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介護保険部会、利用者負担割合の所得の判断基準を論点に(10月31日)

社会保障審議会の介護保険部会は10月31日、次期制度改正に向けて「給付と負担」をテーマに議論した。厚労省は、利用者負担割合の所得の判断基準の見直しや高所得者の1号保険料の保険料設定などを論点にあげた。

厚労省は全世代型社会保障構築会議などの議論を踏まえ、負担能力に応じた負担や公平性を踏まえた給付内容の適正化の視点に立ち、論点を示した。

論点は次の7つ。

  1. 被保険者範囲・受給権者範囲

  2. 補足給付

  3. 多床室の室料負担

  4. ケアマネジメントの給付

  5. 軽度者への生活援助サービス等の給付

  6. 「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準

  7. 高所得者の1号保険料の負担

「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準では、医療保険との関係から見直しの議論を求めた。介護保険の利用者負担は1割だが、所得が上位20%相当の人は2割、現役並み所得の人は3割となっている。一方、後期高齢者医療の窓口負担は10月から上位30%の人の負担割合を2割に引き上げ、介護保険との整合性を論点にあげた。

高所得者の1号保険料の負担では、「高齢化の進展に伴って1号保険料水準の中長期的な伸びが見込まれるなかで、被保険者の負担能力に応じた保険料設定をどのように考えるか」と提案。介護費用の総額が制度創設時から約3.7倍の13.3兆円に増加していることに伴い、1号保険料の全国平均は制度創設時の2911円(第1期)から6000円超(第8期)に増えており、2040年には9000円程度に達することが見込まれている。

健保連の河本滋史委員は、「今後も介護費用の増加が見込まれるなかで、現役世代の負担は限界にきている。介護保険制度の持続可能性を確保するためには、負担能力のある受給者には一定程度負担してもらうことが必要だ。低所得者に配慮しつつ、利用者負担は原則2割とし、対象も拡大すべきだ」と見直しを求めた。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員も「応能負担をしっかりと入れていくべきだ」と述べた。

一方、日本医師会の江澤和彦委員は「応能負担は進めるべきだと思うが、医療保険部会では年収モデルを設定しながら議論しており、介護保険においてもモデルをつくってほしい。その結果、手元にいくら残るのか。万一、コーヒー一杯を飲めないような事態が決してあってはならない。共助の仕組みのあり方を十分検討してほしい」と要請した。

日本看護協会の斎藤訓子委員は現役並み所得などの判断基準の見直しについては「新型コロナの感染拡大や急激な物価高などの社会情勢を勘案して検討すべき。必要な介護サービスの抑制につながらないように利用者負担については慎重な議論が必要だ」と述べた。

ケアマネジメントの給付や軽度者への生活援助サービスの見直しで要望書

ケアマネジメントの給付について日本介護支援専門協会の濱田和則委員は、6団体連名による「居宅介護支援費、介護予防支援費における現行給付の維持継続」を求める意見書を菊池馨実部会長に提出し、利用者負担の導入に反対した。

軽度者への生活援助サービス等の給付について全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は同21日、厚労省の大西証史老健局長に8団体連名による要望書を提出したことを報告。要介護度1、2の人への訪問介護・通所介護を総合事業に移行する見直しに反対を表明した。

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