訪問系サービスや居宅介護支援について議論(8月19日)part2
社会保障審議会介護給付費分科会は(田中滋分科会長)19日、令和3年度介護報酬改定に向け、①訪問看護、②訪問リハビリテーション、③訪問介護、④訪問入浴介護、⑤居宅療養管理指導の訪問系5サービスと、⑥居宅介護支援・介護予防支援について検討した。
part2では、訪問介護と訪問入浴介護を取り上げる。訪問介護では、生活援助の訪問回数の多い場合のケアプランの見直しについて賛否が出された。また複数の医療機関に通院する場合、医療機関間における通院等乗降介助を可能にするように見直すことを複数の委員が支持した。
訪問介護の生活援助の訪問回数が多い場合の対応で賛否
訪問介護の請求事業所は平成29年の3万3445事業所から減少傾向であり、31年で3万3176事業所になっている。
減少の背景には、訪問介護員の確保の問題もあると考えられる。有効求人倍率は15.03倍、82.1%の事業所が訪問介護員の不足を感じている。訪問介護員の平均年齢は他の介護関係職種と比較しても高く、60歳以上が約4割を占める。
また30年度の費用額は、9000億円を超えている。
30年度改定では、自立支援・重度化防止に資する訪問介護を推進する観点から、生活機能向上連携加算の見直しや生活援助の訪問回数の多い利用者への対応などを行った。
生活機能向上連携加算の見直しでは、ICTを活用したリハ専門職等との連携を評価する加算(Ⅰ)を創設した。しかし、加算算定は伸び悩んでおり、令和元年10月サービス提供分で、事業所ベースの算定率は0.4%にとどまっている。
算定しない理由としては、「取り組む余裕がない」が約4割で最も多い一方、利用者側のメリットとしてケアマネジャーに尋ねたところ、「リハ専門職等が携わるため利用者・家族が安心したこと」が約7割に上る。
生活援助の訪問回数の多い利用者への対応では、統計的にみて通常のケアプランよりかけ離れた回数以上の生活援助を位置付ける場合に市町村にケアプランを届け出ることとした。市町村ではケアプランについて地域ケア会議で検証。それを受け、市町村は必要に応じてケアマネジャーにサービス内容の是正を促すこととしている。施行は30年10月から。
30年10月から令和元年9月までの1年間で届けだされたケアプランで、地域ケア会議で検討した件数は1442件で、全体の25.9%。そのうち実際にケアプランの変更が行われたのは13.5%であった。
こうした検証に対して保険者からは、「結果的に必要なサービスが受けられなかったり、施設に入所することに繋がること等が懸念される」といった問題点も挙げられている。
また通院等乗降介助の運用でも課題が報告された。総務省への行政相談に寄せられたものとして、居宅の利用者が複数の医療機関に通院する場合、医療機関と医療機関の間の移送では介護給付費を算定できないことが改めて示された。現行制度では1日に複数の医療機関を受診する場合は一度、自宅に戻る必要がある。通所・短期入所サービス事業所から医療機関への移送に伴う介護も同様に介護給付費は算定できない。
意見交換で、日本経団連の井上隆委員は、訪問介護の生活援助の訪問回数が多いケアプランの届け出について、当面維持してケアプランの内容を評価していくべきことを求めた。
一方、連合の伊藤彰久委員は、訪問介護の生活援助について、一律に届け出の訪問回数を定めてケアプランを検証して見直すことに問題提起。「市町村が地域ケア会議を開催する負担感があると聞いている。見直しても生活に響かせていると保険者側でも感じているとも聞いている」として、「訪問回数を一律に要介護度別に当てはめていくことは再検証していくべき」と訴えた。
健保連の河本委員は、訪問介護の生活援助の回数が多い場合に、身体介護の方に振り替えられる実態がないか検証を求めた。また中重度者にサービスを重点化する観点から要介護1及び2の生活援助について総合事業の実施状況を見ながら「段階的に地域全体で支えるように移行させていくべき」と主張した。
全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は、訪問介護について「供給量が不足している地域が出てきている。中山間地域では供給できていない。報酬なのか業務の特異性なのか、ここでしっかり考えていかないと、地域包括ケアシステムが機能しないのではないか」と提起した。また通院等乗降介助について「利用者の生活利便性を考えれば解消すべきことではないか」と求めた。
民間介護事業推進委員会の今井準幸委員は、訪問介護の生活機能向上連携加算の連携先を医療機関等のリハ専門職に限定せずに、通所介護のリハ専門職にも広げるなど要件の緩和を求めた。また、高齢者の自動車免許の返納による移動の問題への対応から、通院等乗降介助の見直しを支持した。
日医の江澤委員も訪問介護の通院等乗降介助の見直しに賛意を示した。
訪問入浴介護の部分浴減算の見直しが指摘される
訪問入浴介護の請求事業所数は近年、減少傾向であり、平成19年の2458事業所から31年には1770事業所になっている。利用者の平均要介護度は4.1であり、要介護5が50%、要介護4が26.9%、要介護3が12.0%などと中重度者が約9割を占める。軽度者はデイサービスの利用により入浴も済ませる一方、移動が困難な中重度者のニーズが高いとみられる。費用額は30年度で525億円程度だ。
30年度改定では、基本報酬が引き上げられた。訪問入浴介護で16単位引上げられ、1250単位、介護予防訪問入浴介護で11単位引上げられ、845単位となった。他方、令和元年度の介護事業経営概況調査では、30年度決算の収支差率は2.6%であり、29年度よりも0.9ポイント減少したことが分かった。
なお災害発生時には、バリアフリー対応になっていない仮設風呂等に入浴できない要介護高齢者等のために、訪問入浴介護事業者が、入浴支援を実施している事例も報告された。
民間介護事業推進委員会の今井委員は、訪問入浴介護の部分浴が30%減算されることに言及。事業者は同じ人員配置基準で取り組んでおり、「減算率の軽減を検討してほしい」と訴えた。