居酒屋ねんきん談義|#5 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って その1
知の巨人・出口さんが年金部会の議論に参加して感じた3つのこと
編集部:今宵の居酒屋ねんきん談義は、年金部会の「議論の整理」*1がまとまり、部会での議論もひと区切りついたことから、年金制度改正*2の議論を大局的な視点からお話をお伺いしたいという権丈様の強いご希望で、1万冊以上の本を読破され、世界中で1,200都市以上を訪れられている、「知の巨人」と評される出口治明様においでいただきました。
*2:今回の年金部会が議論した2019(令和元)年財政検証結果を踏まえた年金制度改正
権丈:出口さんは、2014(平成26)年財政検証と2016(平成28)年制度改正、そして、このたびの2019(令和元)年財政検証をご経験されています。出口さんは、それこそ山ほどに本を出されていて、最近では『全世界史』や『哲学と宗教全史』などを書かれています。僕は、『哲学と宗教』のような観点からも、歴史に翻弄されながら生きてきた人間というものへの愛おしみを書かれている出口さんの本が大好きでして、2017年から出口さんは、全5巻の『人類5000年史』を書き続けられ、今は、Ⅲ巻をまとめられていると伺っています。そうした出口さんからご覧になって、まさに人類史的な観点から、日本での年金制度改正の議論をどのようにご覧になられてきたかということにたいへん興味をもっています。
そこで、出口さんが経験された2回の財政検証および制度改正を議論してきた年金部会を時間軸*に沿って、その特徴を申し上げたいと思います。
前回の2014(平成26)年財政検証に取り組んだ年金部会は民主党政権下の2011年8月に、長妻厚生労働大臣・栄畑年金局長によって人選されています。そのときは、出口さんは年金部会の委員に選ばれていません。
その翌年の2012年10月に開催された年金部会からは、10月1日から年金局長になった香取照幸さんが関わることとなり、12月には政権交代があって、自民党の田村憲久さんが厚労大臣になる。翌2013年8月に社会保障制度改革国民会議の報告書がまとめられ、10月に、香取局長体制で2014年の財政検証に向けて始動しようかという第1回目のときに、出口さんと原佳奈子さんが年金部会の委員に就任して初めて参加されています。
そうしたことからわかるように、出口さんには、年金部会参加の1日目から、当時の香取局長体制の下での年金局から強い期待があったと思います。
前回平成26年財政検証と今回令和元年財政検証の2回に関わられてきたのですが、まずは全体的に見て、日本の年金制度や制度改正の議論のしかた、さらには年金部会についてのご感想をお話しいただければと思います。
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