遺族年金のしくみと手続~詳細版|#21 夫死亡による遺族厚生年金の受給者は本妻か内縁妻か
今回は、戸籍上の妻と内縁の妻の両方が遺族厚生年金を請求しているケースです。比較的よく見られるケースと言えますので、この機会に重婚的内縁関係における遺族年金の支給決定について、判断ポイントを確認しておきましょう。
内縁の妻が遺族年金を受給する条件とは
老齢厚生年金の受給権者であったA男さんには、戸籍上の届出のある妻B美さんがいます。しかし、内縁の妻であるというC子さんが、A男さんが死亡したとのことで遺族厚生年金の請求のために来所されました。
老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合において、その死亡当時、その者によって生計を維持した配偶者に遺族厚生年金が支給されます(厚年法第3条第2項、厚年法第58条第1項及び第59条第1項)。なお、ここで言う「配偶者」には、婚姻はしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。
受給権者に戸籍上、届出のある妻のほかに内縁の妻がいる場合を「重婚的内縁関係」といいます。内縁の妻が遺族年金を受給するためには、亡くなった受給権者によって生計を維持していた事実があり、かつ、受給権者と本妻が「届出による婚姻関係がその実体を全く失ったもの」となっていて、「夫婦としての共同生活の状態にない」といい得ることが必要です(「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年3月23日年発 0323第1号厚生労働省年金局長通知)。
なお、「届出による婚姻関係がその実体を全く失ったもの」となっているときとは、次のいずれかに該当する場合をいいます(通知の「6 重婚的内縁関係」の(1)認定の要件)。
また、「夫婦としての共同生活の状態にない」といい得るためには、次に掲げるすべての要件に該当する必要があります。
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