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令和3年度介護報酬改定について諮問・答申(1月18日)

社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は1月18日、田村憲久厚生労働大臣から社保審に諮問があった令和3年度介護報酬改定の報酬告示案を了承した。社保審としても同日、田村厚労大臣に答申した。告示案に対する1か月の意見公募が行われた後、報酬告示は3月を目途に公布される方向だ。なお13日に運営基準等の省令改正案は答申されており、今月下旬に公布される予定だ。

改定では、新型コロナウイルス感染症に対応する特例的な評価として、全介護サービスの基本報酬について4月から9月末まで0・1%を上乗せして評価することが盛り込まれた。

また今回の改定では、(1)感染症や災害への対応力強化(2)地域包括ケアシステムの推進(3)自立支援・重度化防止の取組の推進(4)介護人材の確保・介護現場の革新(5)制度の安定性・持続可能性の確保─の観点から見直している。 主な改定内容をみてみる。改定内容は多岐に渡り、紹介し切れないものは随時、掲載していく。

参考:第199回社会保障審議会介護給付費分科会資料(1月18日)

9月まで全介護サービスの基本報酬に0・1%上乗せ

昨年末の田村厚労大臣と麻生太郎財務大臣の折衝により、全体の改定率は+0・70%とし、このうち新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として0・05%(令和3年9月末まで)をあてることが決まった。

これを踏まえ、原則として全サービスの基本報酬を引き上げるとともに、全サービスについて4月から9月末までの間、基本報酬に0・1%を上乗せして評価することになった。

厚労省は、「0・70%はすべて基本報酬にあてている」と説明する。また基本報酬の単位数の引き上げについては、「経営状況や新型コロナウイルス感染症の影響により濃淡をつけている」とした。新な加算の財源は、既存の加算の適正化・廃止分をあてるなどして財源をねん出した。

例外的に基本報酬が引き下げとなったのは、令和5年度末に廃止が決まっている介護療養型医療施設やリハ専門職による訪問看護などごく一部。

9月末までの0・1%の上乗せ評価で増える単位数分は区分支給限度基準額の算定にも含まれる。また利用者負担も増加する。

次に5つの視点に沿って主な改定内容をみてみる。

感染症や災害への対応力強化

感染症・災害発生時における通所介護等での報酬算定に特例を設定

感染症や災害の影響により利用者数が減少した場合に通所系サービスについて報酬算定において次の①と②の2つの特例を恒久的に導入する。現行の報酬算定における特例は3月末で終了する。

具体的に、①より小さい規模区分がある大規模型について、事業所規模別の報酬区分を決定するうえで、前年度の平均延べ利用者数ではなく、延べ利用者数が減少した月の実績を基礎とすることができる。

②延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、3か月間は基本報酬の3%を加算する。経営改善等に時間がかかる場合は1回だけ3か月間の延長を認める。この加算は区分支給限度基準額の算定に含めない。

現下の新型コロナの影響による前年度の平均延べ利用者数等から5%以上の利用者減に対する適用に当たっては、令和3年度当初から即時的に対応する。

4月から算定する場合は、2月の実績と、前年2月の実績又は令和元年度の平均を比べて5%以上の利用者減が認められる場合には算定を可能とし、3月に届け出を受け付ける方向だ。5月から算定する場合は、3月の実績と、前年3月の実績又は元年度の平均を比べて5%以上の利用者減が認められる場合には算定を可能とする方向だ。

事業所が①と②のいずれにも該当する場合は①を適用する。①と②ともに利用者減の翌月に届け出し、翌々月から適用する。利用者数の実績が前年度平均等に戻った場合はその翌月に届出する。翌々月までは利用者減に応じた報酬の算定が可能だ。

地域包括ケアシステムの推進

看取りへの対応を充実

看取りへの対応を充実する。

介護医療院や介護療養型医療施設、短期入所療養介護(老健施設によるものを除く)では、基本報酬の算定の前提として看取り期の対応について「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスガイドライン」等の内容に沿った取り組みを求めていく。

特養の看取り介護加算では、算定要件でガイドライン等の内容に沿った取り組みを追加。看取りに関する協議等の参加者に生活相談員を明記する。

また現行の死亡日以前30日前からの算定に加えて、死亡日前45日前からの対応を新たに評価する区分を設ける。特養では1日あたり72単位とする。

老健施設や特定施設入居者生活介護、認知症グループホームの加算でも同様の対応を行う。

介護医療院での長期入院患者の受け入れを推進

介護医療院では長期入院患者の受け入れを推進するため、長期療養生活移行加算(60単位/日)を新設する。入所した日から90日間に限り算定が可能だ。

算定要件では、▽入所者が療養病床に1年間以上入院していた患者である▽入所にあたり、入所者及び家族等に生活施設としての取組について説明する▽入所者及び家族等と地域住民等との交流が可能となるよう、地域の行事や活動等に積極的に関与している─ことを求める。

療養病床の一部を介護医療院に転換して、療養病床の患者を受け入れる場合にも算定を可能とする。

なお、移行定着支援加算は予定通り今年度末で廃止する。

介護療養型医療施設で移行計画の未提出の場合に減算を導入

他方、介護療養型医療施設の円滑な移行を図るために、「移行計画未提出減算」(▲10%日)を導入する。厚労省が示す様式を用いて、令和6年4月までの移行計画について半年ごとに都道府県などの許可権者に提出することを求める。最初の提出期限は今年9月30日とする。満たさない場合、基本報酬から1日当たり10%減算する。減算は次の計画の提出期限まで。

自立支援・重度化防止の取組の推進 

CHASE・VISITへ情報提供で「科学的介護推進体制加算」を導入

CHASE・VISITへの事業所の全利用者に係るデータの提出と分析等のフィードバックを受け、事業所単位でPDCAサイクルにより、ケアの質の向上を図ることを新たに評価する「科学的介護推進体制加算」を創設する。

対象は、施設系(介護療養型医療施設を除く)・通所系・居住系・多機能系サービス。提出するデータはADLや栄養、口腔・嚥下、認知症。このデータの提出では月、利用者1人につき月40単位を上乗せ算定できる。施設系ではさらに疾病・服薬情報等のデータを提供する場合に算定できる加算(Ⅱ)を設定する。老健施設や介護医療院は、利用者1人につき月60単位を上乗せできる。服薬情報を求めない(地域密着型)特養では50単位を上乗せできる。さらに既存の加算等でもCHASE等を活用した場合の取組を評価する。

令和3年度からCHASE・VISITを一体的に運用するにあたり、名称を「科学的介護情報システム」(Long-term care Information system For Evidence ; LIFE ライフ )に統一することも示した。

寝たきり防止の「自立支援促進加算」を新設

施設系サービス(介護療養型医療施設を除く)で寝たきり防止の観点から「自立支援促進加算」(300単位/月)を新設する。

定期的な医学的アセスメントを所定の様式に準じて実施するとともに、医師・ケアマネジャー・介護職員などが連携して会議を実施し、アセスメントを踏まえて、リハ・機能訓練や日々の過ごし方に関する計画を策定し、計画に従ったケアを実施する。さらに「科学的介護情報システム」にデータを提出し、分析等のフィードバックを受け、計画の見直しに活用しPDCAサイクルを推進していく。

介護人材の確保・介護現場の革新

特定処遇改善加算の配分ルールを柔軟化

介護職員等特定処遇改善加算の介護職員間の配分ルールの柔軟化を行う。特定処遇改善加算の平均の賃金改善額の配分ルールで、「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」について、「より高くすること」と見直す。

また特定処遇改善加算・介護職員処遇改善加算の職場環境等要件について、より実効性が高くなるように見直す。

訪問介護の特定事業所加算で新たな類型を設定

訪問介護について、ヘルパー等の総数のうち勤続年数が7年以上の者の占める割合が30%以上であることなどを要件とする、「特定事業所加算(V)」を新設する。1回ごとに所定単位数の3%を加算する。

制度の安定性・持続可能性の確保

理学療法士等による訪問看護の提供の評価等を見直し

評価の適正化・重点化を図る。

訪問看護・介護予防訪問看護で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるサービス提供の評価や提供回数を見直す。1回当たりの算定単位数をそれぞれ4単位引き下げる。

リハ専門職が1日に2回を超えて介護予防訪問看護を行った場合は、1回につき減算する割合を高くし、100分の50を算定することとする。

また利用開始月から12か月を超えた利用者に介護予防訪問看護を行った場合は1回につき5単位を減算する。

処遇改善加算(Ⅳ)・(Ⅴ)を廃止

介護職員処遇改善加算(Ⅳ)・(Ⅴ)について廃止する。令和3年3月末時点で同加算を算定している事業者には1年間の経過措置期間を設け、上位区分の加算の算定を促していく。

その他

基準費用額を引き上げ

その他、基準費用額(食費)について、1日当たり53円引き上げ1445円に見直す。8月から施行する。

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