#4 第4回年金部会「被用者保険の適用拡大」、第5・6回「雇用の変容と年金」の議論を巡って①
第4回年金部会「被用者保険の適用拡大」を巡って
厚生年金の適用拡大の大切なこと①基礎年金の給付水準を上げる
権丈:まずは、「被用者保険の適用拡大」についてです。ここは、10月26日に開催された日本年金学会のシンポジウム*において、厚生年金の適用拡大について研究発表された藤森さんにお願いすることにしましょう。
藤森:厚生年金の適用拡大では、大切なことが2つあります。1つは、あまり知られていませんが、適用拡大によって基礎年金の給付水準が上がっていくことです。これまで公的年金保険制度の大きな課題として議論されてきたのは、マクロ経済スライドによって基礎年金の給付水準が低下していくことでした。しかし、適用拡大を行えば、基礎年金の給付水準が上昇していきます。これは、現在の公的年金の抱える課題への対応として、非常に重要です。
前回の財政検証においてもオプションⅡの②は、月収5.8万円以上の全ての被用者を適用拡大の対象として試算をしています。この場合の適用拡大の対象者は1,200万人に拡がり、基礎年金の所得代替率が7.3ポイントも高まるのですね。これはかなり大きな上昇です。
●適用拡大による基礎年金の給付水準の上昇
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