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#11 |株式投資は人それぞれ

小野田 理恵子(おのだ りえこ)/小野田社労士・FPオフィス代表


基本的なしくみ

株式投資については、「ギャンブルのようなもの」「怖くてできない」「素人にはムリ」などのイメージを持っている方も多いようです。確かにそんな側面もありますが、そうばかりでもありません。今回のコラムではやってみたいと考えている方に向けて参考になる情報をお伝えできればと思います。

株の取引は多くの方にとってイメージしやすいものではないかと思いますが、まずは基本的なしくみを確認しておきます。以下、<図表1>の図を参照しながらお読みください。

株式とは、株式会社が資金を出資してくれる投資家に対して発行する証券のことで、株式の発行は株式会社が設備投資、研究開発、事業の拡大等を行うための資金を調達する手段のひとつです(現在は電子化されており、紙の株券は発行されない)。

出資した投資家は株主となり、出資額に関わらずその企業の共同オーナーになったと言えます。株主は出資の見返りとして、保有している株式の株数に応じて、配当金(利益の分け前)が受け取れたり、株主優待が受けられたり、議決権を行使できたりという権利を手に入れます。

株式の価格(株価)は絶えず変動しており、<図表1>の下に挙げたさまざまな要因が絡み合って決まるため、この動きを的確に予想するのは金融のプロでも至難の業です。

株式は貸したお金ではないので満期はなく、待っていても返済されないところが預貯金や債券とは大きく違うところで、お金に換えたいときは証券会社を通して株式市場で株を売却する必要があります。

この場合に、次の図表のとおり、自分が購入したときより株価が上がったタイミングで売却すると売却益を得ることができますが、反対に下がっているときに売却するとが出ます。

目的はいろいろ

株式投資の最大の魅力は大きな値上がり益が得られる可能性があることですが、誰もがそれを目指しているわけではなく、他にもいろいろな目的があるので<図表2>に表にしました。また株式投資のメリット・デメリットについても<図表2>でご確認ください。

ここで、株式投資の目的について私の身近な3人の事例をご紹介します。

1.ご近所のF太さん(50歳代前半)
F太さんはコロナ禍をきっかけにほぼ在宅勤務になり、自宅のPCの前に座っての執務時間が長いそうです。そこでプライベート用のPCとモニターも設置し、常時株式市場の動向にも目配りして株取引を繰り返し、着々と売却益を積み上げて60歳での早期リタイアを目指しているそうです。社労士的には職務専念義務の観点からいかがなものかとは思いますが、置かれた環境を上手く利用されている点には感心します。

2. Мさんご夫妻(60歳代、子ども3人、孫5人)
奥様が証券会社出身ということもあり、若い時からご夫婦で株式投資を続けていますが、現在は売却益を狙うよりも株主優待にポイントを置き、子ども世帯にとって生活の足しになる商品券、飲食券、食品等が受け取れる企業や、孫と一緒に楽しめる施設の招待券や割引券が手に入る企業に集中投資して、一族でメリットを享受しているそうです。

3.Y夫さん(78歳で死去、子ども4人、孫12人)
65歳の完全リタイア時に、その当時は年間50万円以下の贈与なら非課税でしたので、退職金を使って12人の孫にそれぞれ50万円弱の株式を贈与しました。銘柄はY夫さんがじっくりと選定し、今後も長期にわたり安定した業績が続くであろうと判断したSK社でした。その後今年で34年が経過しましたが、孫の半数は今でもその銘柄を持ち続けています。その孫たちは、SK社から株主総会の招集通知や株主通信等が届くたびに、また1年に2回の配当金の入金を確認するたびに、一瞬かも知れませんがY夫おじいちゃんのことを思い出すのではないでしょうか。これって何と粋なプレゼントなのでしょう!

何を隠そう、②は私の次兄夫妻、③は私の実父です。

しかも父は、証券会社の窓口担当者だった若い女性がとても感じが良かったので、まだ独身だった次兄にわざと何度か用事を頼んで窓口に行かせ、そこから次兄の結婚に繋がったというエピソードもあります。

実際に始めるには

株式投資を始めるには、まず証券会社に口座を開設し資金を入金します。そして株式を買いたい上場企業の社名や株数、値段を提示すると、証券会社がその買い注文を証券取引所に出し、取引所に出ている売り注文との条件が折り合えば取引が成立し、株主になることができます。

原則として株式の売買には手数料が必要ですが、手数料の金額は証券会社、取引スタイル、約定金額等によりかなり大きな開きがあります。なお、ネット証券は手数料が比較的安く、一定の条件を満たす取引については無料にしている証券会社もあります。

証券取引所を通じた株の取引は基本的には100株単位で、100株を1単元として売買します。たとえば1株3,000円の場合、1単元の100株を買うには30万円が必要になります。

現在は個人投資家が株式を買いやすくする目的で多くの企業で株式分割が進んでおり、上場している企業の90%以上の株が最低50万円未満で買える状況です。

なお、ネット証券では単元未満株の取引サービス(ミニ株と呼ぶことも)を利用できることがあり、少額の資金で株が購入できるのでハードルがかなり下がります。

いずれにしても少額でも株を保有してみると、自然に新聞やネットの経済ニュースに目が行くようになり、少しずつ金融に関する知識が身についていく効果があることを、私は自分の経験として実感しています。

初心者に向けての筆者の私見

投資対象になる国内の上場企業は3,500社以上あり、その中から投資したい銘柄を絞り込むのはなかなか難しいものです。雑誌やネットの記事にはいろいろな見極め方が紹介されていますが、初心者が企業の業績の分析やいくつもの株式指標のチェックをするのは容易なことではなく、それらをちゃんとマスターしてから始めようと考えたらいつまでたってもスタートできないと思います。

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