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地域包括ケアの深化・推進で2回目の議論 介護保険部会(5月30日)

社会保障審議会介護保険部会(菊池馨実部会長)は5月30日、地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進をテーマに、2回目の議論を行った。

厚労省は、前回委員による指摘や疑問を受けて資料を追加。第8期介護保険事業計画におけるサービス量の見込み増加率を都道府県別に示した。

在宅、居住系サービス、介護施設で見ると、在宅のうち、定期巡回・随時対応型サービスの増加率20%超が40都府県でみられ、そのなかで増加率は21~530%。看護小規模多機能型居宅介護では全都道府県で増加率20%超となり、増加率は30~299%と開きがある。

都道府県別 第8期介護保険事業計画におけるサービス量の見込み増加率

UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの染川朗委員は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は令和2年時点で1,012事業所、看護小規模多機能型居宅介護は令和3年時点で740事業所であることをあげ、「全国の自治体数に満たない数字となっており、これからのサービスの利用を選択することができない地域がある」と指摘。

さらに、「第8期の事業計画の見込みでは2040年度在宅介護利用者474万人のうち、定期巡回と小多機、看多機の利用者数の合計は24万8千人と、わずか5%程度にとどまる見込み。これらのサービスが普及・定着せずに地域偏在している要因を分析し、全国一律のサービスとして定着するよう、サービスの普及策を考えることが急務」と訴えた。

地域支援事業の効果的な実施も課題

また、介護予防・日常生活支援総合事業の介護予防・生活支援サービス事業の令和2年度の実施市町村数を示した資料では、訪問型、通所型ともに従前相当のサービスを実施する市町村が90%以上でもっとも多かった。一方、住民主体のサービスBは訪問型で16.7%、通所型で15.0%と伸び悩んでいる。

介護予防・生活支援サービス事業の実施市町村数(令和2年度)

女子栄養大学の津下一代委員は、「サービスBは、参加することが住民にとってもプラスであるという働きかけが大事。住民はお客さんでサービスの受け手、という姿勢ではサービスは回っていかない」と述べた。

さらに、地域共生社会に向けた取り組みについての資料では、令和3年からスタートした重層的支援体制整備事業が紹介された。地域住民が抱える課題が複雑化、複合化しているなか、包括的支援体制の構築に向けた市町村の任意事業となっており、今年度実施予定は134自治体。

日本看護協会の齋藤訓子委員は、「地域包括支援センターは、ブランチ等を含めて7,335か所。人口構造が変わって、利用者の課題が複雑化・多様化していくなかで、ワンストップで悩みに対応する重層的支援体制整備事業があるわけだが、地域包括支援センターもかかわってくるだろう。第一号被保険者の数に対して職員の配置がいまのままでいいのか。私の地元でも職員の人手が足りないと聞く。見直しも必要」と述べるなど、委員からは地域包括支援センターの負担を懸念する声があがった。

文書負担軽減策を専門委で議論

厚労省は、5月27日の規制改革推進会議で出された答申を受け、介護分野の文書負担軽減について、介護保険部会の下に設置した専門委員会で検討していくことを提案、おおむね了承された。

規制改革推進会議の答申では、介護分野におけるローカルルール等による手続き負担の軽減として、指定申請関連文書・報酬請求関連文書・指導監査関連文書の様式や添付書類には、押印や署名欄は設けないことを基本とし、地方公共団体に対して押印や署名を求めることがないよう要請するなどの措置を講じるべきだとしている。

文書負担軽減については、これまでも介護保険部会の下に「介護分野の文書負担に係る負担軽減に関する専門委員会」を設置し、国、指定権者・保険者と介護サービス事業所でやり取りされる文書について負担軽減策を検討してきた。

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