介護医療院への移行後に事業利益率が上昇した施設は8割(8月2日)
独立行政法人福祉医療機構は8月2日、介護医療院の開設状況および運営実態についてリサーチレポートをホームページで公表した。
調査対象とした32施設の2019年度の事業利益率は10.6%と高く、「経営は安定している」と分析。さらに移行前の2017年度と比較しても全体で事業利益率が高く、移行後に事業利益率が上昇した施設は8割程度を占めていることを紹介している。
介護医療院の事業利益率は10.6%
介護医療院は2018年度の導入以来、徐々に増加し2021年3月末には572施設になった。都道府県別にみると、最多は福岡県の39施設、次いで熊本県の32施設、北海道の31施設となっている。最も少ないのは山梨県の1施設、次いで岩手県の2施設などと都道府県で差がある。リサーチレポートでは32施設を対象とした。
開設主体は医療法人が81.3%。療養床数では40床以上60床未満が25.0%と比較的多かった。また病院併設が68.8%。移行前の施設種別では介護療養病床が44.7%と最も多かった。入所者の特徴をみると、要介護3以上が90.4%と9割になった。平均要介護度は4.10。
2019年度の事業利益率は10.6%であり、レポートでは「他の介護保険施設と比べても比較的高く、今のところ経営は安定している施設であるといえよう」と分析している。対象とした32施設のうち28施設が黒字であり、黒字施設の事業利益率は12.8%である一方、赤字施設の事業利益率は▲11.2%となっている。
加算の算定率をみると、栄養マネジメント加算96.9%、療養食加算87.5%、移行定着支援加算78.1%などとなっている。
利用者1人当たり事業収益は1万6561円。レポートでは、2020年度の介護事業経営実態調査結果における2019年度の介護療養病床の利用者1人1日当たり収益の1万6538円と同水準であったことを指摘。その一方、「2021年度の介護報酬改定において介護療養病床はマイナス改定であり、今後、大きく差が開くものと考えられる」としている。
レポートでは2017年度時点の移行前の施設の事業利益率と移行後の2019年度の事業利益率を比較した。
移行前の施設の平均事業利益率は2.1%であったが、2019年度は10.6%となっており、対象施設全体では移行後の方が高かった。移行後に事業利益率が上昇した施設は全体の78.1%(25施設)を占めた。
ただしレポートでは、2018年度に診療報酬改定・介護報酬改定があったことから事業利益率の変化が必ずしも移行の影響によるものだけではないことへの留意も指摘している。
また2020年度末で廃止された移行定着支援加算による収益が調査対象施設の平均事業収益額の5.3%に当たると試算し、「2021年度以降は新規に創設された長期療養生活移行加算などを算定できない場合は事業利益率が数%程度は下がることが見込まれる」と指摘。これから介護医療院への移行を検討する際には、新規の加算を最大限算定することを目指すとともに経費削減などに留意して運営する必要があるとしている。