の住所地以外の自治体に寄付をすると、年間(1/1~12/31)の寄付額から2,000円を差し引いた金額が、所得税や住民税から還付または控除される」というしくみです。
寄付の見返りに自治体から寄付額の最大3割までの返礼品が贈られますが、返礼品には食料品や生活必需品も多く、2,000円以上の価値がある返礼品を受け取れば家計にとっては“お得”と言えます。
「ふるさと納税は節税になるからお得」という勘違いも多いようですが、還付または控除されるのは、事前に自分が寄付した金額以下です。
寄付額から2,000円を引いた金額がすべて戻ってくるわけではなく、一定の上限が定められています。その上限額は年収、家族構成等により異なり、限度額を超えた分は自己負担になります。
その上限額の計算過程はなかなか複雑でこのコラムでは割愛しますが、総務省のふるさと納税ポータルサイトに目安の表が掲載されていますし、さまざまなふるさと納税仲介サイトでのシミュレーションも可能です。
<図表1>のМさんもシミュレーションにより上限額を把握し、6万円のふるさと納税をした結果、①所得税が5,800円還付され、②翌年度の住民税が52,200円減額されました。結局、自己負担2,000円で返礼品が受け取れたわけです。
なお、確定申告が不要なワンストップ特例については、<図表1>右側の囲みをご覧ください。
ここからは、あまり好きではない理由です。
理由1.制度のネーミングへの違和感
「ふるさと納税」と言いながら、何の縁もゆかりもない自治体への寄付も可能。
実態は納税ではなく寄付(税金計算では寄付金控除のしくみを使う)。
理由2.誰でもお得になるわけではない不公平感
誰でもふるさと納税の制度を利用して寄付自体はできるが、メリットがあるのは所得税・住民税を納めている人に限定される。
課税所得が多い人ほど寄付の上限額が高く、たくさん利用できる。
⇒この点について、<図表2>の3人のサラリーマンの上限額の目安の比較をご覧ください。課税所得によりずいぶん差があることがご理解いただけると思います。
表の一番左は、ある顧問先のパートのTさんに関連する事例です。
私が会社を訪問したときの雑談の中で、Tさんに「私がもしふるさと納税をやったら、いくらまでならメリットがあるのですか?」と聞かれてザックリと試算しました。彼女の年収の場合、通常なら図表のとおり1万円程度は利用できるのですが、実は彼女はひとり親控除35万円が使える方で、⑤の課税所得がゼロになるため、ふるさと納税をしても残念ながら控除が受けらません。それを説明すると、「な~んだそうなの…」と、ガッカリされました。
ここでひとつ注意点です。
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