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居酒屋ねんきん談義|#5 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って その1

※この記事は2020年2月18日に「Web年金時代」に掲載されました。

 社会保障審議会年金部会は、2018(平成30)年4月から2019(令和元)年12月までの15回にわたって、年金制度改革に向けた検討を行ってきました。昨年12月15日に開催された第15回年金部会では、これまでの部会の議論を整理。同27日には「社会保障審議会年金部会における議論の整理」が公表されました。第7夜の「居酒屋ねんきん談義」では、この「議論の整理」をテーマに年金部会の委員でもある、出口治明さんをお招きして、居酒屋ねんきん談義の店主・権丈善一さんと常連客・坂本純一さんとで、大いに談義を交わしていただきました。(収録:2020年1月19日)

ねんきん談義を交わす左手前から、権丈氏、出口氏、坂本氏。

店主:権丈善一(けんじょう・よしかず)慶應義塾大学商学部教授。社会保障審議会年金部会委員。2013(平成25)年8月、財政検証において年金制度改正の課題の検討に資するオプション試算の実施を提言した社会保障制度改革国民会議の委員も歴任。

常連客:坂本純一(さかもと・じゅんいち)JSアクチュアリー事務所代表。厚生労働省年金局数理課長として、現在の公的年金制度の財政フレームを導入した2004(平成16)年改正を担当。

招待客:出口治明(でぐち・はるあき)立命館アジア太平洋大学(APU)学長。社会保障審議会年金部会委員。1948(昭和23)年三重県生まれ。京都大学法学部出身。1972年日本生命保険相互会社入社。2006(平成18)年同社退職。2008年ライフネット生命保険株式会社開業、社長に就任。2012年上場。2017年6月同社取締役を退任。2018年1月立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。

店員:年金時代編集部

知の巨人・出口さんが年金部会の議論に参加して感じた3つのこと

編集部:今宵の居酒屋ねんきん談義は、年金部会の「議論の整理」*1がまとまり、部会での議論もひと区切りついたことから、年金制度改正*2の議論を大局的な視点からお話をお伺いしたいという権丈様の強いご希望で、1万冊以上の本を読破され、世界中で1,200都市以上を訪れられている、「知の巨人」と評される出口治明様においでいただきました。

*1:社会保障審議会年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」令和元年12月27日
https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/000581907.pdf

*2:今回の年金部会が議論した2019(令和元)年財政検証結果を踏まえた年金制度改正

出所:第15回社会保障審議会年金部会(2019年12月25日) 
資料2「年金制度改正の検討事項 2019年12月25日 厚生労働省年金局」[1頁]https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000580825.pdf

権丈:出口さんは、2014(平成26)年財政検証と2016(平成28)年制度改正、そして、このたびの2019(令和元)年財政検証をご経験されています。出口さんは、それこそ山ほどに本を出されていて、最近では『全世界史』や『哲学と宗教全史』などを書かれています。僕は、『哲学と宗教』のような観点からも、歴史に翻弄されながら生きてきた人間というものへの愛おしみを書かれている出口さんの本が大好きでして、2017年から出口さんは、全5巻の『人類5000年史』を書き続けられ、今は、Ⅲ巻をまとめられていると伺っています。そうした出口さんからご覧になって、まさに人類史的な観点から、日本での年金制度改正の議論をどのようにご覧になられてきたかということにたいへん興味をもっています。

権丈善一氏。

 そこで、出口さんが経験された2回の財政検証および制度改正を議論してきた年金部会を時間軸*に沿って、その特徴を申し上げたいと思います。
 前回の2014(平成26)年財政検証に取り組んだ年金部会は民主党政権下の2011年8月に、長妻厚生労働大臣・栄畑年金局長によって人選されています。そのときは、出口さんは年金部会の委員に選ばれていません。
 その翌年の2012年10月に開催された年金部会からは、10月1日から年金局長になった香取照幸さんが関わることとなり、12月には政権交代があって、自民党の田村憲久さんが厚労大臣になる。翌2013年8月に社会保障制度改革国民会議の報告書がまとめられ、10月に、香取局長体制で2014年の財政検証に向けて始動しようかという第1回目のときに、出口さんと原佳奈子さんが年金部会の委員に就任して初めて参加されています。
 そうしたことからわかるように、出口さんには、年金部会参加の1日目から、当時の香取局長体制の下での年金局から強い期待があったと思います。
 前回平成26年財政検証と今回令和元年財政検証の2回に関わられてきたのですが、まずは全体的に見て、日本の年金制度や制度改正の議論のしかた、さらには年金部会についてのご感想をお話しいただければと思います。

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